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10

 この日を境に、クラウディオはモニカの名を呼ぶようになった。

 そしてモニカはファネーレ邸の使用人と一気に距離が縮まった。


 エバが自分の侍女になったことに、まだモニカは気付いていないが、それでも姉のように接するようになった。


 でも、クラウディオのことを全面的に信用しているわけでは無い。

 したいという気持ちは日に日に強くなっているが、それでも、疑う気持ちを捨てきれないでいる。


 なぜなら、アクゥ砦について何も進展が無いからだ。 


 クラウディオがモニカに盗賊に襲われたことを尋ねたのは一度きりだけ。


 それは、モニカが辛い記憶を呼び起こさなければならないものだから、何度も聞いてはいけないと思っての事。しかしモニカが詳細に伝えてくれたおかげで、水面下で調査は順調に進んでいる。


 とはいえ、途中経過すら知らされ無いモニカからすれば、どうしたって村長と同じように、うやむやにするのではないかという疑いを持ってしまう。さりとて自分からせっつくような真似はしたくない。


 そのせいで、モニカとクラウディオの間には、薄い壁ができている。


 ─── そんな中、事件は起きた。





「ちょっとお邪魔するよ」


 しゃがれた声でそうモニカに言ったのは、カダ村の村長だった。


 本日モニカは、エバとビドの3人で自宅に戻って来ている。


 クラウディオも当然のように、ここに来る予定だったのだが、いざ馬車に乗ろうっという段階で、どこかの村でトラブルがあり、それを伝えに来たルーベンとハイネにコートを掴まれてしまったのだ。


 半分は馬車の中に身体を入れていたクラウディオは、引きずり下ろされるような形となり、あわや転落するかとヒヤッとしたが持ち前の身体能力でそれは免れたようだ。


 しかし、ハイネからの懇願には免れることはできず、クラウディオはモニカを乗せた馬車を見送る側となってしまった。


 ただもう何度もファネーレ邸から自宅に戻って家の手入れをしているが、一度もトラブルに見舞われたことは無い。


 セリオの姿を見かけることもなければ、村人が嫌がらせに来ることも無い。

 自宅も特に変わった様子は無いし、至って平穏だった。


 けれどそれは、全てクラウディオが傍にいてくれたおかげだというのが今わかった。


 村長は、モニカだけ自宅に来るのをずっと待っていた。多分、誰かが見張っていたのだろう。


 その証拠に、モニカが庭の花壇を見に来た途端に、声を掛けてきたのだ。しかも、あのセリオも一緒だった。


(……最悪だ。今すぐ地震的な天災でも起こって、帰ってくれないだろうか)


 モニカはぎゅっと両手を握り合わせつつ、心の中で神に祈りを捧げた。


 けれど神様は、モニカの切実な祈りに応えてくれることは無かった。

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