プロローグ
「言い残すことは、それだけか?」
僕の頭上から声が聞こえてくる。
見上げると、そこに居たは盟友ランド・エルティネス。
彼は、崖にぶら下がって今にも谷に落ちそうになっている僕のことを冷たい瞳で見下ろしていた。
「……なあ。何でこうなるんだよ? 僕が悪かったなら謝るからさ。ここから引き上げてよ」
「謝る? はっ、随分と呑気なもんだ。今更、もう遅いんだよ」
「何で……」
「俺達は、魔王を倒した。この事は世界中に広まり、パーティーは称賛される。……そんな時、デント。お前に生きてられると俺は困るんだ。世間がお前の強さを知ったら、俺の勇者としての立場が危ぶまれる」
ランドは、自身の手に魔力を込める。
勇者の証である光魔法。その力を蓄えると、その矛先を俺に向けた。
「用済みだ。この俺の顔を立たせるために、最後はきっちり死んでくれ」
「……!」
「じゃあな、平民野郎」
刹那、渾身の魔法が炸裂する。
ランドの光魔法を一身に受けた僕は、そのまま抗うことも出来ず谷底へ落ちていった。
最高の仲間で、最高の盟友。ランド・エルティネスの後ろ姿を眺めながら。
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