急に寂しくなった日
今日は久々の休みだ。
「ふ…ァア〜………」と、寝たまま長いあくびの伸びをし、枕元のスマホで時間を確認する。
せっかくの日曜日だと言うのに、朝6時に目が覚めてしまった。
目が冴えてしまい、眠れはしないが起き上がりたくない。
そのまま、スマホで某サイトの巡回を始めた。
会社員になり、それなりに立場や仕事を任される事も増えた。
普通に仕事をこなせているが、30歳にもなると、寝るだけで疲れが取れなくなった。
休みの日は日常が忘れられる事をしたい。
だが、遠出をするにも体力を使うので面倒だ。
といって、何もしないのももったいない…。
そんな事をウダウダと考えながら、1時間程過ごし、ようやく体を起こす。
天気は…悪くないようだ。
とりあえず、家から出ようと思い、近くのモーニングセットをやっているハンバーガー店へ向かった。
都会まで電車で30分のこの地域は、やはりサラリーマン風の人も多いが、これから学校なのだろう、高校生もちらほらすれ違う。
(あ〜、若いっていいよな〜…)
若さを眩しく感じながら、ハンバーガー店に入り、セットを注文。
商品を受け取り、近くの空いている席へ座った。
隣の席からは、やはり高校生がいるようだ、笑い声が聞こえてくる。
(何を楽しそうに話してるんだろー…)
何とは無しに、隣になった男子高生の会話を聞いてみた。
恋愛話をしているようだ。
「え、まだ告って無かったん?」
「ウッセーわ、タイミングが無いんだよ」
(あ〜…いいね。青春だね。)
ポテトをひと口食べ、自分にもそんな事があったっけなー、とぼんやりした。
(そういえば、いつから恋愛してなかったか…。
誘われても、面倒で色々断ってたからな…)
これまで出会いを放棄してた事を反省した。
こんな所で反省する日が来るなんてね。
自嘲にふっ…と笑い、もうひと口。塩味が濃くなったのは気のせいか。
そんな自分に追い討ちをかける言葉が聞こえてきた。
少し離れた席の女子高生の声が、唐突に耳に届いた。
「いつかその内結婚するんだし、焦って誰かと付き合うとかしなくて良くない?」
ヒソヒソとしているが、よく通る声をしているようだ。
自分も、恋愛なんていつでも出来る、そしていつかは結婚するもんだと思っていた、高校生の頃は。
今の自分を、急に冷静になってみた。
結婚はおろか、恋愛すら…予定にない。
漠然と、そのいつかが来るんだと、当たり前に信じていた自分に気づいてしまった。
何故だろう、一度ハッとしてしまうと、聞こえてくる言葉が胸に突き刺さってくる気がした。
(恋愛とか結婚出来るのは当たり前じゃねぇよ、何だよその幸せ、どこに売ってんの?
出会いとか出来る場所教えてよ、てかこの年ですれ違いで出会うのなんか、壺売り付けてくるヤツじゃん)
誰に強いられた訳でもない、完全な被害妄想に取り憑かれ、モーニングセットを食べ終わり、店から出た。
人間、自分が欲しがってた足りないものを見つけても、ひがみはするが、すぐには変わらない。でも、とりあえず家に帰ったら出会いがありそうな、趣味になりそうなことでもサイトで探そうと思った。