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第16話「迷いの森の異常事態」

 それから、巨大な熊との死闘を終えた僕は朝食を摂り、お腹いっぱいになったので横になった。


「ふわぁ~」


 ……眠い。さっき起きたばかりだけど、こんな良い天気の日は本当に眠気を誘う。

 そんな訳で、もう少しだけ寝ようと思っていると、突然ヒルデが僕の顔面を踏みつけにしてきた。


「ぷぎゃ」

「おい、起きろ! こっちは、夜の間暇でずっと待たされていたというのに、貴様はまだ惰眠を貪るつもりか!?」

「ぐえぇー。ちょ、ちょっと待ってよ。あと五分だけでいいから、このままでいさせて」

「駄目だ。今すぐ起きろ」

「うぅ、分かったよ。起きるから足をどけて」


 僕は渋々ながら身体を起こす。

 全く、食後の居眠りも許されないとは窮屈なもんだ……………………。


「ん。どうした?」

「あ、いや、その。ぱ、パンツが見えてるから……」

「パンツ? ……ああ。やれやれ、仕方ない奴だ」

「?」

「ほら、これで満足か?」


 そう言ってヒルデがスカートをたくし上げると、彼女の大人な下着が見えた。

 僕は、慌てて目を逸らす。


「ちょ!? 何やってるんだよ!?」

「何って、見たかったんじゃないのか?」

「ち、違うよ!! ただ、いきなりだったからビックリして!!」

「ほう。つまり、私に興味があるということだな」

「だから、そういうことじゃなくて!!」

「クククッ。ウブな反応をする奴だ。ういやつ、ういやつ」


 ヒルデが愉快げに笑う。

 この女、絶対わざとだ。僕が慌てふためくのを見て楽しんでいるに違いない。


「……もう。からかうのはやめてよ?」

「別にからかっていないぞ。ただ、お前の反応が面白いだけだ」

「それ、からかっているっていうんだけど」


 なんとも厄介な性格だ。

 もしかして吸血鬼の常識は、人間には理解できないものなのか? そうでなかったら、みだりに下着を見せつけるなんて有り得ない。


「さて貴様ら、そろそろ行くぞ。こんな森にいつまでも留まっていたら、いつまた魔物に襲われるかも分からないからな」

「そうだね。リディア、道案内をお願い」

「はい。任せてください」


 こうして、僕達はリディアの先導で森の中を進む。

 この森は普通の方法では、出入りが難しいらしいので、基本的に迷いやすい構造になっているとのことだが、彼女はそれを苦にもせず、どんどん進んでいく。

 やがて、木々の開けた場所に出たところで、僕達はある異変に気付いた。


「おや。この動物の死骸は……」


 周囲には無数の動物達の亡骸があった。

 そのどれもが、鋭い牙のような物で噛み殺されたような跡があり、中には内臓を食い荒らされている物もある。


「それにしても、随分派手に殺ったものだ。まるで、獣達に見せつけるかのように……」


 ヒルデが興味深そうに言う。

 確かに奇妙な感じだった。それに、これだけ大量の死体があれば、普通ならすぐに他の肉食動物達が寄ってくる筈だ。

 しかし、この場所には全くその気配がない。一体どういうことだ?


「リディア。何か心当たりはないかな?」

「いいえ。こんな現場は、初めて見ました」


 この森で生まれた頃から暮らしているリディアにも分からなければ、いよいよ謎は深まるばかりだ。


「とりあえず、この場を離れよう」

「分かりました。では、こちらへ」


 リディアが更に奥へと進み始めた。

 すると、その時だった。


「グオオオォォォッ!!」

「またかよ!」


 僕は、すぐさま魔剣イザナミを構えて駆け出す。

 今度は、狼型の魔物だ。しかも、先程戦った熊よりも遥かに大きく、体格も二回り以上大きい。

 推定10メートルはある化け物みたいなサイズだった。


「グルルル……ガアァァァァッ!!」

「おいおいおい。この森には、こんな怪物がそこら辺を練り歩いてるのか!?」

「い、いえ! こんなの、見たことも聞いたこともありません!!」

「じゃあ、どうして?」

「……なるほど。ゲートか」

「ゲート? どういうこと?」

「私と貴様が通ったあのゲートから、魔界の魔素が流れ込んできているのだ。そう考えれば、この魔族化した獣にも説明がつく」


 ヒルデの言葉に、僕はハッとなる。

 僕らが魔界から通ってきたゲート。彼処を強引に破壊したせいで、向こうの世界から溢れ出た魔素が、そのままこの世界に流れ込んでいるということか。

 だとしたら、この森は……。


「まずいな。このまま放っておくと、本当に生態系が崩壊してしまうかもしれない」

「ど、どうしましょう! この森には、里の皆が……」

「こうなったら、破壊したゲートを修復するしかない!」


 その為には、今目の前にいる魔物を倒す必要がある。

 幸い相手は、身体が大きく動きも鈍重なタイプ。つまり雑魚だ! 速攻で蹴散らしてやるぜ!


「むっ、デント。奥からもう二体追加で来たぞ」

「ええー!!」


 ヒルデの言う通り、僕達の行く手を阻むように現れたのは、やはり先程の狼型と同種の個体だった。

 全部で三匹。あー面倒臭い。


「えぇ〜い! 何体でも何十体でも、全部まとめてやっつけてやるぜー!!」


 僕は、やけくそ気味に叫ぶ。

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