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異世界☆スライダーズ  作者: 素浪人
異世界からの冒険者たち
34/38

034 冬支度

「おはよう。マサユキ」


「おはよう御座います」

マサユキは先に起きていたようで、部屋のテーブルに座っていた。


マサユキとのやりとりで起きたのか、サトルが目を覚ました。

「おはよーさん」

ベッドから上半身を起き上がらせて、右手を上げる

サトルの目は半開きだ。急にサトルは、身体をビクッとさせる。


「うわっ!さっむー!めっちゃ、寒いやんけ!!」

サトルは両手で自分を抱きしめて震えている。


ー 確かに急に冷え込んできたな。もう少しで冬を迎えるのか… ー


「確かに寒いな」


「寒いですね。ムランがデパ位の気候でしたら、相当寒くなるかもしれません」

マサユキが答えた。


「マズイやん。ワシ、寒いの苦手やねん。マサユキ、どの位寒いん?寒さでタオル凍るん?」

サトルが歯をガチガチさせながら、話す。


「ははは、寒い時でしたら、体感で-20℃位でした。夜はもっと冷え込んでいました。

川も凍りましたし、毎年何人かは、外で寝てしまって凍死者が出ていました」

マサユキが笑顔で話す。


「それ、ダメなヤツやん。

しかも、ワシら、ムランに着いて、宿屋、冒険者ギルド、森しか行ってないやん。

着てるもんも、デパのまんまやん。

絶対死ぬやん」

サトルは震えながら続ける。


「なぁ、服とか買ったほうがええんちゃう??

