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異世界☆スライダーズ  作者: 素浪人
異世界からの冒険者たち
30/38

030 先輩冒険者

黒い森から出てきた3人を確認した俺は、魔物がいると思われる方向に走っている。

3人組の間をすり抜けて、俺は黒い森に走る。


ー 出ます!ー

マサユキが叫ぶ。


3mほど先の黒い森から角熊(ツノクマ)が出てきたのが見えた。

俺はスピードを落とさすに角熊(ツノクマ)に向かっていき、そのまま横なぎで剣を振った。

ガンと鈍い手ごたえを感じる。角熊(ツノクマ)の鼻を捉えたようだった。

おれはスピードをそのままに、角熊(ツノクマ)の横を抜けて、振り返った。


ー ヒロシさん、そのまま左回りで、角熊(ツノクマ)の後ろに入ったら、足を狙ってください ー

ー サトルさん、ヒロシさんが射線から外れたら、ファイアーボールを目にっ! ー

マサユキの指示が飛ぶ。


俺は、角熊(ツノクマ)の右側に回り込み、剣を振り上げる。

その時、ファイアーボールが角熊(ツノクマ)の顔に当たった。

両手に持った剣を、思い切り左足に叩き込み、そのまま振りぬいた。


ー サトルさん、ファイアーボールを同じ場所に! ー 

マサユキの指示とは異なり、ファイアーボールが角熊(ツノクマ)の目の前で辺り、下草を燃やし始めている。


ー この女!なにしてくれとんのじゃぁ!!!! ー

サトルの怒鳴り声が聞こえてきた。


ー くっ!ヒロシさん、そのまま、こちらに来てください ―

マサユキの言葉を聞き、火を避けながら、マサユキの元に向かう


ー ヒロシさん、サトルさん、角熊(ツノクマ)が逃げていきます ―

マサユキの声を聞き、走りながら後ろを振り向くと、角熊(ツノクマ)が足を引き釣りながら、黒い森へ引き返していく。


足を止めて、角熊(ツノクマ)を見る。


ー もう大丈夫のようです ー

黒い森に入って、姿が見えなくなると、マサユキの声が聞こえた。


「ふぅ・・・」

思わずため息が漏れた。


俺は、ゆっくりと、サトルとマサユキの元に歩いていくが・・・

サトルが女と口論になっていた。


「女!何すんねん!なんで邪魔したんじゃ、ボケ!!!!」

サトルが叫んでいる。


「あんた、馬鹿なの?

剣士が引いた時に魔法を放つのが基本でしょう。

あれじゃ、あたっちゃうじゃないの!」

女が叫び返す!

その間で、マサユキと、男二人が宥めている。


「阿保!!!ど阿保っ!!ワシらのやり方に口出すんは阿保や!!!」

サトルが唾を飛ばしながら女に怒りをぶつけている!


「サトル!やめろっ!!!!」

俺は、大声で叫んだ!


「「!」」

サトルとマサユキがキョトンとしている。

普段、大声など出さない俺にびっくりしたのだろう。

他の3人も黙ってしまった。


「ヒロシ、すまんのぉ・・・カッとなってしもうて」

少々、時間をおいて、頭を搔きながら、サトルが謝ってきた。


「いや、いいんだ。先ずは何があったかと、何者なのかを確認しよう」

サトルを見ながら答える。


「俺たちは、サンライズというパーティーだ。何があった?」

俺は一呼吸おいてから、3人に向かって話かけた。


「先ずは、お礼を言わせて。助けてもらって有難う。私たちは、Cランクパーティーの“強き意志を持つ者”よ」

女が俺を見つめて、話を始めた。


女1名、男2名の3人パーティー。

女の名前は“エレン”、このパーティーのリーダー的役割だという。

皮鎧に短剣を差している。

赤毛で目が少々吊り上がっており、見た目がきつく見える。年齢は20歳。かなりの美人だ。


1人の男は、エレンと同じ赤毛で、名前は“サロン”、20歳で、エレンの弟だそうだ。エレンに顔立ちが似ている。中肉中背、端正な顔立ちをしている。金属製の鎧を身に着けて、片手剣を下げ、剣士といった雰囲気だ。右手に槍を持っている。


