第34話「白髪の少女」
翌朝。
目が覚めると、隣に居たはずの少女の姿は無くなっていた。
もしかすると、夢だったのかもしれないと思いながら、僕は身支度を整える。
そして、階下へと降りると、リディアとヒルデが待っていた。
「おはようございます!」
「……おはよ」
元気いっぱいのリディアとは対照的に、ヒルデは眠そうな目をしている。……本当に対照的だ。
「二人共、昨夜はよく眠れたか?」
「はい!」
「……人間の生活習慣は、吸血鬼に馴染まん。そもそも何故、忌まわしき太陽がいる時間に行動せねばならんのだ」
ヒルデは、不機嫌そうに呟いた。
「それは仕方がないよ。人間社会では、そういう決まりになっているんだから」
「ふん。くだらない。そんなことより、早くギルドとやらに向かうぞ」
「はい! 楽しみですね!」
リディアは、ニコニコしながら言った。
「……お前は、随分と楽しそうだな」
「だって、デントさんと一緒ですし!」
リディアは笑顔で答える。
ははっ。そんな風に嬉しそうに言ってくれると、何だか照れくさいなぁ
「よし! じゃあ、行こうか」
「はい!」
「……ところで、だ。デント、貴様の背後にいるその小娘は誰なのだ?」
「えっ?」
僕は後ろを振り向く。
すると、そこには僕に抱きつくようにして立っている少女の姿があった。それは、昨夜出会った白髪の少女だった。
「…………こんにちは」
「こ、こんにちは」
挨拶されて、反射的に挨拶を返す。
しかし、彼女は一体いつの間に?
「…………わたしの名前は、エルドリッヒ」
少女、エルドリッヒは昨日と同じように、そうボソリと答える。
「……なんだ、この不気味な奴は。おい、貴様。昨夜一体どこで何をやっていた?」
「普通に部屋に入って寝ただけだよ」
僕は、嘘偽り無く事実を告げた。……だけど、ヒルデは納得がいかない様子だ。
「……本当か?」
「うん。信じて欲しい」
「……」
僕がそう言うと、ヒルデは渋々といった感じで引き下がった。
「……まあいい。それで、其奴をどうするんだ? まさかとは思うが、連れて行く気ではないだろうな?」
「連れて行くも何も、勝手に付いてきているというか……」
どうしたらいいかなんて、こっちが聞きたいくらいだ。
すると、リディアがエルドリッヒと視線を合わせるように屈み、口を開いた。
「あの、私達と一緒に来たいのですか?」
「…………うん」
「分かりました。……デントさん、この子も一緒に連れていって良いですよね?」
リディアは僕を見上げて尋ねてくる。
「うーん、まあ大丈夫かな」
正直なところ、エルドリッヒが何者なのか分からない以上、あまり手放しには賛成できないけど、本人が行きたがっているみたいだし、置いていくのも可哀想だし、とりあえずは問題ないかな?
「ありがとうございます!」
リディアは満面の笑みを浮かべて喜んだ。
「よし。じゃあ、行こうか」
「はい!」
こうして、四人になった僕らは宿を出て、冒険者ギルドへと向かった。
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