008 初野宿 -1-
「つ〜〜かぁ〜〜れぇ〜たぁ…」
サトルは焚火跡の横にどっかと座り込む。
座ったと同時に手を広げて後ろに倒れた。
(ゴンッ)
「痛ったぁ〜、頭打ったわ!」
目に涙を溜めて起きあがってきた。
「サトル、大丈夫か?」
「頭かいな?身体かいな?」
「両方だよ。随分疲れてるみたいだからな」
「いやいや、ふっつーの現代人がこれだけ歩いてたら疲れるに決まってるやん。土の道なんて普通歩かんわ!しかも、ワシ革靴やし!」
ー確かに普段は平らなアスファルトだからな。でも、若返ってるし、そこまで疲れないんじゃないかー
そんな事を考えていると。
「ヒロシは身体強化もろとるやろ?それもあるんちゃう?」
ーそうだった。身体強化の影響もあるんだった。確かに疲れはない。歩くスピードもサトルに合わせてゆっくりだった。1人ならもっと速く歩ける様な気がする。でも、体感出来る程強化されているとも思えないー
「そうだった、身体強化していたんだな。俺は疲れてないから、薪拾いと水汲みは任せてくれ」
「スマンの、甘えさせてもらうわ」
「わかった」
一言話すと、ビジネスバッグから折り畳みタンクを取り出して川に向かった。
川の水は澄んでいた。
川幅は4-5m位あり、深さもありそうだ。
周りは岩場になっているおり、腐葉土から流れ込みがあっても、十分に希釈されていると思われる。
硫黄の匂いもしないので温泉の流れ込みもない。
念の為、水を手で掬って口に入れてみる。
ー美味いな。煮沸した方がいいんだが、道具も無いし、このまま使うかー
手酌で水を一頻り飲んだ。
折り畳みタンクのキャップを外して、水に突っ込んで満タンにした。
そのまま、持ち上げると違和感があった。
ーこれ、10キロあるんだよな…重く感じる。運べない重さではないが….本当に筋力が強化されているのか….?よくわからない。ー
そんな事を思いながら、焚火跡まで運んだ。
焚火跡に近づくとサトルが何やら寝ながらぶつぶつ呟いていた。
「ヒー…」、「ホイ…」、「ミリ…」、「ちが..う…か」
声が小さくて聞き取れない。
ー苦しいのか?ー
「サトル、大丈夫か?」
サトルの背中越しに喋りかけてみた。
サトルは飛び起き上がり、こちらを向いて座った。
顔が少し赤みを帯びている。
「うわ、びっくりしたわ!えっらい汲んできたの!スマンが飲んでもええか?ワシ喉がカラッカラや!」
ここに来るまでの間、ペットボトルの水を回し飲みしていたが、暑さのせいで直ぐに無くなったてしまっていた。
「飲んでくれ、このまま持ってるから」
そのままタンクを持っていると、サトルはコックを開いて手酌で水を飲んだ。
焚火跡を離れ、森に進む、焚火跡を目視出来る位置でヒロシは薪を探した。身体が軽く感じるせいか、直ぐに2晩は過ごせそうな薪と焚きつけが集まった。
焚火跡に戻り、サトルの使い捨てライターを使い、ヒロシは焚火を起こした。
水を飲んだ後もサトルは焚火跡でグッタリと寝ていた。
「サトル、火がついたぞ!」
「スマンのぉ、全部やらしてもうて」
「大丈夫だ、問題なしだ」
サトルは申し訳なさそうに起き上がり座った。
「ところでや、ワシは気になってる事があるんや」
サトルは胡座をかくと真剣な眼差しで俺を見た。
「そうか、俺もだ」
俺もサトルの眼をみて答えた。
「多分、同じ事を考えていると思うんやけど…..」
サトルは一呼吸置いてゆっくり喋り始めた。
「気にしてるんは、3人目や」
ーサトルもかー
「ああ、同じだ」
俺もゆっくりと答えた。
ー゛調停者゛は、スタイダー(転移者)が3人居ると言っていた。しかし、スライド(転移)した時、俺の横にはサトルしか居なかった。何故一緒でないのか理由がわからない。3人目が何処にスライド(転移)したのか見当もつかないー
歩いてる間も、俺は気になっていた。
「3人目だが、後からあの場所(スライドした場所)に来る可能性はあるかな?」
「あるやろうな、でも、いつ来るかわからんのに、あの場所(スライドした場所)で待つんは、得策とは思えんかった」
ー 俺と同じ事を考えていたのか。あの場所(スライドした場所)で3人目の話をしなかったのも、移動の決断を躊躇わない為だろうな ー
「そうだな、大した装備も食料もない状態で、あの場所(スライドした場所)に留まるのは、ジリ貧になる可能性もある」
「それにや、3人目が先に来ている可能性もある」
ー それは、考えていなかった。確かにその可能性もあるな ー
「そうか、その可能性もあるな、先に来ていたら既に移動している事も考えられるか」
「そや、これは勘やけど、3人目はワシらを探す思うねん…..あくまで勘な」
「俺もそう思う….」
ー 俺たちは2人で来ているから、励まし助けあえる。1人だったら、不安を抱えこなくてはならない。3人目の事を考えると…心配だな…. ー
「不安….だろうな…」
3人目の事を考えると、心が苦しくてなり、言葉に力が無くなる。
「そや、だから、ワシらの目先の目的は3人目を探す事やと思うんや、どうやろ?」
「ああ、同感だ」
「直ぐに探す事は出来ないが、出来るだけ早く探す必要があるか….」
俺は話を続ける。
「まずは、近くの町か村に滞在出来るようにする。後から3人目が来る可能性もあるから、あの場所(スライドした場所)に目印を置くのはどうだろう?」
一呼吸置いて、話を続ける。
「既に来ていた場合も考慮して、町か村での情報収集だな」
「せやな、その案が一番やな。目印はワシらだけがわかる方がええかもな」
「よし、先ずは町か村を目指すが、今は飯でも食おう。まだ日は明るいが、夜は焚火の明かりしかないからな」
「同感や!」
俺たち2人は、カロリースティックにマヨネーズをかけて食べる事にした。
やっとキャンプまで来ました。
書きたい事を書けば書くほど、話が遅くなります。
テンポの悪さに文才の無さにげんなりです。
読んで頂いている方も居るみたいで、嬉しいです。
大体の方向を決めて書き始めたんですが、書くほどに主人公が勝手に動き始めてしまう感じがします。
面白いなぁって感じています。
もう少し進んだら、面白くなる!っと思っています。
暖かく、見守って頂けると嬉しいです!