第27話「港町ラクルス」
村で馬と次なる目的地を見つけた僕たちは、町道を進んでいた。
目的地である町の名前は、『ラクルス』というらしい。何でも、大きな湖に面した場所にあって、漁業が盛んだとか。
そんなことを話しながら歩いていると、前方に馬車が見えてきた。
御者は、商人風の男性だ。
彼は、こちらに気づくと笑顔を見せた。
「こんにちは。お若い御三方、もしかしてラクルスの町に行くところですか?」
「はい」
「おお、それは丁度良かった! 実は、あの町では今、お祭りが行われているんですよ」
「祭り?」
「ええ。年に一回、この時期にだけ開かれる大祭です。なんでも、町の神様に感謝を示すための儀式とかで」
「そうなんですか。それは興味深いですね」
僕たちの旅の目的。それは、『勇者パーティーの合流』と『観光』だ。
町の大きなお祭りなら、是非とも参加したい。
「でも、私たち部外者でも参加出来るんですか?」
リディアが質問をする。
「ああ、問題ないですよ。毎年、観光客も大勢訪れるので」
「そうですか。ありがとうございます」
「いえいえ。それじゃあ、私はここで失礼します」
そう言うと、男性はその場を離れていった。
「よし。それじゃあ、行ってみよう」
こうして、僕らは祭りが行われる町へと馬を走らせる。
それから、半日ほど進んだ頃。前方に大きな門が見えてくる。
ラルクスの関所だ。門の前には、数人の兵士の姿があった。
「止まれ。身分証を見せろ」
「はい」
僕は馬を降りると、衛兵にライセンスを見せる。
すると、衛士は少し驚いた表情を見せながらも、すぐに敬礼をした。
「失礼しました。どうぞ、ご通行ください」
「はいはい」
そう言って、再び馬に乗る。
すると、後ろから声をかけられた。
「おい、えらく簡単に通らせたな。ああいう関所は、もっと身体検査とかされるもんだと思ってたが」
「ほら、僕って勇者パーティーの一員じゃん? しかも冒険者ギルドでも、最高ランクまで上り詰めた超凄腕の剣士だからさ。これ以上の身分証明はないよね」
王国内であれば、僕の冒険者ライセンスは、実質フリーパスポートみたいなものだ。
これがあれば、大抵の町には入れるのさ。
「さあ、着いたよ。ここがラクルスだ。」
僕たちは、ついにラクルスの町へと足を踏み入れた。
町の光景は、素晴らしいものだった。
見渡す限り大勢の人々。そして、この町の産業を支える大きな湖。
そして、町の中心には、巨大な神殿のような建物が見えた。あれが、このラクルスの神様が祀られている教会なのだろう。
この町は、漁業が盛んなだけあって、港には多くの漁船が見える。
その光景は、僕の目から見ても活気に満ち溢れていた。
「さてと、まずは宿を探さないとね」
冒険者として旅慣れている僕にとっては、野営も苦ではない。
けれど、今回は女の子がいるので、そういうわけにもいかない。
ということで、早速宿屋を探すことにした。
幸い、すぐ目の前に宿屋が見つかったので、チェックインを済ませる。
「うわぁ、綺麗なお部屋ですね……」
「うん。悪くなさそうだ」
案内された客室は、二人用の小さなもの。
けれど、ベッドはふかふかだし、部屋の掃除は行き届いているし、文句なしの部屋だった。
しかし、ヒルデだけは不満そうにしていた。
「……何だこの狭い部屋は。物置か?」
「贅沢言わないの。お金だって無限にある訳じゃないんだ。……そのうち、ギルドでクエストをして稼ごうと思うから、それまで我慢して」
「むぅ……。仕方あるまい」
渋々納得したのか、ヒルデは窓際に置かれた椅子へ腰掛ける。
「じゃあ荷物を置いたら、さっそく町を見て回ろう。ようやく、観光が出来るよ!」
僕は、にんまりと笑ってみせた。
さあて、一体どんな町なんだろうか。楽しみだ!
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