第46話「女神ワダツミ」
目ぼしい場所をひたすら探し回る。しかし、勇者の姿は見つからない。
やがて、完全に日が落ちてしまう。だが、幸いなことに町は外灯で明るく、真っ暗になることはなかった。
それでも、夜の帳は完全に降りており、視界はひどく悪くなっていたが。
(参ったなぁ。これじゃあ、ランドを見つけられないぞ)
そんなことを考えている時だった。
不意に強い風が吹いて、近くの茂みが揺れたのだ。
(ん?)
気がつくと、僕は何か不思議な空間にいた。
(あれ、ここはどこだろう?)
見渡す限り何もない白い世界が広がっている。そこにポツンと立っている僕。
そして、僕の前には巨大な女神像があった。
「こんにちは、デント」
背後から声をかけられた。振り返ると、そこには水色の髪をした碧眼の少女がいた。
少女はニッコリと笑みを浮かべる。
すると、彼女の周りから色とりどりの花びらが舞い散り始めた。
少女が両手を広げると、花吹雪は一層激しくなる。
それは幻想的な光景だった。
思わず見惚れてしまったが、すぐに我に返った。
「……貴女は、誰ですか?」
「私は、女神ワダツミ。ここ、ラクルスの町を守護する者です」
少女はそう答えた。
「女神さま?」
「はい」
「えっと、その、僕はどうしてここに?」
「ここは、貴方とコンタクトを取るために作った特殊な空間です。ここであれば他の邪魔が入ることはありません」
「へぇ~、そうなんだ。……って、そんな場合じゃないんだよ! 僕は、ランドを探さないと!」
「……勇者ランド・エルティネス。彼なら今頃、この町を離れているでしょう」
「何だって!?」
「心配ありません。国王からの頼み事がある以上、いずれ戻ってくるのは明白です。……それにしても、彼は余程、貴方に会いたくないようですね」
「僕に?」
「ええ。……勇者より強き者である、貴方に」
そう言って女神ワダツミは、僕に微笑みかけた。
女神は続ける。
「……デント。この世界は今、危機に瀕しています。魔王より遥かに強大な力を持つ存在が動き出したのです」
「なっ!」
僕は驚きを隠せなかった。
魔王より遥かに強大な力を持つ存在……だと。
「このままでは、この世界は滅びてしまいます。どうか貴方の力で世界を救ってほしいのです」
「い、いやいや。そういうのは勇者の……」
「勇者の力では、あの存在には勝てません。より優れた力を持つ貴方にしか出来ないことなんです」
「…………」
「お願いします。どうか私を……この世界を助けてください」
女神ワダツミは、懇願するようにそう言った。
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