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3/7

ちょっと待ってください

「生きる楽しさ、ですか?…」

「…言っちゃ悪いがもう死ぬ気なんだろ?もうすることねぇだろ。せめて生きる楽しさを知ってからの方がいいと思うからな」


可愛くないガキだ、とため息混じりに言った。



「それはそうですが…そのー…」

「なんだ?」


目を泳がせて戸惑いを見せる星川。


最初の頃に見せた警戒心は感じず、やっと普通に接してくれるような()()()になった。


「私がそれを受けてもいいのかわからないんです。受けたからには恩返ししなけばればならないと思いますし…返すものがないんです…」

「は?…そんなことを気にしてんのか?」


一瞬言われて思考停止したが、すぐにその言葉の意味を理解する。


そして思った。


おそらく、めちゃくちゃ優しいのだろう。

簡潔に言えば。


何かされたなら、その恩を返して周りの喜んでもらいたい。

その一心で、こういう人間…自分の思った意見・気持ちを表に出せないのかもしれない。


…まぁ全て推測だから、もっと深いかもしれないが。


俺は少し、同情するような目をしてしまったからなのか星川は少し怒って、


「何ですかその目は。まるで捨てられた子犬を見ている目ですよ?」

…普通にキレてた。

だって声がドスが効いてたから。


「いや、色々考えて星川は犬みたいだなと」

「…そうですか、褒めてるのか貶されているのかわからない言い方ですね」

「どっちに思うかあんたの勝手だ」


俺はプイッとそっぽを向いた。


そして星川が、そのことに気づき笑った。

それは学校で見せるモデルさんのような作った笑顔ではなく、心の底から見せる一点のくもりがない、年相応の笑顔だった。


俺はそれに見惚れてしまった。

そのことに気づいた星川は笑顔を引っ込めて、

「顔に何かついてますか?」

「…!…いやついてない」

「ならどうして私のことを見つめていたのですか?」

「つくづく犬だなぁと…」

「だからそれはどっちなんですか!?」

「言ったろ、あんたの勝手だって…って痛ぇ!痛ぇから背中を叩くのやめろ!」

「貶されている気がしたので、お仕置きです」


…はたから見れば、雨の中男女二人で何やってんだって話だが。

けれど星川が、随分と俺にいい意味で遠慮が無くなった。


やはりあのキレたのが原因か?

しかしそんなことはどうでもいい。


星川は、お仕置きですと言いながらも顔が笑っていた。

まるで昔から知っている友達に接するかのように。


「やめろって言ってんだよ…」


おそらく星川は遠慮する人間がいない?のか?

けれど俺自身楽しんでいる部分があるため、このまま戯れ合う。


そして、星川が叩くのをやめた。

いや叩きすぎ…あ、途中からくすぐってたな。


今さっき行われた戯れ合いを思い出して笑ってると。

「何を笑ってらっしゃって?」

「いや〜、今の行動を思い出してな。母さんが辛いこともしくは楽しいことがあったらすぐに笑えと、言っていて。特に楽しい時は、楽しかったことを思い出して笑えと」

「いいお母さんなんですね」


一瞬だけ、顔に寂しさと羨望と暗闇が見えたような気がした。

けどもすぐに笑顔(微笑み)になってその表情は消えてしまった。


「さ、気持ちも少しは晴れやかになったろ。家に帰ったらどうだ」

「…家に帰っても居場所がないんです」


さっきまでの雰囲気が一変して、暗い表情を見せた。


本来人の家庭事情に第三者特に、子供は口を出すべきでない。

けれどどうしても放っておけなくて…仕方ない、あまり気は進まないけども。

「どうしてだ」

「両親は私のことなんかそっちのけで仕事してるんです。愛情を受けたのなんて本当に小さい時の頃です」

「そうか…俺にはどうしようもできないがお前が寂しいって思ってるってことは伝わった」

「な!私はそんなことを言ってません!」

「さて俺も星川もずっと傘をささずに雨の中話していると、風邪をひくぞ。とりあえず俺ん家に来い、俺が助けたせいで死なれたら目覚めが悪い」

「ちょっと!私を無視しないでください!」


俺が地面に落ちている傘と荷物を拾い黙ってマンションに向かうと、

行けばいいんですよね行けばと、呆れているけど少し笑っているような声で言いながら付いてくる。


「よし!それでこそ星川だ!」

「何に対して言っているのですかー!」

後ろから怒られる。

けどその声色は、怒っているというより突っ込んでいるに近い声だった。



「脱衣所貸していただきありがとうございます」

「別にお礼はいらん」


あの後星川を俺の部屋に入れたら何故か、片付いてる…と少しばかり驚いていた。

俺は整理整頓はきちんとできるからと、言い返したが。


そのあと星川の服が濡れているので乾くまでは別の服を着てもらうことにした。

その間に体を拭いといてもらい、この後のことを聞こうと思った。

我ながらお節介だなぁと自覚はしているが、ここまでしないと俺の心が許さない。


俺は、星川の方チラッと見てしっかりと服を着ていることを確認してから、冷蔵庫に向かい麦茶を取り出しコップに注ぎ飲む。


しっかし、女子の風呂上がりってこんな感じなんだろうか。

普段は腰まである髪を結って首ぐらいまでにしているが、今は乾かすためか伸ばしきっているし何故だかわからないが、妙に色っぽいような、色っぽくないような。


「失礼ですが、何故私のサイズがわかったのですか?」

「ごほっ!…ゲホッゲホッ…」

「だ、大丈夫ですか」


慌てて駆け寄ってくる。

「今は、ゲホッ大丈夫」

あー死ぬかと思った。


あれって水が取り除かれるまで時間かかるし、何より取り除かれるまでしばらく咳き込むからキチィんだよな。

ヤダヤダ…。


「それよりどう言うことですか?」

「サイズの話か?」

「はい」


明らかに警戒心が剥き出しで尋ねてくる。

「…姉のを使った、よく泊まりに来るから」

「そうなんですね…ですけどなんで…」

「ごめんねぇ、そこから先は答えられないんだわぁ」


有無を言わせないような口調で言うと、渋々

「わかりました、後で聞きます」

と返した。


危ねぇ!全年齢対象が崩れる所だった…。

メタ発言だな、これ。


それより、

「星川はこれからどうすんだ?」

「どうするとは…?」

「はぁー、とりあえず座ってくれ」

そう言って手招きしてリビングのこたつに連れてくる。


「こたつって、庶民みたいな暮らしですね」

「庶民だからな」

「嘘です」

「バレたか」

「こんな家に普通は住めません」


ま、たしかにな。


俺の家は、部屋が5部屋あって4部屋が8畳。

リビングが30畳だ。


それにオートロック付きのマンションで新築。

おまけに10階に住んでいるってことはかなりの家賃だ。


そう思われても仕方ない。


「で、生きんのか?死ぬのかどっちなんだ?」

「死ぬって言ったらあなたが必死になって止めますよね」

「当たり前だ」

即答で答える。

そんな簡単に死なせない。


いや死なせてたまるか。

()()()()


「要は生きるしか方法はないですよね…」

「そうだな」


「じゃあここに住まわせてくれませんか?」


はい?

こいつ何言ってんだ?


「ちょっと待ってください。聞き間違えですか?俺の耳には『じゃあここに住まわせてくれませんか?』って聞こえたんだが…」


「聞き間違えじゃないですよ、私はたしかに、じゃあここに住まわせてくれませんか、と言いましたよ?」


わお…。

絶対に面倒なことになった。


是非ともブックマークして帰ってください!

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感想・アイデアなどお待ちしております。


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