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第35話「冒険者ギルド」

 道中、特にこれと言った出来事も無く、無事にギルドに到着した。

 入ってすぐの受付カウンターは、そこそこ混雑しており、クエストの依頼書を手に取っている人や、仲間同士で雑談をしている人などで賑わっていた。

 そして、正面奥にある酒場の方からは、大勢の人が笑い声を上げているような騒々しい音が聞こえてきていた。


「ふむ。ここが、人間共がよく出入りしているという冒険者ギルド。……冒険者の集まる場所か」

「そうだね」


 僕は、隣のヒルデに相槌を打つ。

 今現在、僕とヒルデは二人でギルドの中を歩き回っていた。リディアとエルドリッヒは、他の人の邪魔にならないよう、少し離れたテーブル席に座って貰っている。

 僕とヒルデは、依頼を受ける為に掲示板の前に来ていた。



「どれにする? ヒルデ」

「ふん。別に何でも構わんが、面倒ではないものにしろよ」

「なら、魔物討伐が一番だね。僕なら、行って、討伐して、帰ってくるのに時間は掛からないからさ。一日で七件の依頼を達成したこともあるんだよ?」

「ほう。それは凄いな。だが、私がやればもっと早く依頼を終わらせられるだろう。吸血して力を取り戻せさえすればな」

「吸血か……。この街のどこかに、人間の血液って売ってないのかなぁ」


 そんな話をしながら、掲示板を眺めていく。……すると、ある一つの依頼が目に留まった。

 それは、ラクルス町長からの依頼だった。内容は、最近になって頻繁に目撃されるようになった魔物の異常発生についての調査だ。近年でも珍しい事態らしく、原因究明と可能であれば解決して欲しいとの事だ。

 報酬は、なかなかに高額だ。


「魔物の異常発生って、昨日の森での出来事が絡んでいるんじゃないだろうね」

「ふむ。昨日の今日で、そこまで早い段階で異変に気づくものか」

「うーん。……もしかして、この近辺では僕らの一件とは別で、前々から魔物が現れていたってこと?」

「その可能性はあるかもしれんな。だが、今はそんなことを考えても仕方がない。それよりも、早く仕事を済ませてしまうぞ」

「……うん」


 気になりはしたものの、確かに今の時点では考えても意味が無いかと思い、思考を切り替えることにした。

 取り敢えず、手頃な魔物討伐依頼の紙を剥ぎ取って、受付へと向かうことにする。

 その時だった。


「あっ! き、君は……!」

「ん? ……貴女は、今日神殿前で会った……」

「ユミル・パーネス! 覚えていてくれて嬉しいよ!」


 そう言って、目の前の少女は笑顔で僕の手を取ってくる。

 そんな彼女に、僕は思わず苦笑いを返す。


「えっと、どうしてここに?」

「私は、冒険者だからね。当然、冒険者ギルドにも来るさ」


 彼女はそう言いながら、腰元に下げた細剣を軽く叩いてみせた。

 なるほど。確かに、昨日見せてくれた腕前ならば納得できる。あれだけ強ければ、ギルドでも嘸かし名の通った人物なのだろう。


「ところで、少年。君もこのギルドに来ているという事は、ここで依頼を受けに来たんだね?」

「まあ、そうなんだけど……」

「そ、そうか……。よし! なら、私が君の依頼をお手伝いしようじゃないか!」

「えっ?」

「なぁに、心配無用さ。これでも私は、『黒鞭』の二つ名を持つ冒険者だ。この私に任せておけば、どんな依頼だってすぐに片付けてくれる!」


 ユミルは、胸を張って得意げに言った。


「いや、あの。そういう事じゃなくて」

「遠慮は要らないよ。これも何かの縁だしね。さあさあ、そうと決まれば善は急げだ!」


 言うなり、ユミルは僕が持っていた依頼書を取ると、カウンターの方に向かって行ってしまう。

 ちょっとちょっと! まだ一緒にやるって決めた訳じゃないんですけど!?

 しかし、僕が制止するよりも先に、ユミルは、受付嬢と何やら話し込むと、戻ってきた時には判子が押された依頼書を手に持っていた。


「よし、これで決まりだね!」

「……はい。そうですね」


 満面の笑みを浮かべるユミルに、僕はただそう言うしかなかった。

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