第42話「病院着」
「よし、町が見えてきた」
僕は、少し安堵の息を漏らした。
このまま、急いで病院にユミルを連れていくんだ。
僕は、ユミルが乗っている馬の手綱を引いて、速度を上げるように指示をする。
「…………」
「どうしたの? エルドリッヒ」
すぐ後ろにいるエルドリッヒが、何か考え事をしているような顔をしていたので、僕は尋ねた。
「…………別に」
そう言って、エルドリッヒは僕の背中にくっついてくる。
「…………」
相変わらず口数が少ない子だ。
うーん、よく分からないなぁ。
まあ、考えるのは後。まずは、ユミルの容態が最優先だ。
町の中を駆け抜け、僕らは病院に辿り着いた。
「すみませーん、急患です!」
ユミルを担いで病院内へ飛び込むと、受付の女性に声をかけた。
女性は返事をして、ユミルを奥へと連れて行っていく。
これでひと安心かな。
「お疲れ様でございました。さあさあ、こちらに」
僕らは病院のお姉さんに案内され、待合室のような部屋に通された。
椅子に腰掛けると、女性がお茶を出してくれる。
「ありがとうございます」
「いえ、お気になさらず。ただいま、患者様の御容態を確認しておりますので、お連れ様はこちらでお待ちください」
そう言うと、彼女は部屋を出ていった。
僕ら四人だけが残される。
「ユミルさん、大丈夫でしょうか?」
リディアが心配そうに尋ねる。
「回復魔法も使ったし、きっと平気だよ。後は、病院の先生に任せて、報告を待とう」
「そんな義理は無いだろう。我々がここで待つ必要があるか? 貴重な時間を無駄にするだけだ」
「まあまあ、そう言わずにさ。もう少しだけ待ってみようよ。ユミルは、僕らの手助けをしてくれた。その恩を無碍にする訳にはいかない」
「手助け? 寧ろ、足手纏いだったと思うがな」
ヒルデは、呆れたように呟いた。
確かに、結果としてユミルはやられてしまった。そのせいで、アクシデントに直面してしまったと言えなくもない。
「それでも、助けてくれたことに違いはない。僕らを良くしようと善意で接してくれたんだから、礼を尽くすのが筋だと思う」
「ふん、そうか」
ヒルデは、興味無さげに言った。
「…………」
エルドリッヒは無言だ。
「そうだ、エルドリッヒ。さっきのエルフ、君が倒してくれたおかげで早く彼女を病院に連れてこれた。あの一刻を争う場面で、本当に助かった」
僕は素直に感謝の言葉を述べた。
すると、彼女はいつも通りの表情で僕を見つめる。
「でも、君は凄いね。あんな一瞬で数十人を一気に倒すなんて」
「…………」
エルドリッヒは何も答えない。
ただ、黙ったまま僕をじっと見つめている。
いや、本当……何なんだろうな、この子って。
僕は、少し困惑しながらも、彼女の頭を撫でるのだった。
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