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異世界☆スライダーズ  作者: 素浪人
異世界からの冒険者たち
37/38

037 襲撃者達 -2-


襲撃者を退けて、俺達は休憩している。


「とりあえず、一安心か・・・」


「そやな……。

ムランで使えそうなヤツを探していたんやろな。

あの言い方やと、力にモノを言わせて、従わすつもりやったんやろうな……」

サトルの言葉にマサユキが続ける。


「そうですね。私もマサユキさんも、弱そうに見えますし、ヒロシさん1人位なら何とかなるかもしれないと思ったのかもしれません」


「ああ。しかし、盗賊みたいな冒険者だな。この事はザザンに言った方が良いと思うんだが……」


「言わな、アカンな……。とっくに逃げてるやろうけどな」

サトルは空を見ながら話す。


その時、曇天の空から、雪が降ってきた。

熱くなった体を冷やしてくれるようだった。


「なぁ、アイツら、何処に逃げたと思う?」


「ムランからは、東西共に、隣町まで歩いて1日かかります。ムランに潜んでいる可能性が高いと思います」

マサユキが答える。


「そうか、街では会いたくないな」


俺たちは、襲撃者が落とした剣を拾い、大八車に乗せて街に向けて、歩き出した。

街に着くころには、雪も風も強くなっていた。


「今日は吹雪くかもしれませんね・・・」

北の門を入ったところで、マサユキが呟くように喋った。


「そやな、さっさと冒険者ギルドで買い取ってもろうて、宿屋で飯にしたいのぉ。精神的に疲れたわ」

サトルが返す。


冒険者ギルドの前に到着すると、マサユキが受付を済ます為に、中に入っていく。

しかし、マサユキは中を見やると、直ぐに走って戻ってきた。


「大変です!!」

マサユキが大きな声で続けた。


「私たちを襲った相手が、中にいます!!!」


「なんやて????」

「なんだと!!!!」

サトルと俺は同時に答えた。


「とにかく、荷物を預けて、中に入りましょう」

マサユキが答えた。


急いで大八車を冒険者ギルドの裏手に持ち込み、解体場の職員に襲撃者達の剣と共に預けた。


そこには、5人の襲撃者とザザンがテーブルに座っていた。

襲撃者で腕が折れている者は、簡素な添え木をしていた。


その周りを他の冒険者が囲んでいるが、表情は様々だった。

ほとんどの冒険者は疑っているようだ。



「あ、あいつらだ、俺たちを襲ったのは!!!ぜぇぜぇ」

肋骨を折ったと思われるリーダー格の男が胸を押さえながら、こちらを指さし叫んできた。


その言葉に、困った顔をしながら、こちらを振り向いた。


「はぁ、はぁ、あいつらが、いきなり飛び出してきて、俺たちを襲ったんだ」

リーダー格の男が、続けて叫んだ。


「何言うとんねん!襲ってきたのは、そっちやろがっ!!」

サトルが、前に出ていく。


「まぁ、ちょっと待て!サトル」

その間にザザンが入り、サトルを制する。


「まて、サトル、相手の話を聞こう」


「わかったわ!」

サトルが怒った表情で答える。


「ああ、こいつらの言い分だがな・・・」

ザザンが一呼吸おいて、話始めた。


襲撃者の名前は、“静かなる巨人”という、Dランクパーティーだそうだ。

一昨日、ムランにやってきた。


今日は、北の森で、爪兎(ツメウサギ)狩をしていたそうだ。

10匹ほどの爪兎(ツメウサギ)を捕まえた、雲行きが謝紙くなってきた為、北の森を早めに抜け出し、街に向かおうとしていた。

北の森を出る直前に、俺たちが待ち伏せをしていて、いきなり襲い掛かってきたとの事だった。


「ええかげんにせやっ!!お前たちが待ち伏せしとったんやろうがっ!」

その話を聞いて、席に座っていたサトルが手ちあがり、青筋を立てながら、飛びかからんと、叫ぶ。


「サトル、お前ぇ、落ち着けって!!」

ザザンがサトルを制する。


「うるさいわ!!ザザン!」

既に頭に血が上っているサトルは、殴り掛かろうとしている。


「サトル、待つんだ!!!」

俺はサトルに向かって叫ぶ。その声が冒険者ギルドに響き渡る


「わかったわ!!」

怒りの表情で、サトルが叫ぶ。


「俺が説明する」

後ろから、サトルの方に両手を置き、優しく話しかけた。


「そうしてくれ、今のサトルは冷静じゃねぇからな」

ザザンが、そう促す。


「わかった。俺たちは北の森を出たところで・・・・」

北の森を出たところで、“静かなる巨人”が待ち構えていた。

その際に、護衛をしてやるから、取り分を寄越せと言われたので断った事。

多少煽りはしたが、“静かなる巨人”が怒りに任せて、襲撃してきた事。


それらを淡々と説明した。


“静かなる巨人”は、そっぽを向きながら、それを聞いていた。

サトルは、青筋を立てながら、腕を組み、貧乏ゆすりをしながら聞いていた。

マサユキは、俺の横に座り、ゆっくりと相槌をうっていた。


「そうか・・・」

双方、全ての話を聞いた、ザザンが呟いた。


「ヒロシ、今日は爪兎(ツメウサギ)を幾つ持ってきた?」

ザザンが俺に聞いてきた。


「ああ、正確に数えていないが、40匹だ」


「そうか、まぁそんなもんだろうな」

ザザンが答える。


「ところで、お前、何で、胸を押さえている?」

ザザンが、襲撃者のリーダー格の男に質問する。


「ぜぇ、ぜぇ、あいつが、変な技で俺を投げ飛ばしたんだ・・・、ぜぇ、ぜぇ、当たり所が悪かったんだ」

リーダー格の男が胸を押さえながら答える。


「ふーん、そうか。マリー、帳簿を持ってこい!」

ザザンが、手で顎を摩りながら、マリーを呼び、帳簿を確認した。


「なぁ、お前ら、何で刀傷が無いんだ?おかしいだろ?」

ザザンは、襲撃者を見ながら、続ける。


「普通、襲撃するなら、問答無用で剣を抜いた状態で襲うだろ?

