第47話「魔神バズズ」
気がつくと、僕は謎の空間から元の場所に戻れていた。
周囲には、リディアたちの姿もある。
「今のは……」
「で、デントさん。どうかされましたか?」
リディアが心配そうに尋ねてきた。
「ううん、何でもないよ」
「そうですか」
「それより、行こう」
「はい」
僕たちは再び勇者を探し始める。
その後も、しばらく探し回ったが見つからなかった。
「見つからない」
「そうみたいですね」
……やはり、あの女神ワダツミが言っていた通り、ランドは一度町を離れたのかもしれない。
だったら、これ以上、ここで探し回っても仕方がないな。
「……みんな、ここまでだ。宿に帰ろう」
「そう、ですね」
「付き合わせてごめんね?」
「いえ、私は大丈夫ですよ」
リディアは笑顔を浮かべる。
「やれやれ。結局、無駄足だったか。……まあいい。そのうち見つかるだろう」
「うん、そうだね」
「…………」
「ああ。エルドリッヒもありがとう」
僕は、一緒に来てくれた白髪の少女に礼を言う。
彼女は無表情のまま小さく頷いてみせた。
(さあ、帰ろう)
踵を返そうとした時だった。……突然、地面が大きく揺れたのだ。
地震!? だが、揺れは一瞬だけですぐに収まった。
だが、その瞬間。地面から真っ赤な火柱が噴き上がった。
炎の柱はそのまま空高く伸びていく。そして、天に向かって巨大な火の玉となった。
「何だあれは……」
僕は呆然と呟く。
すると、また大きな地鳴りのような音が聞こえてくる。
直後、大地が裂けた。
裂け目からは、マグマが流れ出し、そこから次々と新たな魔物が現れた。
その姿は、まるで地獄の釜から這い出てきた亡者のようだった。
「一体何なんだ!?」
僕たちが動揺していると、どこからともなく声が響いた。
「にゃっはっは! どうだい? 驚いたかい?」
直後だった。
目の前にいた魔物たちの一部が割れて、中から人が出てきた。
現れたのは、赤いローブを身に纏った少女。頭から黒い猫耳を生やし、お尻からも同じく猫の尻尾が生えている。
少女は口元をニヤッとさせた。
「なっ!! き、貴様は……!!」
少女の顔を見た瞬間、ヒルデは驚愕した様子で、一歩後ずさった。
こんなに驚いているヒルデを見るのは初めてだ。……何者なんだこの子は。
そんな僕らの反応を見て、少女は不敵に笑った。
「にゃはは、良い反応だねぇ。勇者の仲間にぃ〜、エルフと〜、元最強の吸血鬼がいるって聞いてたけどぉ〜。揃いも揃ってマヌケな表情しちゃってるねぇ」
「……ヒルデ。この子を知っているのか?」
「ああ、知っている」
僕の問いに、彼女は苦虫を噛み潰したような顔をしながら答えた。
そして、こう続けた。
「こいつは……『魔神』だ。魔界の神。この世界を滅ぼしかねない力を持つ存在」
「魔神?」
「……そして、こいつは。この私を谷底に封印した張本人、魔神バズズだ」
ヒルデが言った一言に、僕は驚きを隠せなかった。
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