表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界☆スライダーズ  作者: 素浪人
序章
2/38

002 接触

暗闇の中、通路を挟んで反対側の座席に青白く人型の輪郭を作る、“何か“がいる。いや、座っている。


「ヒッ!!!」っと、思わず声が出た。


その瞬間、目の前の何かが“ジジジ”とまるで画面にノイズが走るように見えた。


それ以上、声が出ない。そして目が離せない。

“何か“から感じるプレッシャーで動けない。

金縛りというのが正解かもしれない。

背中からは冷たい汗が一滴流れていく。


一瞬、思考が停止し、意識が体から外れてしまったように感じた。状況を理解できず意識を外してしまった。

が、ハッと、すぐに意識を取り戻して改めて“何か“を見た。


暗闇に目が慣れてきたのか、青白く輪郭を作る何かの全体が見えてきた。


座っている割に背が高く見える。

その何かは、シルクハットのような帽子を被っているようだ。

服装は・・・・蝶ネクタイに燕尾服、シャツも黒い。


そして、顔がない。いや、正確には目も鼻も口も耳もない。

“のっぺら”ぼうというやつだ。


手は、黒い手袋をはめているように黒く、また黒い杖が握られている。


― こいつは人間じゃないー


「やぁ、澤田浩志さんだね」


その“何か“は、声をかけてきた。

少し高い音質で優しく語り掛けてきた。


その直後に、またノイズが発生する。電波の悪いブラウン管テレビでも見ているかのようだ。


「僕に名前は無いんだ。僕を表す表現としては、“バランサー”かな?いや、“調停者”と呼ぶ方がふさわしいか・・・呼び方は…、まぁ、君の好きにして頂いて構わないよ。」


「すまないね、僕にはあまり時間が無いんだ。今の状況について話している時間はない。」

先程とは異なり、少しだけ早口なっている。

何か・・・いや“調停者”は、そう話を切り出していった。


「君は別の世界にスライドする。この世界の管理者が失敗してしまった関係で、君を別の世界にスライドしなくてはならないんだ。」

“調停者”は、優しい口調に戻り説明を始めた。その際もノイズが発生する。


「申し訳ないと思うし、迷惑だと思う。出来るだけ今の世界と変わらない世界にスライドさせるつもりだ。」

“調停者”は断言するかのような強い口調でそう言った。


「ただ、科学世界サイエンスは難しい。乖離率が高すぎるんだ。魔法世界ファンタジーのより近い世界になるようにする。」

“調停者”は少し悲しそうな口調で説明している。


「本当にすまない。僕の力ではそれが限界なんだ。本当に・・・本当に・・・すまないと思っている」

“調停者”の言葉は泣きそうなまでに悲しそうな声色に聞こえる。


― あ、俺、今明晰夢を見ているんだな!!ー

強くそう思った(確信した!)。


「いや、違うんだ。これは現実だよ」

“調停者”は頭に浮かんだ事に回答した。

“調停者”は心が読めるらしい。


― 夢だから出来ることだろ、じゃなきゃ、こんな事…ー

そう、頭に思った瞬間、“調停者”は遮るように話を始めた。


「君はリアリストみたいだね、でも、スライドに備えて欲しい。スライドはするんだ。」


“調停者”は俺を諭すように話を続ける。


「いいかい、もう一度言う、スライドに備えておいてくれ…」

“調停者”のノイズが大きくなり、少しずつ聞き取りずらい。


「時間みたいだ…すまな…つぎ…もう…」

ノイズがより大きくなり、“調停者”のその言葉は最後まで聞き取れなかった。


その瞬間、目が覚めた。


「ふぅ、仕事前に嫌な夢を見たなぁ」

溜息混じりな声を出した。


雑踏を感じ、周りを見ると車内は満員になっていた。


ホームについたらしく、ドアがゆっくりと開いた。

車内の掲示板を見ると茅所駅と表示されていた。


慌ててビジネスバッグを手に持ち替え、人混みを掻き分けて、ホームに転がるように降りていった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