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異世界☆スライダーズ  作者: 素浪人
異世界からの冒険者たち
35/38

035 冒険者の日常

「初雪か…」

宿屋を出ると、雪が舞っていた。


「どおりで寒い訳やな。ワシ寒いの苦手やわ」

新調したベストを着たサトルが呟く。


「積もるほどでは無さそうですね」

マサユキが舞っている雪を乗せるように右手を開く。


「そうだな、まぁ、この位なら、大丈夫だろう」


俺達は、雨が降らない限り、北の森で狩りを続けていた。


「今日も爪兎ツメウサギやな!稼ぐで!」

サトルがガッツポーズをしながら答える。


見えない所で、マサユキに収納から、大八車を出してもらう。


いつも通り、俺が大八車を引きながら、ムランの北門を目指して歩く。

北門に到着すると、エレン達、“強き意志を持つ者”が見えた。


1番後にいた、エレンの弟、サロンに声を掛ける


「おはよう、サロン」


「あ、ヒロシさん、おはようございます」

サロンはエレンと違い、非常に紳士的だ。


サロンの声に気がついたのか、ボランも声をかけてきた。

「ヒロシさん、おはようございます」


「ああ、おはよう。エレンもおはよう」


「おはよ」

エレンは挨拶すると、さっさと此方を向いて、プイッと前を向いた。

明らかにに機嫌が悪い。


「すみません、昨日ギルド長から、Cランクは早いと話があって……それから、ずっとああなんです」

サロンが口に手をやり、俺達に囁く。


エレンは、気分屋な所がある。

それが可愛い面でもあるが、扱いづらい。


「そうなんか、まぁ、実力不足やろな」

サトルが空気を読まずに喋ってしまった。


ピキッと音がした気がした…

「何か言ったかしら?」

青筋を立てて、エレンが仁王立ちしている。

サトルはプイっと横を向いて、どこ吹く風だ。


「姉さん、地道にいきましょう。実力はついてきていますから。ギルド長もまだ早いと言っているだけですから。Cランクになれないとは言っていませんから」

サロンが、エレンを宥めている。

ボランは、オドオドしている。


「ふんっ!」

エレンは、プイっと後ろを向く。


他の冒険者達、エレン達と共に北の森に向かう。

それぞれの冒険者達は目的の場所に向かう為、次々離れていく。


「俺達は、爪兎ツメウサギを狩るから、ここで」


サロンに声を掛けると、サロンとボランが手を挙げて答える。


「がんばりや!」

「それでは」

サトルとマサユキが答える。


エレンはこちらを見て、プイッと横を向く。


エレン達と別れて、暫く大八車を引きながら歩く。

マサユキが誰も居ない事を確認すると、大八車を収納し、血袋を取り出す。


北の森の入り口あたりは、爪兎ツメウサギも狩り尽くしているのか、数が少ない。


血袋を開けて、奥に向かい歩いていく。


15分程歩く、マサユキが爪兎ツメウサギの気配を感じた。

頭の中で、カチッと音がする。


ー リンクした ー


ー 了解や! ー

ー 了解です。 右手方向に50m、5匹です。まだ気がついていません ー

サトルとマサユキが答える。


俺、サトル、マサユキの順に右手方向に歩いていく。


歩きながら、腰に刺した両手件を抜く。


ー 匂いに気がついたみたいです。止まりました ー

マサユキが状況を知らせる。


ー ここで待ちましょう。こちらに来ています ー

俺は重心を落とし、右手で持ち、左手を右手首に添える。


ー 出ます! ー


その瞬間、3匹の爪兎ツメウサギが出てきた。

刹那、前衛の3匹が俺に飛びかかる。

剣を水平に振り切る。

ガツン、ガツンと2匹が剣にあたる。

そのまま、地面に叩きつける。

両手剣は斬る程の鋭さがない。


一匹は俺の首筋あたりに爪を突き立てている。

左手で掴み、地面に叩きつける。


すぐに後ろを降り向くと、1匹が倒れていた。

胴体にゴルフボール程の穴が空いている所を見ると、サトルが弾丸バレットを当てたのだろう。

もう一匹は、止まっており、混乱している。


逃げようと、爪兎ツメウサギが後を向いた瞬間。胴体にゴルフボール大の穴が空いた。

サトルの弾丸バレットが当たったようだ。


ー 終わりましたね ー

ー ああ、始末しよう ー

マサユキの言葉に返す。

カチリと頭の中で音がした。


俺達3人はナイフを取り出して、俺が仕留めた爪兎ツメウサギの首筋に突き立る。

終わると、サトルの仕留めた2匹も同じように始末する。

俺達は爪兎ツメウサギから、内臓を取り出す。

爪兎ツメウサギの1匹から、マサユキが血袋に補充する。


