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今を去ること半年前の晩春、モニカの両親は盗賊に襲われて死んだ。
村長から、3日後に迫った村祭りで使う飾りを隣町まで買いに行くよう頼まれた、その帰り道でのことだった。
モニカの家に、古い馬車があったのが災いした。
田舎では新旧問わず、馬車があるだけで金持ちと思われたのだろう。町と村の境目の細い一本道で、突然数名の盗賊に襲われたのだ。
御者をしていたモニカの父がまず最初に殺された。次いで母が殺された。
モニカが殺されなかったのは、運よく座席の下が荷物入れとなっていて、そこに母親が隠してくれたからだ。時刻が日暮れで、視界が悪かったのも幸いした。
盗賊たちは嵐のように馬車の荷物を根こそぎ奪うと、風のように消えて行った。
でも、モニカが救出されたのは、翌日の昼だった。
それまでモニカはたった一人座席の下の荷物入れの中で震えていた。血の匂いを嫌というほど嗅ぎながら。
両親の葬儀は、村長が中心となって執り行われた。
当時15歳だったモニカ一人では、まともに弔うことなどできなかった。だからそのことに関しては村民の皆様にとても感謝している。
……しているが、それはそれ、これはこれの案件がある。
村民達は、モニカの両親の死を知った際にこう言ったのだ。
【祭り前だというのにケチが付いた】と。
次いで、祭りが中止になった事に怒り狂い、そして祭りの飾り代はどうするのかと大いに揉めた。
村人達が祭りの為にお金を出し合っていて、それが盗賊に奪われたことは揺るぎない事実だ。
けれど、その代金をモニカに請求するのは、筋違いである。
結局は村長が代金を立て替えることで話は纏まったけれど、モニカとしては未だに腑に落ちない。
でもここまでの出来事は全て閉鎖的な村だからと、自分に言い聞かせることができる。納得は一生できないけれど、それでも時間を掛けて折り合いを付けることができたであろう。
しかし、どうしても我慢ができないことがあった。
それは盗賊に襲われた場所はアクゥという名の砦のすぐ近くだったのだ。
こちらが視界に入っていたのだから、アクゥ砦を警護していた兵士とて、モニカが乗った馬車が盗賊に襲われていたのをすぐに察知できて当然のはずだった。
シャンタルーア国は四方を他国に囲まれている為、常に軍事力強化に力を入れている。見張りを疎かにするなどあり得ないはずだ。
けれど兵士は誰一人助けにこなかった。
翌朝、モニカを助けたのはたまたま通りがかった行商人だった。
これが指し示すことは、アクゥ砦には兵士がいなかったということ。
もし、砦の兵士がきちんと見張りをしていてくれたなら、盗賊に襲われた両親を助けてくれたかもしれない。
いや、そもそも、襲われる前に兵士が捕らえていたかもしれない。
そう思ってしまうのは当然だった。
そして両親が死んだ直接の要因でもある砦警護の怠慢を、モニカは村長に訴えた。
けれど、村長は曖昧な笑みを浮か濁った返事をするだけで、領主にも砦にも直訴した気配はなかった。
ついさっきセリオは、自分が気を引きたいから砦の兵士を疑ったと言った。
認めたくないが、自分の訴えは村長には届かなかったのだ。…… もみ消されてしまったのだ。
「…… ねえ、どうしたの? 急に大声出すなんてさ」
ぽかんとした顔をしてセリオは、そう言った。
自分の発言で、他人を深く傷つけたことなど全く気付いていない様子だった。




