表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/57

2

 不機嫌なご様子のクラウディオ目にして、モニカは考えたくないことばっかり頭に浮かんでしまう。


 クラウディオは、自分から何も奪う気は無いと言った。

 自宅に戻りたくなったら、いつでも馬車を用意すると言った。

 これからの生活において束縛する気は無いと、言ってもくれた。


 なのに、この態度は一体何だというのか。


「無理にとは言いません」


 しびれを切らしたモニカは、顔を上げて言った。


 思っていた以上にキツイ口調になってしまったが、自分に非はないはずだと開き直る。


「急なお願いでしたし、私ごときが領主さまに願いを口にするのは出すぎた真似でした。申し訳ありません。......明日は、辻馬車を拾って自宅に戻りますので。では、これで」


 たった5日のご領主様との生活に別れを告げたモニカは、荷造りのために部屋に戻ろうとした。けれども、 

 

「待て、なぜそういう流れになるんだ?」


 信じられないといった感じで目を丸くするクラウディオに、モニカは礼儀を忘れてムスッとする。


「なぜって、領主さまがそう望んでいるんじゃないですか?」

(だって、約束守ってくれないじゃんっ)


 半ば拗ねながらモニカが訴えれば、クラウディオは「違う、そうじゃない」と、慌てて首を横に振った。


「説明不足だったことは詫びる。そして、不快な気持ちにさせたことも謝罪する。頼む、座ってくれ」

「...... はぁ」


 そこまでへりくだった態度を取らなくても、と思ったけれどモニカは素直にクラウディオの言葉に従った。


「お茶でも飲むか?」

「いえ、結構です」

「なら酒は......っと、すまん。まだ早かったな」

「そうですね」


 着席してすぐに彼なりの言い訳を聞かされると思いきや、まるでご機嫌を取るかのようなクラウディオの言動に、モニカの眉間に皺が寄る。


 そうすればクラウディオは、ほとほと弱りきった表情になった。


「...... すまない。気を悪くさせた女性の対処法を、私は知らないんだ」

 

 考えようによっては、随分なことを言ってくれたクラウディオだけれど、その自覚は無い。


 ただ不遜な態度ではなく心底困っている様子に、モニカは呆れを通り越して思わず吹き出してしまった。


 そうすればクラウディオは、ほっとしたような笑みを向ける。


「君が自宅に戻ることは反対はしない。いつでも戻りたいときに戻れば良いし、それは、ここに来てくれる条件だ。ただ......」

「ただ?」

「明日は困ると言いたかったんだ」

「そうですか。差し支えなければ、理由を聞いても良いですか?」

  

 どうせ馬車が急に用意できないとか、その程度のことだろうと思った。

 

 でも、返ってきた答えは斜め上のものだった。


「明日は、私はローナという町に行かなくてはならないからだ」

「......ん?」」


 首の角度が肩にくっつきそうなほど傾げたモニカは、クラウディオが何を言いたいのかしばらく考える。

 

 結果として、信じられない結論しか出なかった。


「つまりは、領主様は一緒に付いてくる気でいたんでしょうか?」 

「それ以外に何がある?」


 質問を質問で返されたことより、クラウディオの考えていることが全くわからなくて、モニカはしばらく固まってしまった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