でも、お前たちに傷はねぇ。

それにだ、投げられたってことは、サトルたちは素手だったって事になる」

ザザンの眼光が鋭くなる」


「後、お前、何で剣が無い」

ザザンは、鞘だけを下げている、襲撃者に問う。


「お、襲われた時に落としたんだ!」

鞘だけ下げた男が答える。


「ほう、で、お前、素手のサトルに剣を抜いたのか?」

ザザンは、男を睨みながら問う。


「・・・・・。」

質問された男は無言で下を向いた。


「おい、お前、素手のヤツを相手に先に剣を抜いたのか?」

ザザンはリーダー格の男に睨みながら問う。


「あ、あ、あいつらが、獲物を寄越せと言ってきやがったんだ!それで仕方なく抜いたんだ!」

リーダー格の男が汗を流しながら答える。


「ヒロシ達は、ずっと40匹前後の爪兎(ツメウサギ)を納品している。

今日もその位だ。ダントツで爪兎(ツメウサギ)を狩ってやがる。

そんな奴が、わざわだ人のモンをぶんどると思うか?」

ザザンは一度天を仰ぎ、リーダー格の男を睨む。


「それにだ・・・・お前、さっき、“いきなり襲ってきた“って言ってたよな?」

ザザンはより一層鋭く睨み、ドスの聞いた声で喋る。


「・・・・。」

リーダー格の男が無言で汗を垂らしている。

その時だった。


小男1人が逃げ出そうした。


「マリー!!!!!」

ザザンが叫ぶと、受付嬢のマリーが、小男追いつき、腕を首に巻き、羽交い絞めにした。

あまりの光景に、その場にいた冒険者全員が絶句した。


「メイヤ、衛兵を呼んで来い!ここに居るものは、こいつらを取り押さえろ!!」

ザザンが叫ぶと、その場にいる冒険者達が、襲撃者達を取り押さえた。

1名怪我をしていない者が、逃げようとするが、数に押し切られて、床に伏せている。


ザザンは、それを確認すると、奥のギルド長室に戻り、手枷を持ってきて、全員に嵌めた。


「ふぅ・・・・ たまに、こういう馬鹿が居るんだよな」

ザザンがため息交じりで喋った。


「よぉ、サトル、少しは気が晴れたか?」

ザザンが冷静になった、サトルに話しかける


「晴れるか!マーーーーーッジで、こいつら気にイランわっ!!!」

サトルが叫ぶように答える。顔には青筋が浮いている。


「そうか、まぁ、こいつらの事は俺に任せろ、良いなっ!!!」

ザザンが俺たちを睨みながら、叫んだ。


ザザン、マリーは、手枷を嵌めた襲撃者達を連れて、冒険者ギルドの奥に連れて行った。


少しすると、マリーが戻ってきて、ザザンが待っているようにとの伝言を伝えてきた。


俺たちは、冒険者ギルドのテーブルで座っていた。

小一時間もすると、受付嬢のメイヤが3人の衛兵を連れてきた。

そのまま、冒険者ギルドの奥に通していく。


暫くすると、衛兵と共に、襲撃者が連行されていた。その後ろに、ザザンとマリー、メイヤが続く。

襲撃者の顔は真っ青な顔をしており、足取りが覚束ない。顔に青痣が出来ていた。


「あとは頼む」

「わかりました!」

ザザンが喋ると、1人の衛兵が答えた。


襲撃者達は、衛兵が連れられていった。


「さてと、待たせたな。ちょっと、話をさせろ・・・・」

ザザンがそう言い、話始めた。


襲撃者は、王都で冒険者をやっていて、最近Dランクに上がったそうだ。

Dランクに上がったものの、王都での依頼が難度が高く、なかなか達成出来ずにいた。

そこで、王都からムランに移ってきた。


「まぁ、王都は依頼も多いが、人数も多い、ランクが上がるほど、辞める冒険者もおおいからな!」

ザザンが呟き、話を続けた。


ムランに移ってきたが、今は冬、簡単に獲物を捕ることが出来ない。


仕方ないので、体よく、こき使える、低ランクの冒険者を探していた。

そこで、目につけたのが俺たちだったそうだ。


俺たちに返り討ちにあったが、冒険者登録している手前、このまま逃げてしまっては、冒険者ギルドから、指名手配されてしまう。自分たちは怪我をしており、襲われた事にして、冒険者ギルドに嘘の申し立てをしたそうだ。


「あいつら、冒険者の王都の分も含めて、ここ半年位は取引記録が全くなかったからな。金に困ってやったんだろうな」

ザザンは、顎を摩りながら喋った。


「そやかて、やっていい事と悪いことがあるわっ!」

サトルが不貞腐れたように喋った。


「まぁ、サトル、機嫌を直せ。地下室でちゃんと仕置きはしてやったんだ」

ザザンはサムズアップしながら、嬉しそうに答えた。


「久しぶりで・・・気を失わせないようにするのが大変でしたわ・・・」

ザザンの後ろに立つマリーが邪悪な笑みを浮かべながら、小さく呟いた。


― こ、この2人・・・ 何をしたんだ? ―

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