俺とサトルは、残りの爪兎ツメウサギを適当な木に逆さに吊るす。

マサユキが血袋を補充し終えると、同じ木に吊るす。

こうやって、爪兎ツメウサギの簡単な血抜きを済ませておく。


水の入った折り畳みタンクを取り出し、手を洗う。

適当なところに腰を下ろし休憩する。


たまに、敏感な爪兎ツメウサギが、こちらに向かってくる事もある。


血抜きを済ませると、マサユキの収納に収め、爪兎ツメウサギを狩る為に歩き出す。


昼時を迎える頃には、20匹程の爪兎ツメウサギが手に入っていた。


俺達は、少し開けた場所を見つけて、昼食にする。

宿屋で売って貰った、硬いパンと串に刺された肉をマサユキが収納から取り出す。昼食といっしょに水の入ったペットボトルを収納から取り出す。


ペットボトルを回し飲みしながら、昼食を済ませる。

俺達は食事中、ずっと喋っている

今日はエレンの機嫌の話が中心だ。

毎日一緒にいるのだが、ずっと話のネタが尽きない。くだらない事でも、面白おかしく、サトルが話す。


ー 2人と居ると落ち着くな……. ー


小一時間、休憩した後に爪兎ツメウサギの狩りを続ける。


まだ日が昇っている間に、狩りを終了する。


北の森を出る前に、見えない所でマサユキは大八車を収納から出す。

大八車の上に、仕留めた爪兎ツメウサギを載せて、ムランの北門を目指す。

俺が大八車を引き、サトルとマサユキが後ろから荷物が落ちないか、見ながら着いてくる。


暫くすると、冒険者達と合流する。北門に近づくに従って数が増えていく。

獲物を持っている者、手ぶらであろう者、様々だ。

若い冒険者は、俺達の大八車を見ると、ふぅと溜息をつく。

Fランクの俺達が、Eランク相当の魔物を大量に狩っているを羨ましく思っているのだろう。

1万-2万程の爪兎ツメウサギでも、数があれば大金になる。


爪兎ツメウサギは、素早く、攻撃的で、当たり所が悪いと深傷を負う。数が多ければ死人が出る程だ。

Eランクの冒険者が爪兎ツメウサギを狙う場合は、括り罠を仕掛けて、動きを止めてから、1匹ずつ仕留めていく。

冒険者ギルドのマリーさんが、教えてくれた。


俺達は北門を抜けて、南東に向けて冒険者ギルドに向けて歩く。


冒険者ギルドの前で大八車を停める。

マサユキが受付に行って、確認してくる。


マサユキが戻ると、冒険者ギルドの裏手に回り、解体場に行き、解体場の職員に角兎ツメウサギを渡す。

木札を受けとり、人気のない場所で大八車を収納して、冒険者ギルドで査定を待つ。


冒険者ギルドのテーブルで待っていると、エレン達が入ってきた。

マリーさんに何か渡して、俺達の前に来た。


「ヒロシ、今日は何匹狩ったのよ?」

エレンが不機嫌そうに聞いてくる。


「あ、ああ、確か43羽…じゃない43匹だ」

たまに、ウサギと間違えて羽と言ってしまう。


「ほんと、馬鹿げた数よね。稼ぎだけなら、BランクやCランクと変わらないんじゃないの!」

何故かエレンが怒ってくる。


「エレン達はどうだ?」


冠猪カンムリイノシシを狙ったけど、見つからなかったわ。仕方ないから、薬草を幾つか取って来た位よ」

エレンは不機嫌そうに答える。


ー そういえば、エレン達が冠猪カンムリイノシシを持ってきたのを見た事がないな ー


「そうか、あんまり無理するなよ」


その言葉が琴線に触れたらしい。


「うるさいわね!!!Cランクになる為には、必要なのよ!上位ランクの仕事ができないとダメなのよ!」

エレンが怒って、そう言い放つと、何処かに行ってしまった。


「すみません。姉さんが、失礼をしました」

サロンが頭を下げて謝ってくる。隣のボランも頭を下げる。


暫くすると、今度はザザンがやって来た。

サトルに″りばあし″のお誘いをしている。

最近は、週に一回程度は付き合っている。


今日は、魔物の査定に時間がかかるので、俺の横で″りばあし″を始めた。

暇な冒険者が回りを囲み、″りばあし″の成り行きを観ているようだ。一局終わる毎にざわついている。

サトルはザザンに負けた事がない。


一時間程して、査定が終わり、マサユキが金を受け取る。


ザザンとの″りばあし″も、お流れになり、宿屋に向かう。

この頃には、俺の大好きな夕焼けになっている。


「また今夜も頼む」

「ああ、お帰り。15000ドンだよ」

宿屋の女将が出迎えてくれる。


後は、いつもの様に、酒場で酒を飲み、飯を食う。




「誰か見ているか?これが、今の俺達の日常だ」

ベッドで天井に向かい、誰にも聞こえないように呟いた。


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