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第33話「隣の部屋には」

「あー、ようやく帰ってこれたぞー」 


 僕は、ドッと椅子に腰を下ろした。いっぱい歩き回ったから流石に疲れたなぁ。

 一方、隣にいたリディアは、嬉しそうな表情をしていた。


「ふふ。さっきの人、怪我が治って本当に良かった」

「そうだねー」

「きっと、デントさんに感謝していますよ?」

「そ、そうかな?」

「はい!」


 笑顔で返事をするリディア。

 ……うん。やっぱりリディアは可愛いな。

 僕は、心の中で独りごちる。

 リディアと出会って、まだ一日しか経っていないけど、彼女のことを好きになっていた。

 優しくて、素直で、純粋で……とにかく良い子なのだ。


「あ、あの。どうかしましたか?」

「え?」

「いえ、何か、ニヤけてましたから」

「い、いや。何でも無いよ!」


 危ない危ない。顔に出てたか。気をつけないと。

 僕は、気持ちを引き締めると、今後のことについて考えることにした。


「ところで、明日のことなんだけど、僕は冒険者ギルドに行こうと思っているんだ」

「……冒険者ギルド?」

「うん。この先、何かとお金がいるだろうし、稼げるようになっておいた方が良いと思うんだよね」

「なるほど。確かにそれは大事ですね」


 リディアは、大きく首肯する。

 すると、ヒルデが僕の方を見つめながら問いかけてきた。


「……では、明日の観光は中止か?」

「別行動でもいいけど。それとも、僕と一緒にギルドへ行ってみるかい?」

「私は、行きます! どんなところなのか見てみたいです!」


 僕の提案に対して、真っ先に賛成したのはリディアだった。

 彼女は目を輝かせて、興奮気味に話す。


「……以前から、人間共が利用する冒険者ギルドがどのような場所なのか興味があった。面白そうだ、私も同行してやろう」

「分かった。じゃあ、一緒に行こう」


 僕は、微笑みかける。

 すると、リディアは満面の笑みを浮かべた。


「はい!」

「よし。じゃあ、今日はもう休もうか」

「はい! おやすみなさい、デントさん」

「おやすみ」


 挨拶を交わした後、僕は個室を後にした。

 そして、隣の部屋に入る。


「…………えっ?」


 その時、僕は予想外の出来事に直面して棒立ちになってしまった。

 そこには、ベッドの上で膝を抱えている少女の姿があったのだ。

 年の頃なら、十歳くらいだろうか。透き通るような白い肌と、綺麗に整った容姿をしている。

 服装は、ワンピースのような白い服一枚だけという露出度高めの格好だ。

 ……だが、そんなことよりも、僕は目の前の少女の髪を見て驚いた。

 まるで絹糸のように艶やかで美しい白髪。……こんな色をした髪の毛なんて、生まれて初めて見た。

 そのせいか、僕はその少女をつい見入ってしまった。

 すると、少女はこちらに視線を向けた。

 そして、僕に話しかけてくる。


「…………こんにちは」

「こ、こんにちは」


 感情の無い声音で、唐突に挨拶されたので戸惑うが、とりあえず返すことにした。

 しかし、どうして、こんなところに女の子が? ここは、僕が借りた宿の二階にある一室である。

 窓の外を見ると、既に日が落ちていて真っ暗だ。


「…………」


 少女は何も言わず、ただジッと僕を見ている。

 ……どうしよう。凄く困った状況になったぞ。


「あのー、君は一体……」

「…………わたしの名前は、エルドリッヒ」


 少女はボソッと答えた。

 名前だけは答えてくれたようだ。少しホッとする。

 でも、僕が聞きたいことはそういう事じゃないんだよなぁ……。まあ、いいか。

 とりあえず、相手が名乗ったからには、僕も自己紹介をしないとね。


「えっと、僕の名前はデント。よろしくね」

「…………うん」


 返事をしてくれたけど、やっぱり表情に変化は無い。

 どうにも、何を考えているのか分かりづらい子だな。


「それで、君はどうしてここにいるのかな?」

「…………」


 少女は無言のまま、僕の方を見ている。

 ……何か反応してくれないと会話が成立しないんだけど。


「ねぇ。聞いてる?」

「…………うん」

「そっか。じゃあ、もう一度聞くけど、なんで君みたいな小さな子が一人でこの部屋に居るんだい?」

「…………」


 再び無言になる。

 くっ、こういう時どうしたらいいんだ? 普通の人なら、こういう時どうするのが正解なんだ?

 ……わからない。

 こんな事なら、一般常識をもっと勉強しておけば良かったよ。


「まあ、いいか。よく分かんないけど、僕は明日に備えて寝なくちゃ行けないから、邪魔しないでね」


 そう言うと、僕はベッドに横になって毛布を被った。

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