第17話「応急処置」
こうなれば自棄だ。特大の魔法でまとめて消し去ってやる。
「炎&土。融合魔法エクスプロージョン!!」
瞬間、僕が放った爆発の魔力が地面を走る。
それは瞬く間に周囲の空気を巻き込み、巨大な火柱となって狼達を飲み込んだ。肉は焼け焦げて炭化し、骨すらも残らずに灰になっただろう。
やがて爆煙が晴れると、そこには魔物の影すらない。
「よし、これで終わりっと」
「流石ですね。あっという間に倒しちゃい……」
リディアがそう言いかけた直後、僕の背後で地鳴りが響いた。
「な、なんだ!?」
「……後ろを見ろ」
ヒルデに言われて振り返る。
其処にあったのは、数え切れない規模の魔物の大群だった。恐らく百や二百では効かない数だ。
しかもそのどれもが、明らかに普通の動物とは一線を画す姿形をしている。
例えば、ゴリラのような巨体の生物やサイのような角を持った怪物。
そして、最も特徴的なのは、誰もが殺意に満ちた血眼で僕達を睨んでいることだった。
「なんだよこれ!? ゲートから流れ出た魔素のせいで、って話だったけど。たった一晩でここまで魔物化するの!?」
このままだと指数関数的に森の動物が魔物化していってしまう。これは、想定していたよりヤバい事態なのかも知れない。
僕は、向かってくる魔物をバッタバッタと斬り捨てながら、必死に森の中を走る。
「くそっ! こいつら、一体何処まで増えるんだ!?」
斬っても斬っても一向に数が減らない。むしろ増えているような気さえしてくる。
そして、ようやくゲートがある場所まで辿り着くと、そこで驚くべき光景が広がっていた。
何と、僕が破壊したゲートの穴から、魔界の魔物がゾロゾロと這い出てくるではないか。
「ウソだろぉ!!?」
僕は絶叫した。
ヤバい。ヤバ過ぎる。
魔界の魔物が強力だ。こいつらが暴れたら、この森、いや森だけの話ではない。人里へ降りてしまえば、大変なことになる。
「ゲートを塞ぐぞ!! ……って、どうすればいいんだコレ!?」
「知らん」
ヒルデが冷たく言った。
そう。僕は、戦闘系の魔法しか扱えない。破壊したゲートの直し方なんてまるで分からないのだ。
こんな時に、賢者ホワイトが居てくれれば、きっと修復の方法を教えてくれた筈なのに。
「ああ、もう!! 考えるのは後!! とにかく、ここにいる魔物を全員消滅してやる!! 炎&風&水&雷&土…………くらえ!! 五重融合魔法エレメントセイカーッッ!!」
瞬間、全ての属性の魔力が混ざった超極太ビームが発射された。
それは、まさに光の速さで突き進み、目の前の魔物を次々に飲み込んでいく。
「ガァアアアァァァァァァアアッ!!!」
断末魔の叫びを上げながら、魔物達が消えていく。
やがて光線が収まった時には、既に大半の魔物は跡形も無くなっていた。
……ただ。最強魔法を放ったせいで森への被害が甚大だ。木々は吹き飛び、地面には大穴がポッカリだ。
まあ、あのまま放置していたらもっと大変なことになっていただろうし……仕方ないよね。そもそも、僕が悪いんだけど。
「ふう……何とかなったか」
「相変わらず、無茶苦茶な奴だな貴様は」
何はともあれ、取り敢えず魔物は倒した。しかし、壊れたゲートはそのままだ。
「ヒルデ、どうしよう?」
「ふむ。そうだな……」
そう言って、ヒルデは何かを考え始める。
どうやら、彼女なりに考えてくれるらしい。普段は我儘だけど、彼女は三百年の時を生きたらしい吸血鬼。きっと知識は豊富に違いない。
「よし。まずは、魔物どもの死体を全部焼き尽くせ」
「え? なんでそんなことを? 放っておけば良いんじゃないの?」
「馬鹿者め。あんなもの放置しておいたら、他の生物にも影響が出るだろう」
「なるほどね。……で、その後は?」
「次は、地面だ。地面に穴を掘って、魔物の死骸を全て埋めろ」
「うん、分かったよ。で、その後は?」
「終わりだ。これ以上は知らん」
「肝心のゲートの閉じ方が分からずじまいじゃないかー!!」
僕は、思わず叫んだ。
「くっ! 考えろデント・アルフォート、何か良いアイデアは……」
「デントさん。穴が開きっぱなしならば、何かで塞いでみたらどうでしょうか?」
「それだ! 土魔法ガイアタワー!!」
リディアの言葉に、僕は即座に反応する。
そして、ゲートの出入り口を標的に定めると、大地を隆起させて巨大な塔を作り、それを『栓』としてみせた。
結果的に大成功。ゲートの出入り口は、土の塔で完璧に封鎖される形となった。
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