019 マサユキのいたこの世界
゛調停者゛との接触から10日が経過した。
俺は、子供達に仕事を教えてもらっていながら、昼間はマサユキの店を手伝っている。
サトルは魔法の練習をしている。
マサユキは店の仕事をしている。
夜になると3人で集まり、様々なことを話す。
マサユキは店の宿舎に泊まらず、宿屋に一緒に泊っている。
マサユキは、この3年間で得た知識や情報を教えてくれた。
通貨単位だが、“ドン”というらしい。
紙幣は流通しておらず、通貨のみ流通している。
マサユキの話では、ドン=円と同程度の価値で問題ないらしい。
100ドン = 鉄貨
1,000ドン = 銅貨
10,000ドン = 銀貨
200,000ドン = 金貨
1,000,000ドン = 中金貨
5,000,000ドン = 大金貨
俺は、異世界に来る前、10万円ほど所持していたが、銀貨11枚、銅貨 10枚に両替されていた。
サトルは金貨5枚、銀貨20枚、銅貨15枚入っていたそうだ。
マサユキは、店の運転資金を持っていたそうで、かなりの金額を両替されたと言っていた。
また、この街の正式名は、貿易都市 デパという。
この国の名前は、“マクジニア王国”。王都はここから西に歩いて40日ほどの距離があるそうだ。
王都から20日ほど、西に向かうと海。
ここから北には“ラルゴ王国”がある。ラルゴ王国は、亜人と人族との融和政策をとっており、理想国家の別名を持っている。
“亜人”とは何か聞いたところ、獣人族、エルフ族、ドワーフ族 が居るそうだ。
ここから東に行くと、“シンマイカ帝国“がある。半年前にマクジニア王国と国交を断絶している。街では戦争の噂も出ているそうだ。
ここから南には、“ドベル王国”がある。ここは国民の殆どがドワーフとのこと。
マサユキは、デパ以外の国、街に行ったことが無い為、聞いた話だという。
また、このマクジニア王国は、人族至上主義を執っている為、亜人種を見た事もなく、民族性も知らないという。
他にも国はあるらしいが、マサユキは情報は知らない。
そうえいば、゛調停者゛との遭遇後の夜に、マサユキがデパに到着してからの話を聞いた。
直ぐに他のスライダー(転移者)を見つける必要があると考えた。先に転移しているか、別の場所に転移しているかもしれないと思い、スライダー(転移者)の情報を得るために酒場を巡りをした。
また、依然読んだ小説から、リバーシを流行らせれば、自分の存在に気付くかと思い。作ってみたそうだ。
マサユキは手持ちの資金(元の世界から持ってきた)を使い、リバーシを作り、酒場巡りの際に遊び方を教えた。また、商業ギルドにリバーシのアイディアを持ち込み、製造・販売権を無償で譲渡した。
譲渡の際に、商業ギルドに名前を゛りばあし゛として伝えた。この世界の呼び方に合わせた。
譲渡の条件として、商業ギルドが管轄する国、全ての興行権(公衆で行われるすべてを含む)を取得した。
商業ギルドは殆どの国に置かれている為、マサユキは、どの国にも出店出来るようになった。
商業ギルドは、製造・販売権でかなりの売上だったそうだが、その半年後には安いコピー品が出回ってきた。この世界は娯楽の少ない、コピー品で安く入手出来るようになると、爆発的流行になった。
あまりの人気ぶりに、その当時の店では対応しきれなくなり、2年前に商業ギルトから集会場を購入し、“げえむ”をここに移転した。
マサユキが興行権を持っているため、誰も“りばあし”を遊べる店出す事が出来ない。
マサユキ曰く「興行権を得たお蔭で、流行れば流行るほど儲かります」とのことだった。
マサユキは、店が軌道に乗って頃から、従業員にする為に奴隷を受け入れた。
ある日、首輪、腕輪をつけられて、痩せ細り、死んだ魚の様な目した幼い子供奴隷を初めて見た。あまりに悲惨な風景に言葉が出なかったそうだ。
マサユキは自分の価値観とは違うと思いながらも、奴隷制度には強い忌避感を持っている
理由はどうあれ、同じ人間が売り買いする事は受け入れられないのだ。
それから、奴隷商から子供を自分の従業員にする為に買い入れた。
奴隷には、逃走防止の為に所有者を表す、奴隷紋か魔道具を着ける。大抵は奴隷紋をつけるそうだ。
しかし、マサユキは、奴隷紋も魔道具もつけない。
既に奴隷紋があった場合は、それを消す為に金を使った。
今までに買い入れた子供は15人、マサユキ1人では、子供を守り切れないと考えて、戦闘奴隷も2人買い入れた。マサユキの仕事部屋で見た、大きな男ダリルがその一人らしい。
また、子供達には読み書きを教えている。将来、支店を持ませ、独立させようと考えていたようだ。
平仮名についても聞いてみたが、わからないそうだ。
マサユキも平仮名が使われてている理由が気になって調べたが、どういった経緯なのかわからなかった。漢字については見た事がないそうだ。
言葉についても、同様にわからなかったそうだ。
平仮名だけでは、誤った意味を伝えてしまう可能性(例えば箸と橋など)がある。マサユキに確認した所、街中では文章として文字を使っていないからではないと言っていた。
この様に様々な話をしてきた。
― しかしだ・・・・、まだ、これから何をするか決めていない ―
「ヒロシさん!何をぼーっとしているんですかっ!」
この店に着いた時に、馬を回した青髪のノルが怒っている。
「あ、ごめんな、ちょっと考え事をしていて・・・この水をあのお客さんの所に持っていくんだな?」
「ちがいます!おきゃく、さ!ま!です」
ノルがますます怒っている。
「ああ、ごめん。あのお客様だな」
「マサユキさんに、お客様と呼ぶように言われているんです!」
ノルが小さな胸を張る。
この10日間で、マサユキが従業員を大切に思っていることが判った。
また、従業員もマサユキを信頼し、尊敬し、感謝している。
― 今日こそ何をするか決めないと・・・・ ―
説明回です!




