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第32話「火傷治療」

 現場には、多くの野次馬が集まっていた。皆、興味深そうに火事の様子を眺めている。

 そんな彼らを押し退けるようにして、僕たちは中心部へと進んでいく。……すると、そこには黒焦げになっている一人の男がいた。

 男は意識を失っており、全身に火傷を負ってしまっているようだ。既に駆けつけた救助隊と思わしき人たちによって応急処置が施されているものの、かなり重症に見える。


「……どうだ?」

「くそっ、こりゃあダメだな。もう助からん……」


 救助隊の一人が、諦めの声を上げる。

 確かに素人目から見ても、彼がもう助からないことは一目瞭然だった。

 そう、普通ならば。


「……デントさん」

「任せて」


 僕はリディアに微笑みかけると、そのまま男の元へと歩み寄った。


「お、おい。何だ君は」


 救助に来た男たちが、僕を見て狼吠える。

 だが、そんなことは気にせず、僕は男に手をかざした。


「聖魔法ヒール」


 僕の手から放たれた白い光が、男の体を包み込む。

 すると、みるみると傷が癒えていき、数分後には、火傷一つ残さず完治していた。


「えっ!? 嘘だろ!?」

「治っちまったぞ!?」


 その場に居た全員の視線が、僕に集中する。

 そんな中、僕は、改めて男の様子を確認した。

 呼吸は安定している。脈拍も正常だろう。


「うん。大丈夫みたい」

「す、すごい……」

「一体、どうやったんだ?」

「いや、ただ回復魔法をかけただけだよ」

「か、回復魔法だって!? そんなバカな! あれは、聖女様にしか使えない特別な魔法じゃなかったのか?」

「しかも、この男を一瞬で全快させるなんて……。お前、何者なんだ?」

「……何者って言われてもね」


 僕は苦笑しつつ、答える。


「僕は、デント・アルフォート。魔王を倒した勇者パーティーの一員さ」


 その瞬間、周囲の人々がざわつき始めた。


「ゆ、勇者パーティーだと!?」

「あの伝説の!? あんな子供が!?」

「うわぁ! 初めて見たぜ!!」


 ……何だか、凄い騒ぎになってしまった。まあ、いいか。

 僕は、彼らの反応を無視して、二人の元に戻る。


「終わったよ。彼は無事だ。命に別状無し」

「ああ、良かったです……」

「そうか。なら行くぞ、さっきから騒々しくて敵わんわ」


 ヒルデは、僕の言葉を聞くなり歩き出す。

 僕たちも後を追うように、その場を離れたのだった。

 そして、後ろの方から群衆達がこんな事を言っているのが聞こえてきた。


「おい見ろよ……。あいつ、あの勇者様のパーティーメンバーらしいぜ」

「ええ!? でも、あんな小さな子供なのに」

「それが信じられないんだけどさ。死にかけの男を一瞬で治しちまったとか」

「マジかよ。もし本当なら、『神殿の連中』が黙っちゃいないんじゃねぇか?」


 ……と、そのような内容だった。

 神殿の連中ってなんだろう? そう思いつつも、それ以上の話は聞こえなくなっていった。

 僕たちは、市場を離れて、町の宿屋へと戻る。

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