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 モニカをソファに座らせたクラウディオは、そのまま膝を付いた。


「寒いか?」

「……いいえ」


 わざわざ暖炉の傍の席を選んでくれたのに、そんなことを聞いてくるクラウディオは堪らなく優しい声だった。


 甘やかすことを喜び、そして甘えることを強要しているかのような、使命感だけでは出せない声音に、モニカはなぜかわからないけれど、妙に喉が乾いてしまった。


「領主様もお掛けください」


 こんなに近くにいてはドキドキが聞こえてしまいそうで、モニカは震える指ですぐ近くの席を指差す。


 けれどクラウディオは「ここで良い」と言って動こうとはしなかった。


「改めて謝罪させてくれ。昨日は怖い思いをさせてしまい、申し訳なかった」

「いえ……とんでもありません」

「セリオに対しては、次に君に強引な真似をしたら、領地を追放することにした。そして、村長はアクゥ砦の件で投獄中だ」

「……っ」


 事務的に告げられた口調の中身は、とても重いものだった。


 前者のセリオについては、今は置いておく。けれど、村長に対しては「そうですか」の一言で済ますことはできない。


「やはり、村長が投獄されたのは、砦の怠慢のことでしょうか」

「ああ、そうだ。だが、アクゥ砦の件は片付いていない」

「…… 盗賊が、まだ捕まっていないからでしょうか?」

「それもある。だが、少し厄介な事態になっている」


 モニカから視線を外して、苦々しい顔をするクラウディオは、アクゥ砦の件を処理することをとても面倒だと思っているように見えてしまう。


「……あまり無理はなさらないでください」


 我知らず、本音とは裏腹の疲れた声が出てしまった。


「もともとは、私と同じ不幸を味わってほしくないから、きちんと調査をして欲しいと願ったことなんです。村長が投獄ということは……新しい村長が、カダ村に来るということでしょうか?それとも村の誰かが、村長をやるのか……まぁ私が選ぶことじゃないんですが、とにかく新しい村長がしっかりした方なら、同じ過ちを繰り返すことはないでしょうし」

「馬鹿なことを言うな」


 長々と自分に対して言い訳を紡いでいたモニカに、クラウディオは厳しい声で諫めた。


「カダ村の村長は、私が信頼できるものに任せる。だが村長の交代と、アクゥ砦の件は、全くの別物だ」

「……はぁ」

「砦の件は、すぐに処理を終えたと君に報告できると思っていた。けれど、そうもいかない。だから今日君を呼んだのは……」


 変なところでクラウディオは言葉を止めた。


 きっと、次に紡がなくてはならない言葉が、とても言いにくいものなのだろう。


 急かすことはしてはいけない。そう思ったモニカは、神妙な顔つきで、じっと待つ。

 

「モニカの力を借りたい。近日中にここに来る者に、もう一度事件の詳細を伝えて欲しい」

「あ、は……はい」


 拍子抜けするような内容だった為に、なんだか間抜けな返事になってしまった。


(なんだ、なんだ。いつもと違うと思ったのは、コレだったのか)


 理由がわかってホッとした。

 でもそれ以上に、なぜか落胆した気持ちになってしまう。


 ただ、それがどうしてなのか、モニカはわからなかった。

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