第18話「やらかした後始末」
「はぁ……はぁ……。こ、これで絶対に大丈夫」
「随分と暴れたものだなぁ。見よ、貴様のせいで森が荒れ放題だ。これはエルフの民に恨まれるぞ」
ヒルデが呆れたように言った。
確かに、今の僕達の周りは凄まじい有様だった。
木が根こそぎ倒れ、地面もボコボコ。魔物の死骸は全て消し炭になっているものの、それでも相当量の粉塵が舞っている。
「……ごめんなさい」
「まあ、私はこんな森どうなろうと知ったことではないし、別に構わんが」
「いや、僕が謝っているのはリディアの方なんだけど」
彼女が生まれ育った森を滅茶苦茶にしてしまった。これは、仲間になって早々の失態である。
ところが、リディアは怒るどころか笑顔を浮かべていた。
「いえ、デントさんに悪気が無かったことは分かっていますから。どうか気を落とさないで下さい」
「う、うん。ありがとう……」
僕は、なんだか申し訳なくなってしまい、思わず視線を落としてしまう。
すると、そんな僕の手をリディアはそっと握ってきた。
リディアの手が優しく触れてくる感触が心地よい。何だか、胸がドキドキしてきた。
「それよりも、この森を元通りにする方法を考えましょう。大丈夫、デントさんならきっと出来ます!」
「え!? あ、あの、その……」
「ほら、さっきの魔法で少し疲れているでしょう? 私の膝をお貸ししますので、ゆっくりと休んでください」
そう言うと、リディアはスカートの裾を捲り上げて、自分の太腿をポンポンと叩いてきた。
「え、ええええええぇっ!?」
突然の提案に驚く僕。
いや、こんなところで寝転ぶのはマズイでしょ。いくら何でも、リディアの太腿に頭を乗せるのは抵抗がある。
でも、彼女の目は本気だ。本気で、僕を労ってくれようとしているのだ。……その行為を無碍にするのは悪い気がしてきた。
僕は覚悟を決めて、リディアの膝枕を受け入れることにした。
「じゃ、じゃあお言葉に甘えて……」
「はい、どうぞ♪」
リディアが嬉しそうな表情で、頭を預けやすいよう体勢を変えてくれる。
僕は恐る恐るといった感じで、リディアの膝へと頭を乗せた。
……柔らかい。
女の子特有の柔らかさが伝わってきて、何とも言えない幸福な気持ちになる。
そして、何よりも良い匂いだ。何というか、花の香りのような甘い匂い。
これが女の人の匂いなのかな? なんか、落ち着くなあ……。
それにしても、どうしてこんなにも優しいんだろう? 普通、生まれ故郷を滅茶苦茶にされたらもっと怒りそうなものだけど……。
「ふふふ。どうですか、私の膝枕は?」
「え? ええと……」
なんて感想を言えば良いのか分からない。
正直、とても気持ちが良い。
しかし、それをストレートに伝えるのは恥ずかしかった。
「その。とっても柔らかくて、温かいよ」
「それは良かったです。私も、こうしているだけで幸せな気分になります」
リディアは本当に幸せそうだ。
一方、僕はと言えば心臓がバクバクである。
ああもう、なんでこんなにも優しいんだよ! と、僕は心の中で叫ぶしかなかった。
「ああっ! も、もう十分だよ!! ありがとう、リディア!!」
これ以上は駄目だ。恥ずかしくて死ぬ。
僕は慌てて起き上がった。
「あら、残念。もう少しだけ、お付き合い頂きたかったのですけど……」
「そ、そういうのはちょっと勘弁して欲しいかな」
「そうですね。では、今度二人きりの時に……」
リディアが頬を赤らめながら言った。
「…………」
「…………」
何だろう、この沈黙は。
お互い見つめ合うこと数秒。そして、リディアの方が先に口を開いた。
「さ、さぁ! 早く森を元に戻してしまわないといけませんね! 頑張りましょう!!」
「う、うん!」
僕は力強く返事をした。
こうして、僕達の森林復興作業が始まる。
あと、魔界へ繋がるゲート。一応、ここの封鎖には成功したものの、あくまで蓋をしただけ。根幹の解決には至っていない。
「ふむ。魔族の出入りは出来なくなったが、どうやらまだ微量の魔素が漏れ出ているようだな」
「このままだとマズいよね。どうすればいいと思う?」
「壊れたゲートを修復するしかあるまい。その方法を知っている奴を呼べば良い」
なら、賢者ホワイトが適任だ。僕が知る魔術師の中で、彼女以上に魔法の知識に長けている人物は他にいない。
だけど、まずは森の復興。それが最優先事項である。
取り敢えず、聖魔法で草木を生やしてみるか。
「聖魔法ヒール」
すると、荒れ果てた大地から小さな蕾が生えてきたかと思えば、すぐに花開いた。
魔力で植物の成長を促した。あんまり使い慣れていないから、上手く出来るか不安だったけれど、なんとか成功したみたいだ。
よし。この調子で、どんどんいこう。
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