もう1人の男は、名前は“ボラン”、20歳、こちらも中肉中背、金属製の鎧を身に着けて、片手剣を下げ、同じく剣士といった雰囲気だ。サロンの友人だそうだ。


3人パーティーを見ていると、エレンお嬢様を守る、2人の騎士といった雰囲気に見える。

冒険者と言われても、ピンとこない感じだ。



エレン達3人は、朝から黒い森の辺りで、穴猪アナイノシシを探していたそうだ。

昼くらいに、大きな穴猪アナイノシシを見つけた。

藪に隠れて、エレンが土魔法で穴猪アナイノシシの足元に泥濘を作り、動けなくした。

サロンとボランは、動けなくなった穴猪アナイノシシを槍で突いて倒した。

3人で大きな穴猪アナイノシシだった為、持って帰るのは難しいと判断し、皮と魔石を持ち帰るために、仕方なく解体に入った。

そこに血の匂いを嗅ぎつけた、角熊(ツノクマ)が現れた。

そのまま、穴猪アナイノシシを置いて逃げればよかったのだが、警戒していたボランが驚いて、槍で角熊(ツノクマ)を刺してしまった。

怒った角熊(ツノクマ)に追いかけられて、俺たちを遭遇した。


一通りの話を聞いて、俺は口を開く。


「それで、何故揉めていたんだ?」

サトルとエレンに確認した。


「そや、2発目のファイアーボールを撃ちだそうとした時、この女がワシの腕を下に押したんや!」

サトルが青筋を立てながら話す。


「当たり前じゃないの!

前衛が完全に下がった時に魔法使いは攻撃するの!

詠唱に時間のかかる、攻撃魔法を使うんだから、常識でしょ!」

エレンがサトルに食いつくように叫ぶ。


一息ついて話を続ける。


「だいたい!あんな大きさの火魔法を、発動してからコントロールするのに、どれだけ集中してるのよ!

前に出すだけで、終わりじゃないの!」


今、サトルのファイアーボールはバスケットボール並みになっている。それを20発は撃てるらしい。

止まっているモノならば、外れる事はない。

しかも、詠唱などしない。

一瞬でボールを作り、その状態で狙いをつけるだけだ。


ー エレンの話だと、魔法は詠唱が必要でコントロールが難しい事になる………。俺達は彼等の常識と違う可能性がある ー

俺は脂汗が出てきた。


「この女!ワシは…」

「サトル、ちょっと話がある!」

また熱くなったサトルの肩を掴み、こちらを向けた。


「サトル、冷静になってくれ。彼女の話が本当なら、詠唱しないで、簡単にファイアーボールを当てるのは異常な事かもしれんぞ!」

サトルの耳に口を寄せて、強い口調で囁く。


サトルは、俺の顔を見遣り、ハッとした顔をする。


俺達は異世界から来ている。


調停者の話から、俺達は強い能力スキルを持っている可能性が非常に高い。

危険な存在と判断されるかもしれないし、懐柔して不本意な戦いを強いられるかもしれない。

理不尽なトラブルに関わらないように気を付けている。


その為に他の冒険者とは最低限の接触に抑えて、情報が漏れる事を避けてきた。酒場でこの世界について聞き耳を立てて情報収集していた程だ。


「とにかく、冷静になれ!お前らしくない」

もう一度、サトルに囁く。


サトルは、目を瞑り、ふぅと息を吐いた。


「すまんの、そやったな」

サトルは納得したように呟いた。

俺の手を退けて、俺の肩をポンポンと叩き、エレンの前に立ち直る。


「戦闘で血が昇っとったわ!エレンさんの言う通りや!すまんかった!」

サトルは頭を下げて、大声で詫びた。


エレンは何が起こったのか、わからず一瞬キョトンてする。


「ま、まぁ、いいわ。わかってもらえて。もっと基本から学ぶべきね!」

エレンは腕を組みながら、頭をコクリコクリとしながら喋る


この光景を見て、マサユキとサロン、ボロンがホッとしている。


「それにしても、あんなに早い詠唱は初めてみたわ。

それに火の大きさも中級位だし、センスいいと思うわ。

まさに実践向きよね」

エレンがビシッとサトルに指差し喋る。


ー サトルは詠唱していない。戦闘の混乱で勘違いしている。有難い勘違いだな ー


「アリガト、ゴザイマス。ウレシイデス。」

冷や汗をダラダラ流しながら、視線を躍らせて、サトルはおかしな言葉で返す。少々顔が青い。


「それに、あの体捌きもすごいわね!あんなに軽い身のこなしなのに、角熊ツノクマにダメージを与えるなんて!」

今度は俺に指差す。


「私達と同じくらいの年なのに…ランクはいくつなの?」


「ああ、Fランクだ」


「「「はっ?????」」」

俺が答えると、エレン達3人があっけにとられた顔をした。


「ちょっと待って頂戴、私たちは新人(ルーキー)に助けられたってこと?」

エレンが頭を抱えながら喋る。


「ああ、1ヶ月前に登録したばかりなんだ」


「あーーーん、もう、それ以上言わないで・・・ショックすぎわ・・・はぁ~~~~~~っ」

エレンは頭を抱えて盛大にため息をついた。


「!」

エレンは何かをひらめいた。


「ねぇ!私たちのパーティーに入らない!!!!」

エレンがビシッと俺たちを指さし叫ぶ。


「いやや」

「断る」

「遠慮します」

俺たち3人はきっぱりと断った。


「なんでぇ~~~」

エレンが泣きそうになりながら、俺にしがみついてくる。

エレンは少々空気が読めないようだった。

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