そうしないと死ぬで!」


「そうだな、今日は狩を早めに切り上げて、買い物にするか?」


「そうしよ!そうしよ!生きるためにそうしよ!」

「わかりました」

サトルとマサユキが同意する。


俺達は北の森に向かう。

血袋を開けながら森を進む。

マサユキが気配を感知しつつ、爪兎ツメウサギを見つけては、狩っていく。


サトルは、この1ヶ月の間に新しい魔法を作り上げた。


弾丸バレット


この世界の考え方なら、土魔法で弾を作り出し、加勢魔法で撃ち出す、そんな感じだろうか。

サトルは、ピストルから、弾を撃ち出すイメージだと言っていた。

まだ、サトル自身にイメージが定着していない為、一回毎の発動に時間がかかる。

ただ、使っていくうちに時間が短縮されると考えていた。


「そろそろ、上がって、服を買いにいかないか?」


「そやな」

「そうですね」

サトルとマサユキが答える。


まだ日は真上までは来ていない。

日暮れが早くなってきてはいるが、この時間に帰れば夕方まで時間とれる。


狩った、爪兎ツメウサギは12匹、サトルが4匹、俺が8匹。


前衛の俺が逃した爪兎ツメウサギを、サトルが弾丸バレットで狙い撃つ。


このやり方にしてから、効率が上がった。


1日あたり、40匹前後は狩れている。

1か月前は、20匹弱、爪兎ツメウサギを狩始めた頃が10匹弱。


爪兎ツメウサギは、1万から2万ドンで買取だが、平均は1万2千ドン。

毎日、40万から50万ドンを稼いでいる。


マサユキが立て替えていた、デパからムランの旅費はかなり前に返している。


そう、金はある。


俺達は、朝宿屋の女将に聞いた、ムランの3層で1番人気の服屋に向かう事にした。店は3層の南東にある。







「ここだよな?」


「ここやろな」

「ここですね」

サトルとマサユキが答える。


ー ゴスロリ ー


「なぁ、ゴスロリだよな」


「ゴスロリやな」

「そ、そうですね」

サトルとマサユキが答える。


店は、ゴシック建築のような作りをしており、屋根も壁も黒い。

看板は、灰色の背景にエプロンドレスと、ゴスロリ風のドレスが描かれている。




ー この世界の店は、何故こんなにクセが強いんだ ー




ー 嫌な予感しかしない ー






「なぁ、店主なんだが、生意気少女のイメージしかないんだが…」


「そやな、代わる代わる服を着せられて、″あなたにはコレがお似合いよ″って、勝手にタキシードみたいんに決まってしまうイメージしか持てん」

サトルは呟く。


「私も入り難い店だと思いますが、宿屋の女将さんのオススメですから、折角ですし見て行きませんか?」

普段は大人しいマサユキだが、義理を重んじる所がある。


ー 入りたくない……でもマサユキの言う通りだ ー

サトルも俺もこういう時のマサユキの提案は断り辛い。


「そうだな、いくか?」


「そやな」

「行きましょう」

サトルとマサユキが答える。


俺は扉を開けて、店に入って行った。

店は掃除がいく届いている感じで、全体的に明るい。店内を見渡すと、窓が広いようで十分に採光できているようだ。


その奥に、50代位の髪はロマンスグレー、やや細身の男が座っていた。口髭を生やし、眼は細め。

グレーのタキシードのような服を着ている。

見た目は、執事のようにも見える。



「いらっしゃいませ」

店主らしきその男が、立ち上がり優しい声色で喋る。


ー 良かった。比較的普通だな ー


「今日はどういった、ご用件でしょうか?」

店主は俺達に近づきながら喋る。


「ああ、すまないが、冬服が欲しくてな」


「畏まりました。では、どういった服にされるか、こちらで、お聞かせください」

店主が近くのテーブルへ、誘う。


この世界では、下着以外、服を自分で作るか、オーダーメイドが一般的。

俺達は自作出来ないので、オーダーメイドする。


「先ずは、マサユキはどうする?」


「そうですね。動きやすく、暖かいものにして下さい」

マサユキは完全に後衛の為、防具は着けていない。

デパに居た時と同じ服装のまま、麻の上下を重ね着していた。


「ふむ、でしたら、羊毛のセーターに皮のコートはいかがでしょうか?」

マサユキは店主の提案の通りにする事にした。


「次ら俺でいいか?」


「ええで」

こういう場面でのサトルは面倒な事を言うので、先に済ませてしまう。



「俺は、皮鎧をつけたまま、防寒になるものがいいんだが」

店主は顎に指を置き答える。


「ふむ、でしたら、中にはセーターを着て頂き、皮鎧の上に皮ベストを着るのはいかがでしょうか?」

店主が答える。


「ああ、それでお願いする」


「ほいっ!じゃ、ワシやな!」

サトルが手を挙げる。


「ワシはローブや!」

サトルは、ビシッと店主を指差す。


「取り扱っておりません」

即答だった。

店主は、溜息混じりで一呼吸置き、続ける。


「ローブを作るには、死蜘蛛デススパイダーの糸を使用致します。1層で取り扱っておりますが非常に高価なものでございます。

それに…祭司や謁見に着るもので御座います…

冒険者とお見受けしますが、ローブでは動きづらいかと思いますが?」


サトルはその言葉にシュンとしてしまった。


「ワシ、ローブ着れると思っとった」

サトルは、聞こえるか、聞こえないかという位で呟く。


ー サトルは諦めていなかったのか!デパの武器屋で歩き辛いと納得していなかったのか! ー


サトルはムランに着く頃には、杖に飽きてしまっていた。俺はローブも諦めたと思っていたのだ。


「サ、サトル、似たようなモノにしたら良いんじゃないか?」


「そやっ!なら、皮で長っいコートがええ!」

サトルが気を取り直し、店主を指差す。


「皮のコートは重いだけで御座います」

店主は即答だった。


その後、サトルを説得して、俺と同じくセーターに皮のベストにする事で納得した。

店主の好意でマントを新調する事にしたのが、決め手だった。


ただ、今までのマントは、木に引っかかるなど邪魔だったらしく、腰位まで短くするらしい。


ー 邪魔なら、着けなくていいんじゃないか? ー

俺がそんな事を考えていると、横のサトルはウキウキしている。


一通り話終えて、それとなく店の外観について聞いみた。

この店は店主の母親が始めた。

女性専門の洋服を作っていた。

母親は、可愛い服を作るのが好きだったらしく、ゴスロリ風の洋服を作っていたそうだ。

店主が店を任せて貰えるようになり、男性向けの洋服を作り始めた。


「母の洋服は、特定の女性には熱狂的に、支持されておりました。残念ですが、一般の方には受け入れて頂けませんでした」

店主は遠くを見ながら、懐かしむ様に呟く。


ー 当たり前だ! ー


俺達が店を出る頃には、空が赤くなってきていた。

日が短くなっている。

冬も近いのだろう。


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