表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

43/93

第42話「病院着」

「よし、町が見えてきた」


 僕は、少し安堵の息を漏らした。

 このまま、急いで病院にユミルを連れていくんだ。

 僕は、ユミルが乗っている馬の手綱を引いて、速度を上げるように指示をする。


「…………」

「どうしたの? エルドリッヒ」


 すぐ後ろにいるエルドリッヒが、何か考え事をしているような顔をしていたので、僕は尋ねた。


「…………別に」


 そう言って、エルドリッヒは僕の背中にくっついてくる。


「…………」


 相変わらず口数が少ない子だ。

 うーん、よく分からないなぁ。

 まあ、考えるのは後。まずは、ユミルの容態が最優先だ。

 町の中を駆け抜け、僕らは病院に辿り着いた。


「すみませーん、急患です!」


 ユミルを担いで病院内へ飛び込むと、受付の女性に声をかけた。

 女性は返事をして、ユミルを奥へと連れて行っていく。

 これでひと安心かな。


「お疲れ様でございました。さあさあ、こちらに」


 僕らは病院のお姉さんに案内され、待合室のような部屋に通された。

 椅子に腰掛けると、女性がお茶を出してくれる。


「ありがとうございます」

「いえ、お気になさらず。ただいま、患者様の御容態を確認しておりますので、お連れ様はこちらでお待ちください」


 そう言うと、彼女は部屋を出ていった。

 僕ら四人だけが残される。


「ユミルさん、大丈夫でしょうか?」


 リディアが心配そうに尋ねる。


「回復魔法も使ったし、きっと平気だよ。後は、病院の先生に任せて、報告を待とう」

「そんな義理は無いだろう。我々がここで待つ必要があるか? 貴重な時間を無駄にするだけだ」

「まあまあ、そう言わずにさ。もう少しだけ待ってみようよ。ユミルは、僕らの手助けをしてくれた。その恩を無碍にする訳にはいかない」

「手助け? 寧ろ、足手纏いだったと思うがな」


 ヒルデは、呆れたように呟いた。

 確かに、結果としてユミルはやられてしまった。そのせいで、アクシデントに直面してしまったと言えなくもない。


「それでも、助けてくれたことに違いはない。僕らを良くしようと善意で接してくれたんだから、礼を尽くすのが筋だと思う」

「ふん、そうか」


 ヒルデは、興味無さげに言った。


「…………」


 エルドリッヒは無言だ。


「そうだ、エルドリッヒ。さっきのエルフ、君が倒してくれたおかげで早く彼女を病院に連れてこれた。あの一刻を争う場面で、本当に助かった」


 僕は素直に感謝の言葉を述べた。

 すると、彼女はいつも通りの表情で僕を見つめる。


「でも、君は凄いね。あんな一瞬で数十人を一気に倒すなんて」

「…………」


 エルドリッヒは何も答えない。

 ただ、黙ったまま僕をじっと見つめている。

 いや、本当……何なんだろうな、この子って。

 僕は、少し困惑しながらも、彼女の頭を撫でるのだった。

『本作を楽しんでくださっている方へのお願い』


下にスクロールすると、本作に評価をつける項目が出てきます。


お手数おかけしますが、更新の励みになりますので、ご存知なかった方は是非評価の方よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お読みいただき有難うございます
気に入ってくれた方は『ブックマーク』『評価』『感想』 をいただけると嬉しいです

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