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異世界☆スライダーズ  作者: 素浪人
異世界からの冒険者たち
29/38

029 駆け出しの冒険者たち

「ヒロシさん、サトルさん、気配を感じます」

マサユキが右手で制する。


カチッと頭の中で音がする。


ー リンクした ー


ー わかったわ ー

ー はい ー

サトルとマサユキに思念伝達が繋がった事を伝える。


ー この方向に魔物だと思います。数は…3です。この大きさですと、爪兎ツメウサギだと思います。距離は50m程。 ー

そう言いながら、マサユキが左側の先を指差す。

マサユキの気配感知もレベルが上がり、半径50-60m程度まで範囲が広がった。

収納も2m立方になった。


ー 了解、じゃあ、俺の方で対応する ー

そう言うと、マサユキが指差す方へ、剣を抜きながら慎重に歩き出す。

多少は開けた場所で立ち止まる。


ー こちらに気がつきました。来ます! ー

ー わかった ー

マサユキに返事をしながら、重心を落とし、両手に持った剣を右手で持ち、左手を手首に添え、横に構える。


出てきたのは、爪兎ツメウサギ

見た目はウサギに似ている。

しかし、両手に鎌の様な大きな爪が1本生えている。小さな爪がその下に生える。

目は血のように赤い。


爪兎ツメウサギは、両足で跳ねる様にこちらに向かってくる。

3匹が連携しているようだ、前に2匹、その後に少々離れて1匹いる。




十分に引きつける。




剣が届く距離…前の爪兎ツメウサギが飛びあがった瞬間。


左に見える爪兎ツメウサギを薙ぎ払う。

前の爪と首に剣が当たり、鈍い衝撃を感じる。

その横にいる爪兎ツメウサギが、剣筋にいるため、剣をそのまま、2匹目の胴体に叩きつける。

剣を振り抜いて、2匹を地面に叩きつける。


3匹目は危険を感じたようで、右手方向に進路を変えて、スピードを殺さないように逃げて行った。


ー 終わったな ー

1匹目は全く動かない。2匹目はピクピクしている。


ー ありがとさん… ー

ー お疲れ様でした ー

サトルとマサユキが答える。サトルは元気が無い。


カチリと頭の中で音がした。


サトルとマサユキが前にでていく。

失血死させる為に手に持ったナイフで首を裂いていく。


「今日はこれで8匹か」

俺はポツリと呟いた。2人の耳には届いていない。


まだ、日は高い。


「まだいけそうだ。あと10匹位どうだ?」


「そうですね、まだ血袋も残っていますし、頑張りましょうか」

マサユキが血の入った袋を持ちながら、言葉を返す。


「そやな…」

サトルがしょんぼりしながら呟く。





冒険者登録して30日が経った…

俺達は、ムランの北の森に居る。




冒険者登録した翌朝、俺達は冒険者ギルドに向かい、依頼を確認していた。

俺達は、暫く依頼を眺めていた…


急にサトルがポンと手を叩く。


「なぁ、ワシ思うねん。このEランクの爪兎ツメウサギとFランクの薬草採取って一緒にできるんちゃう?」

サトルが常設依頼の板を指差し続ける。


「やり方にもよると思うんやが、多分肉食の…爪兎ツメウサギを血の匂いで誘き寄せるやん。

来るまでは薬草取るやん。

近づいてきたら、マサユキが気がつくやん。

倒すやん。

で、ワシら金持ちやん!っちゅう作戦や」

サトルが胸を張りながら答える。


薬草は、1束で500〜1000ドン。

爪兎ツメウサギは、1〜2万ドン。


ー まぁ、やって見なくちゃわからんか・・・ ー


「やってみるか!だが、マサユキ、爪兎ツメウサギは肉食なのか?」


爪兎ツメウサギは雑食ですが、肉を好みます。鼻も良いです。これは確かに良い作戦だと思います」

マサユキは顎に手を置き答えた。


「サトル、爪兎ツメウサギが肉食だって知ってたのか?」


「いや知らん。デパで爪兎ツメウサギで襲われて(・・・・)死人が出とるって聞いてたからの。それに森の肉食なら鼻が頼りやろし、手負いの獲物は狙い易いからのぉ、寄ってくるわけや!」

