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異世界☆スライダーズ  作者: 素浪人
序章
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001 プロローグ

日本は師走を迎え、関東も随分冷え込んできた頃。

朝の通勤時間帯にビジネスバックを背負った澤田浩志サワダ ヒロシは駅に向かっていた。


「今日は随分寒いなぁ」


独り言を呟くと白い息を吐いた。


「ああ、ここも随分と出来てきたなぁ」


1年前まで市場があったが、再開発で商業施設を作っている。

もう外壁が出来上がっており、白い壁が眩しく映る。

9年前の震災をきっかけに田舎から引越して来た。自身は被災しなかったが、周りの環境は一変した。


その頃は山沿い出身だったからか、物珍しさもあり、休みによく行っていた場所だ。


- もうすぐ10年か、この街に長くいるもんだな -


道を挟んで反対側に見える商業施設を見て、少し感慨にふける。


- おっといかん、急がないとな、朝の会議に間に合わなくなる -


気持ちを切り替えて、コートに手を突っ込み、足早に駅に向かうのだった。


東南線 浦高駅 6:25


- 32分発の電車に乗れそうだな -


8:00からの打合せに間に合わす為に、澤田浩志は朝早くから出社しなくてはならない。

国内だけなら良いがアメリカとのweb会議があるので、こんな時間に出勤する。

自宅から参加しても良いが、9:30からは社内会議がある為、早めに出勤するのだった。


- それにしても、人が少ないな、朝早いとこんなものなのかな -


普段は人がごった返している駅のホーム。しかし、駅のホームには数人しかいない。

ホームを見廻してみたが、隣の車両の入口に背の高い痩せた男、少し離れた車両に人が見える、その人のみ。


そんな事を考えていると、電車がホームに滑り込んできた。

ゆっくりと電車はスピードを落とし、ホームに止まった車両は、ドアをゆっくりと開ける


下を向いていた澤田浩志は電車から流れてくる暖かい空気を感じた。


「あれっ!?」


視線を上にあげた瞬間、声が漏れた。


自分が乗ろうとしている車両に人が乗っていなかった。


ー 東南線の車両独り占めなんて、珍しいなぁ ー


普段から通勤に使っている電車で、人が溢れる程に乗っているイメージしかない。

10年近く使っているが、初めての経験だった。


電車に乗り込み、端の席に座る為に背負っていたビジネスバッグを座席に下ろした。

暖かい車内でダウンは暑い、ダウンコートのボタンを開き、座席に座り、ビジネスバッグを抱えこんだ。


座席下からの温風が足にあたる。車内も充分に温まっているためか、少々暑く感じる。


ー と・・・・いうか、ジーパン熱い! ー


ジーンズの脹脛に容赦無く温風が当たる為、非常に熱くなる。

そんな事を考えながら、コート下の白シャツの第二ボタンを開ける。


電車で一息つくと、コートのポケットからスマホを取り出し、いつもの携帯ゲームを始めた。

ビジネスバッグはちょうど良い肘置きになる。


―なんだろうなぁ、俺もいい年なのに朝のルーチンワークみたいにゲームしているな ―


澤田浩志は、つい先日47歳の誕生日を迎えていた。いわゆる中年、初老一歩手前といったところか。

中年とは言っても腹も出ておらず、学生時代に柔道をやっていたのか体格はガッシリしている。

社会人になってからは、大した運動もしていないが、数キロ程度増えただけで、体型を維持している。

ただ、加齢やストレスそれから運動不足は、容赦なく澤田浩志を襲い、重度の糖尿病と高血圧、高脂血症を患っている。


―茅所駅についたら、何か腹に入れて、薬を飲まないといけないなぁ―

ゲームをしながら、そんなことを考えていた。



ふと、気がつくと寝ていたようだ。

車内の暖かさと早起きのせいか、ゲームをしながら寝てしまったらしい。


― 今どこだ? こんな早く出てきて、乗り過ごしたらシャレにならん ―


そんな事を思いながら、外の景色を確認した。

丁度電車は、西河西駅のホームを出発するところだった。


スマホを持ったままだったので、ゲームを再開し、目線を下に落とす。


(ドクン)

―んっ!?―


今、一瞬だったが感じた事のない揺れを感じた。

― 地震でも起こったのか? ―


その直後に周囲の違和感を感じた。西河西駅を出発して直ぐに電車の外が暗くなったのだった。


西河西駅から次の北砂町駅の間は、川の上を鉄橋が通っており、北砂町駅の直前で地下に潜るのだ。

西河西駅を出て直ぐに地下に潜るということはあり得ない。


「朝早くて寝ぼけてるのかな」


進行方向に顔を横に向け、外を見ながら独り言をつぶやいた。

そう呟いた瞬間だった。

電車はゆっくりとスピードを緩めていくのだった。

ホーム間近という事なのだろう。


暗闇の中から薄暗いホームが見えてきた。


ホームに止まった瞬間、車内の電灯がすべて消えた。

消えたと同時に「☆※〇×△駅」と社内アナウンスが流れるが、聞き取れない。


―何が起こった?!どこだ?-


ホームに到着したが、ドアは開かない。


「どうしたんだろう?」

誰も居ない車内で、誰かに聞いてみている。


目線を左右にずらして、薄暗いホームの駅名を確認するが、何処にもない。意味もなく上を見てみるが真っ暗で何も見えない。


- 車両トラブルでも起こして、車両基地に入れてしまったのかも…、なら何故アナウンスが流れないんだろう? アナウンスなら流れたか…ノイズっぽいのが入ってたな -


「うーん、わからん」

有り得そうな理由を考えながら、体勢を戻しながら正面を向いた時…


それは居た。


暗闇の中で薄く青白く輪郭が発光している。

人の型をした“何か“が居た。


2021/7/7 始めました!

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