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再会、そして…

 

 あれからずっとどこかで探していた。

 もやしに出会って楽しかった記憶、もやしがいなくなって悲しかった記憶。

 もしかしたら全部夢かもしれないと思い何度もあきらめそうになった。それでもあきらめきれなくって遠い日の記憶をずっと探し続けていた。



***



 「ついに見つかったかもしれない。」

 という、たっつんの電話にマメは興奮(こうふん)していった。

 「たっつん!ほんとうなの?」



 「ああ、この学校では(うわさ)があるそうだ。

  しかもおれらの学校みたいな、”食べるお化け”の(うわさ)だ。」



 「じゃあ、(おれ)は仕事だから。一緒に行けなくて悪いな。

  頑張(がんば)れよ、マメっ子!」




 そして、マメは、ある小学校へと車を走らせた。

 山のふもとにある学校で3時間くらいかかって、ようやく着いた。




 「あの、植木鉢(うえきばち)です。星野竜彦(ほしのたつひこ)さんの紹介で来ました。」


そうマメがいうと、色白のメガネをかけた学校の職員らしい男の人が出てきて答えた。


 「話は聞いています。除霊(じょれい)してくれるそうですね。」


マメは並んで歩きながら、職員の話を聞いた。


 「うちの学校変な(うわさ)がひろまってから評判(ひょうばん)が悪くてね。本当に除霊(じょれい)してくれるなら助かります。」


 「お化けが出るなんて私も怖くて。」


 「お化け怖いんですね?」


 「そりゃあ、そうでしょう。」職員はそういって苦笑いを()かべた。



 「あっ、たしかこの辺ですよ」そういって立ち止まったのは、2階の音楽室の近くだった。




 「すみません。除霊(じょれい)には集中力が必要なのでしばらく1人にさせてください。」



 「そういうことなら。近くで待機(たいき)しているので何かあったらいってくださいね。」



 「あっ、そうそう。星野先生、とても熱心でいい先生ですね。」



 マメがしばらく薄暗(うすぐら)い暗闇を見つめていると、黄色くてふにゃふにゃしたものがふわっと現れたかと思うと下に降りて人の姿へと変わった。




 「除霊(じょれい)しにきたってほんとうなの?」


 「やれるならやってみなよ。

聞いて(おどろ)くな。最強に怖い私の名前は…」


 その人の姿をしたお化けは挑発的(ちょうはつてき)な物いいで、でもどこか(さみ)しそうな(ひとみ)でいった。



 「もやし…でしょ?」そうマメがいうと、お化けは(おどろ)いた顔でこちらを見つめた。



 久しぶりに見たもやしは昔見た時より、背が大きく大人びた感じがあった。

いや、もしかしたら自分が大きくなったからなのかもしれない。


 姿や雰囲気(ふんいき)は少し違うけれど間違いなくもやしだ。もやしなんだ。


  ずっと会いたかった。

  やっと会えた。


 その(うれ)しい気持ちがぐっとこ見上げてきた。泣きそうなのを我慢(がまん)して、にかっとわらってピースしてみせると。お化けはすごく不思議な顔をしてこちらをのぞいた。


 「ごめん。除霊(じょれい)するって、(うそ)ついた。


  ほんとはね。(むか)えに来たんだ。」



 

 あれから…なんとかもやしを説得して、(ぼく)は学校からもやしを連れ出した。


 もやしは僕のこともあの小学校ことも何も(おぼ)えていなかった。


 再会した時のもやしの冷たい目。きっと孤独(こどく)でさみしくて辛かったのだろう。

 もしかすると、今のもやしはほんとうに除霊(じょれい)されるのを望んでいたのかもしれない。


 それでももやしと一緒(いっしょ)にいたかった。



 「着いたぞぉ。」

 「ありがとうシマシマ。」

 そういってマメは運転手に除霊師(じょれいし)のコスプレ衣装(いしょう)を返す。

 「お金をもらってないにしても、(うそ)をつくのはやっぱり心が(いた)むよな。」


 「マメっ子。間に合って、良かったな。

  ハジは、先に(はじ)っこの特等席(とくとうせき)に来てるってよ。」




 会場に着くと、

 「ここ、人がいっぱいいる。ここにいたら…ここにいたら…」と(ふる)えるもやしに


 「大丈夫。大丈夫だよ。」


 マメは(つつ)むような優しい声でそういった。




 会場が真っ暗になると姿が見えないようにして、舞台(ぶたい)(そで)からこっそりともやしがのぞく。



 司会者がマイクで客席に向かって声をかける。

 「えー。お待たせ(いた)しました!

  マジシャン、マメもやしさんのスーパーマジックショーです!!」



 大きな舞台(ぶたい)の上で(まぶ)しいライトに()らされる。




 軽快(けいかい)な曲に合わせて(はな)やかで楽しげなマジックショーと共に



 (まぶ)しいくらいキラキラとした目で、笑顔で拍手(はくしゅ)歓声(かんせい)が広がる。



 「このマジックショーは皆様(みなさま)と笑顔を失った大切な僕の友達に送ります。僕らのマジックショーは、この楽しさは、きっと、絶対にどんな事でも乗り()えられる。そう信じています。」

 そういったマメの表情は観客のだれよりも(かがや)いていた。



 ぼくはずっと、もやしに見せたかった。

 もやしの好きだったキラキラとしたこの光景(こうけい)を。

 そして、伝えたかった。



 ありがとう。もやし。

 いまぼくがここにいるのはもやしのおかげだよ。




 その(あふ)れんばかりのキラキラとした光景(こうけい)を見て、ハッピーなお化けは(しず)かに泣いた。


最後までお読みいただきましてありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 黄色くてふにゃふにゃしてて、明るくて楽しいことが大好きなお化け、というもやしのキャラクターが素敵です。 学校のお化けに食べられてしまうという噂は、人を食べるわけではなかったのですね。 マメ…
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