サトルは、腕組みし、胸を張って答えた。


「そうですね。マリーさんに聞いてみましょうか」

「そうだな」

マサユキの提案に答えた。


冒険者ギルドの受付嬢マリーさんは、冒険者登録の件以来、対応が非常に良い。


マリーさんに確認したところ、森の浅い場所には、安い薬草が生えているそうだ。

同じ場所に爪兎ツメウサギも潜んでいるが、数は少ないとの事だった。

深い場所の方が稼ぎは良いとの事。

また、薬草採取しながら、爪兎ツメウサギを狩るのは、止めた方が良いとアドバイスしてくれる。

爪兎ツメウサギはスピードの速い魔物らしく、対処が遅れると、命を落とす事もあるそうだ。

駆け出しの冒険者が周辺を警戒しながら、薬草採取など、器用な真似は出来ないからだそうだ。


ただ、俺達にはマサユキが居る。

気配を感知出来るマサユキは、大きなアドバンテージになる。

結局、俺達は、薬草採取しながら爪兎ツメウサギを狩る事にした。


が………


薬草は安過ぎた。

森の浅い場所で半日程採取しても、3人で1束程度。

爪兎ツメウサギは全く出てくる気配は無かった。


それから、俺達は徐々に森の深い場所に入って行き、爪兎ツメウサギ狩のみに切り替えた。


爪兎ツメウサギも森を進むに従い、血袋に誘われて襲ってくる。

最初のうちは、爪兎ツメウサギ狩に手古摺ったが、すぐに慣れた。




そうやって、今日も爪兎ツメウサギ狩を続けていた…


「なぁ、ワシ、爪兎ツメウサギのトドメをさす以外に仕事ないかのぉ」

先程仕留めた爪兎ツメウサギをマサユキに渡しながらサトルが呟いてきた。


「仕方ないさ、森の中で火魔法は使えないからな。火事はシャレにならんからか」


サトルは火魔法以外使えない。

火魔法は、止まっている状態ならば当たる。

しかし、爪兎ツメウサギは、常に動き回る為、相性が悪い。

森の中で火魔法が外れれば火事になり、逃げ遅れば危険だ。


「そうやけどなぁ…他の魔法の使い方がわからんしのぉ」

サトルはしょんぼりしながら呟く。


この所、他の魔法が使えないか、サトルは試しているが、使える様子がない。

これまでに、風魔法、土魔法等、多様な魔法がある事は小耳に挟み、わかっていたが、サトルは使えない。使い方を聞きたいが、魔法使いに会った事が無かった。


因みに、今まで怪我をしていなかったので、回復魔法は使っていない。

少なくとも疲労回復には使えないみたいだ。


「なぁ・・・・・。今更だがザザンに魔法の事を聞いてみるか?″りばあし″の貸しがまだ残っていたんじゃないか?」


「あ、そやった!今まですっかり忘れとった!帰ったらザザンに聞いてみるわ!」

サトルは明るい表情で手をポンと叩いて答える。


「さて、もう少し奥まで行こうか!」


俺達は森の奥に入って行った。

30分程歩くと、少々開けた場所に出る。

すると目の前の森の雰囲気が変わった。

森が、薄暗く、陰気な感じがする。

まるで、ここから先はレベルが違うと言わんばかりの感じを受ける。


「なぁ、森の雰囲気が暗くないか?」


「そやな、嫌な感じがするわ。多分やが、ギルドで言っとった、“黒い森”ちゃうかな。

血袋閉じひんか?少し戻った方が良い思う。

明らかに、ワシらが入っていいとこや無いと思うわ」

サトルが真剣な顔で答える。


黒い森については、冒険者ギルドで推奨ランクCと聞いていた。

棲んでいる魔物もランクが高くなる。


「そうですね、今の所、魔物の気配は感じません」

マサユキが血袋を収納しながら答える。


俺達は振り返り、歩き出そうとした瞬間だった。


「待って!後ろ、人が来ます!」

マサユキが突然叫ぶ。


俺達は再度振り返り、黒い森を向く。


「2人…後から1人、全部で3人来ます」


ー 敵か!? ー


頭の中でカチッと音がする。


ー リンクした ー


ー わかったわ ー

ー はい ー

サトルとマサユキが答える。


ー 走っています。40m あります。あ!その先15m魔物です!爪兎ツメウサギじゃない! 1匹です ー

マサユキの声に焦りが見える。


ー 多分冒険者が、仕留め損なったんやろ! ワシら爪兎ツメウサギの血がついとる!こっちが追われるかもしれん!迎え撃つしかないわっ! ー

サトルが頭の中で叫ぶ。


ー これはっ!恐らく、角熊(ツノクマ)ですっ! ー

マサユキが焦ったようにさけぶ


ー わかった!最悪、火魔法を頼む! ー

サトルに答えながら、重心を落とし、右手に剣を持ち左手を手首に添える。

サトルとマサユキが後ろに下がった。


ー 出てきます!! ー

マサユキが叫ぶと同時に男女が黒い森()から飛び出してきた!

その直後にもう1人男が飛び出してきた。

それを確認すると、俺は魔物がいるであろう方向に走り出した。



「大丈夫かっ!!」

咄嗟に声が出てしまった。


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