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第14話「王都を目指して」

「はぁ〜。今日も良い天気だなぁ」


 僕は、うーんと伸びをしながら空を見上げる。雲一つない快晴だ。絶好の観光日和と言って良いだろう。

 魔王城での激戦から一夜が経過した。

 僕は、魔界から吸血鬼ヒルデと共に人間界へと戻り、道中で出会ったエルフのリディアを仲間に加え、エルフの里を離れた。

 離れたというか、否応無しに去ることになったというか……。おかげで、僕達は森の洞窟で寝泊まりするハメになったのである。

 とはいえ、旅慣れしている僕は、野宿なんて慣れっこだった。しかし、ヒルデがどうしても屋根があるところで休みたいと駄々を捏ねたので、僕が岩壁に穴を開けて洞窟を手作りしてやったのだ。

 で、朝日が昇ってきたので目を覚ました俺。

 向こうの方で、ヒルデが忌々しそうな表情で太陽を睨んでいた。

 やれやれ。吸血鬼というのは本当に太陽が嫌いなんだな。


「おはようヒルデ。昨日はよく眠れたかい?」

「吸血鬼は夜行性だ。それに、私はお前ら下等な人間と違って寝なくても平気なのだ」

「そっかー。……あ、リディア。おはよー」

「おはようございます。デントさん」

「うん。よく眠れた?」

「はい。ぐっすりと」


 そう言って微笑むリディアの顔には、疲労の色は見られなかった。

 お上品な彼女であるが、流石はエルフ。野宿にも適応しているらしい。


「それは良かった。じゃあ、早速出発するとしましょうか!」

「はい! ……って、ちょっと待ってください」

「どうしたの?」

「その前に、朝食を食べてからにしませんか?」


 確かに、僕も腹が減っている。

 一日三食。しっかり食べて元気に出発したいところだが、一つ大きな問題がある。


「リディア。僕は、食料を一切持っていない」

「あ、大丈夫です。私の鞄の中に……」

「という訳で、俺は今から狩りに行って来ようと思う。ちょっと待っていてくれ」


 そう言って俺は、森の奥へ向かって走り出した。

 背後から、リディアの呼ぶ声が聞こえた気がするが、まあすぐ帰るし問題ないだろう。

 さて、こういう森には食べられる動物が居るはずだ。

 木の実とか、山菜みたいなものより、僕は肉が食べたい。もしくは魚。

 ……おっと、前方に何かが見えたぞ。あれは……鹿かな? 

 鹿ならば、美味しい肉になるだろう。

 僕は、魔剣イザナミを取り出し、魔力を込めた。


「風魔法ソードスラッシュ!!」


 風の刃が鹿を襲う。

 不意打ちを食らい、鹿は悲鳴を上げる暇もなく倒れた。


「はい肉ゲット」


 僕は、慣れた手付きでその場で鹿の皮を剥ぎ、解体する。

 皮は街へ持っていけば売れるけど……邪魔だしそこら辺に捨てておくか。


「よし、こんなもんだな」


 僕は、綺麗に解体した鹿の肉を両手に持って、意気揚々と引き返す。


「ただいま〜」

「おかえりなさい。……って、もう終わったんですか?」

「ああ。丁度良い獲物がいたんでね」

「そうですか。では、私が焼いておきますね」

「ありがとう」


 僕は、リディアと場所を交代し、地面に座った。

 そして、肉を火にかけながらこれからのことを考える。

 王都までどれくらいの距離があるのか分からないが、徒歩で行くとなると結構時間が掛かりそうだ。

 だからといって馬車に乗る金はない。魔法で空を飛ぶのは、魔力が勿体無いから却下だ。


「……うーん。やっぱり、歩くしかないか」

「どうかしましたか?」

「いや、僕らはこれから王都へ向かおうと思っているんだけど、馬を買うお金がないんだよね」

「えっと、つまり徒歩だとかなり時間がかかると?」

「そういうこと。仕方ないから歩いて行こうと思ってね」


 本当は、早く勇者パーティーの皆に会いたいんだけど、ここが何処なのかすら分かっていない以上、無闇に動くわけにはいかないしやむを得ない。大人しく歩き続けようと思う。


「……それなら、私に任せてください」

「任せるって何を?」

「実は、エルフの里を出る時に、多少のお金を持ってきました。これで馬が買えると思います」

「本当!? 助かるよ!」


 やはり持つべきものは仲間か。

 しかし問題なのは、その馬をどこで調達するかだ。


「リディア、ここから一番近い町の場所って知っている?」

「……すみません。実は私、エルフの里から一度も出たことがなかったんです」

「一度も?」

「はい。ですから、人間が暮らす町や村が何処に有るのか、全く知りません」

「そっかー。まあでも、何とかなるでしょう。森を抜けて街道を見つければ、そのうち何処かに辿り着けるさ」

「そうですね。……ところで、そろそろ焼ける頃合いですよ」

「お、ホントだ」


 リディアの言葉通り、肉が良い感じに焼き上がっていた。

 いやー美味しそうだ。早速、いただくとしようか。

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