024 盗賊?
初めての魔物との戦いから、5日が経った。
俺達は、ムランに向けて、歩いている。
森というより、木がまばらに生えた林という感じだろか。日差しも通る。
街道には歩いている人が見えない。後も居ない。
道は少し下っている。
ー 思念伝達はどんな条件で使えるようになるんだ ー
俺は歩きながら、昨日から、こんな事を考えていた。
魔物に襲われた時に、普通に思念伝達を使ったが、次も使えるとは限らない。
魔物に襲われた次の日の宿屋で、改めてフォーメーションを確認した。前衛が俺、次がサトル、後がマサユキでマサユキの指示で戦う。
ー このフォーメーションに思念伝達が加わると便利なんだよな ー
動き回る俺は、マサユキの言葉が届かない。
サトルの言葉も俺に届かない。
サトルもファイアボールを当てないように攻撃しなくてはならない。
ー゛調停者゛は、強い気待ちでリンクしたとか言っていたな。気持ちの問題なのか? ー
俺は、歩きながら、サトルを見た。
ー サトル、いつもありがとう! ー
頭でそう叫んでサトルを見る。
サトルはボーっと歩いたままだ。
ー 感謝の気持ちが足りないのか? ー
ー 戦いが始まると、発動する? 気持ちが高まるのか? ー
こうして、考えがまとまらずに歩いている。
「わからん」
ボソリと呟く。
「どうしたん?なんか、お困りかいな?」
横を歩いている、サトルが答えた。
「いや、思念伝達がどうやったら使えるか考えていたんだ」
「あ、あれ、便利やからな!喋るのと聞くが無くなるだけで、あんな早くコミニュケーションが取れるんやからなー」
サトルの言っている意味がよく分からなかった。
「ん、早くコミニュケーションが取れるのか?」
「そやそや、だってな…….」
サトルが説明してくれた。
サトル曰く、
考える→伝わる日本語にする→喋る→聞く→相手が理解するのプロセスが、
考える→伝わる日本語にする→相手が理解する
と、2ステップ減るからだと。
「下手したら゛考える゛と゛相手が理解する゛の、2ステップだけかもしれん」
サトルは、指を2本立てて説明してくれた。
ー サトルの分析力は怖い時があるな ー
サトルに関心する。
その時、目の前を歩くマサユキが、立ち止まり、手を制した。
ー 敵か? ー
ドクッと心臓が高鳴りし、背中が寒くなった。
カチッと頭の中で音がした。
ー あの時と同じ!? ー
ー サトル、マサユキ、聞こえるか?ー
頭の中で確認する。
ー うわっ、聞こえるわ ー
ー はい、聞こえます ー
サトルとマサユキが素早く答える。
ー ちょっと待って下さい。気配を感じます。 ー
マサユキが続ける。
ー 林の方….人…だと思います…………1人が近づいてきます ー
マサユキはそう言い、手をおろす。
俺もサトルも無言で次の言葉を待つ。
ー 止まりましたね。木に隠れています ー
マサユキが呟く。
ー ワシらを伺ってるかもしれんの ー
サトルが緊張しながら呟く。
ー 盗賊?1人で… ー
ー あっ、離れていきます。後ろに行きます。ー
俺の言葉を遮り、マサユキが呟く。
ー 多分、偵察やと思う。この先で待ち構えているかもしれん ー
サトルが呟く。
ー 逃げるか? ー
ー いや、ちょい待ち ー
ー 気配が消えました ー
サトルが答えると同時にマサユキが呟いた。
ー どうしたサトル? ー
ー 多分やけど、後から人が来るか確認したんやと思う……ー
サトルが続ける。
ー って事はもう一度、ワシらを確認して、戻って仲間に知らせるやろな……、距離はどの程度かいな。んー、こっちに向かってきた言う事は襲撃の準備やろうし、短くて50m先ってとこかい、って事は…ー
ー サトル、考えが漏れてるぞ ー
ー うわっ、スマンスマンなれてないからの ー
サトルが焦ったように答える。
ー 50m先って考えると、後ろはどの位先まで見に行くと思う? ー
ー 100mくらいちゃうか? ー
サトルが答える。
ー 足場も悪いし1分位で返ってくるか。アドバンテージは1分少々か、それな…ー
ー あ、後ろに気配を感じます ー
マサユキが言葉を遮る。
ー ゆっくりゆっくり、歩いてくれんか? ー
サトルが話す。
ー ん?わかった ー
俺達はゆっくり歩きだす。
サトルは、足を引き摺っている
ー 向かうふりして、逃げよう思う ー
サトルが一言説明を入れる。
ー ああ、そう言う事か、足が悪いふりか ー
ー 止まりました。 ー
マサユキが呟く。
ー 気配が消えたら、音をたてずに戻るで ー
サトルが呟く。
ー あ、気配消えました ー
その言葉を聞くと、ゆっくりと後ろを向き歩き始めた。
背中に冷たいものを感じる。
ー 装備をマサユキに渡していいか?逃げるのに邪魔になるからな ー
歩きながら、剣と布袋をマサユキに静かに渡す。
サトルも杖と布袋を歩きながら渡す。
マサユキは全てを静かに収納していった。
ー あっちは、武器を持っているだろう。身軽な分、俺達より遅いと思う ー
聞き耳を立てているが、走る音はしない。
3分位、歩いただろうか。
ー 走るか? ー
ー そやな ー
ー はい ー
サトルのペースに合わせて、俺達は走り始めた。
ずっと、歩いて移動してきたおかげか、サトルの体力も上がってきた。しかし、マサユキよりは遅い。
30分程走る。
手ぶらとはいえ、走りつづけるのはキツイ。
サトルのペースが一気に落ちた。
ー 歩くか? ー
ー そやな、キッツイわ ー
サトルが答える。
ー 気配は感じません。わかりました ー
マサユキが答える。
早いペースで、一言も話さなず、2時間程歩いた所で、林を抜けた。
ーここまで来れば、大丈夫だろうー
ー そやな ー
ー そうですね ー
2人が答える。
サトルとマサユキは、息があがっている。
頭の中で、カチンと音がした。
ー 思念伝達が切れたか? ー
「思念伝達が切れた。ちょっとキツイが2時間もあれば宿場に着く。このまま歩こう」
「はぁはぁはぁ、はーふー、わかったわ」
「はぁはぁ、わかりました」
2人が答える。
マサユキが装備と布袋を取り出し、俺達はそれを受け取った。
支度を整えると、宿場に向かった。




