023 初戦闘 -2-
「やばいわ、魔力を、ごっそりもっていかれたわ!」
足を投げ出し、両手を地面につけた、サトルが喋った。
「そうですね。残りは1/3程です」
マサユキが素早くサトルを鑑定して、答える。
「まじかいな、えっと、使ったんは7発やな、残りは3,4発ってとこやな」
サトルは右手を折りながら数える。
デパの街で魔法の練習をした際に、ファイアボールが、10から11発程度、撃てる事がわかった。
また、サトルは自身の魔力を感じる事が出来るようだ。ただ、サトルは感覚として、減ったか戻ったかわかる程度だそうだ。
マサユキは鑑定で魔力、能力を視認できる。魔力は数値化しているか聞いた所、頭にゲージが浮かぶ感覚に近いそうだ。目には見えないが感じるとの事だった。
また、人、魔物に関わらず、状態がわかる様だ。
「マサユキ、水を貰えないか?」
「はい、ヒロシさん、どうぞ」
マサユキがペットボトルの水を空間魔法で取り出し、俺に渡した。
「サトル、ヒロシは水を飲むか?」
「私は結構です」
マサユキはそう言い立ち上がる。
「ワシは貰うかな」
そう答えたサトルにペットボトルを渡した。
「えーとですね。この魔物は角熊ですね。
ほぅ、角は10万ドン、皮が25万ドン、片手が5万ドン、肉が全部で10万ドン、骨格が10万ドン、魔石が10万ドンの価値がありそうです。
ふむ、魔石の価値が高いですね。そのままの金額で買取にはならないかと思いますが、30〜40万ドン程度にはなるでしょう」
マサユキが鑑定結果を教えてくれた。
「マサユキ、収納出来るか?」
「残念ですが、無理です」
残念そうにマサユキが答える。
「魔石だけでも…と言いたいが、解体している時間が惜しいな」
俺は立ち上がり、人差し指を空に向けた。
サトルも続いて立ち上がり、お尻を手でパンパンと払った。
魔物には魔石と呼ばれる核の様なものがある。魔物と動物の大きな違いだそうだ。
魔物は非常に凶暴で、手懐けることは出来ない。
魔物と動物を見た目で判断するのは瞳が判りやすいそうだ。
ー この魔物の目は赤いんだな ー
「そやなぁ、しかも、魔物から大量に血が出とるし、別の魔物が来んとも限らんしの。さっさと離れるんが、賢いと思うわ」
サトルが腕を組み答える。
「残念ですが、角熊は諦めますかぁ」
マサユキは諦めた顔をした。
「せめて埋めていきたいが、その時間も惜しいな。せめて、林に移動するか?」
「そやなぁ」
「そうですね」
サトルとマサユキが同意した。
俺は角熊から、剣を抜き取り、布で拭いた。
近くにあった鞘に収めて地面に置いた。
俺達3人は、角熊を林の中まで転がした。
まだ、角熊の体は柔らかく、また重い為、思ったよりも時間がかかってしまった。
角熊を移動させると、一通り体に付いた血を拭く。
戦闘と、林に転がした事で血が付いてしまった。
「とりあえず、林を抜けた先の焚火跡まで戻ろう」
林を通る手前にあった焚火跡を目指した。
マサユキが魔物や人に注意しながら、俺達3人は足早に林を進んだ。
林を抜けと暫く先に焚火跡が見えた。
一晩分の薪を拾ってから、焚火跡を目指した。
30分程で焚火跡に到着した。
空が赤くなり、周りに暗さを感じる。
「やっと着いたな」
ぽつりと呟いた。また角熊の事を考えたらゾクリとした。
ここに来るまで、戦いの高揚感を引き摺っていた。
サトルやマサユキも同じだろう。
戦いの後に冷静に角熊を鑑定したり、退かすなど、普通の状態では無いから出来たのだと思う。
焚火跡に感じ生活感から、俺はようやく、頭が冷めてきた。
「今更なんですが、怖かったですね」
マサユキが、焚火跡をぼーっと見ながら呟いた。
「そやな」
「ああ」
俺とサトルが答える。
サトルもマサユキ同様に、ぼーっとしている。
俺は拾ってきた薪を並べて、焚き付けを置いた。
ヒロシのライターを借りて火をつける。
マサユキは収納していた、干し肉と携帯タンク、コップを取り出した。
サトルは周りを警戒している。
3人共、無言だった。
薪に火がつくと、俺達は焚火を囲んだ。
「さすがに生肉を焼く気になりませんでした。食べたいなら出しますから…」
マサユキは、俺とサトルに干し肉を配る。
干し肉を受け取りながら、首を横に振った。
干し肉と水を腹に押し込み、焚火を見つめた。
「あの時は必死だったが、生きていて良かったな」
焚火暖かみを感じて火をぼーっと見つめながら、膝をかかえて呟く。
「そやな…」
「はい…」
2人もぼーっと膝を抱えている。
暫くの間、俺達は無言で焚火を見ていた。
翌朝。
俺達は、街に戻る為に街道を歩いた。
ー これがこの世界の日常か…….ー
昨日の戦いを思いだし、頭の中で呟いた。
「昨日は疲れたな!今日は宿屋に泊まろう!」
明るい声で俺は喋った。
「賛成やっ!今日はベッドで眠るんや!
サトルも明るい声で返す。
「いいですね!私も賛成です!」
マサユキが明るい声で続く。
昨日の戦闘の余韻は、もう残っていない。
7/27 ツノ熊から角熊に変更しました。
誤字も多くてスミマセン、気がついたところは修正しました(-_-;)




