第48話「一方その頃、勇者ランド・エルティネス⑤」
俺は、国王から頼まれた魔物調査のため、ワイバーンを使って港町ラクルスに辿り着いた。
まずは、この町で一番偉い人に会おうと、町長の家に向かった。
「これはこれは、勇者様。よくぞおいでくださいました」
家に入ると、町長は歓迎してくれた。
「早速ですが、この近辺に現れたという魔物について教えてくれませんか?」
「ええ、もちろん。構いませんとも」
そう言って、彼は語り始めた。
「あの魔物たちは、ここ最近、現れるようになったのです。最初は、ただの偶然かと思いましたが、どうにも様子がおかしい。しかも、見かけた人間たちを手当り次第に襲い回っているようでして」
「なるほど、それは確かに妙ですね」
それから、俺はさらに詳しい情報を町長から聞いた。
話を聞いていくうちに、俺は少し違和感を覚えた。
幾らなんでも、数が多すぎる。魔界ならいざ知らず、人間界でこれだけの魔物が、それも一部の地域限定で出現するなんてあり得ないことだ。
ほぼ間違いなく、人為的な要因が働いていると、俺はそう感じた。
「どうも詳しいお話をありがとうございました」
「国王様のお役に立てれば幸いです。あーそうそう。それともう一つ、別件なのですが、勇者様にお会いしたいという方がおりまして……」
「僕に会いたい?」
「はい。神殿に居られる神官長殿が、勇者様とお話がしたいと」
「分かりました。すぐ行きます」
俺は、町長に案内されて神殿に向かうことにした。
町を歩いていると、人々が俺のことを見て、
「おー! あれは勇者様ではないか!?」
「勇者様!」
「勇者様が来てくださったわ!!」
などと、歓声を上げてくれている。
正直、とても気分がいい。こう言った歓声が、俺という存在を確固たるものとしてくれていた。
「勇者様! 今日はどちらへ行かれるんですか?」
「是非、私たちも御一緒させて下さいませ」
「勇者さまぁ〜」
女たちが俺の周りを取り囲む。
俺は、やれやれと肩をすくめた。
「ははは、困ったなあ。みんな、俺は今、ちょっと忙しいんだ。またね」
俺は、女どもを振り切ってその場を離れる。それでも彼女らは、黄色い声援を送りながら、俺を見送った。
振り返って彼女たちに手を振り、俺は踵を返す。
「はは、全くモテる男は辛いぜ」
いずれこの町の人々も、俺が魔王を倒した勇者であると知るだろう。それなれば、より人気はうなぎ登りだ。
そうなった暁には、可愛い女の子たちが俺の周りに集まり始めること間違いなし! まあ、俺は、セレスティナ姫と結婚する身だが、その時が来るまで、俺の取り巻きの女どもを侍らせておいてもいいかもな。
そんなことを考えて、俺は鼻歌を歌いながら、再び歩き出した。
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