第45話 コルシャの『シャッフル』 その②
一年生部員だけで買い物に来ていた雄介は魔界の師団隊長のコルシャと戦闘になる。
コルシャの恐るべき能力とは……。
「フフフ……」
「く………!!」
不敵に笑いながらコルシャは雄介に近づいてきた。
「後悔するんだな。馬鹿なことをやった自分に」
コルシャはおもむろに右手を挙げ、合図するかのようにクイッと前に捻る。すると空中に飛翔していたコルシャの『胴体』が再び雄介に向かって来た。
「うわっ!!」
今度は間一髪、ギリギリでそれを右に避ける。円盤状に分離していた胴体は『ズドォーーンッ!!』というとても内臓などが詰まっている柔らかい部分とは思えないような音を立てて地面に激突する。
(な…なんだよ、あれ! あんなのくらったら……!)
雄介はいつの間にか、地面に腰を落としながらガチガチと歯を鳴らして震えていた。
「まだ終わらねぇぞ!!」
激突して発生していた土煙の中に再び円盤状の胴体の影が見えた。雄介は慌てて腰を上げ、その場から逃げようとする。
「!? なっ?!!」
しかし、いきなり左足を何かに掴まれて止まってしまう。
「今度は逃がさないよ~」
見るとコルシャの左の手首は無くなっており、それは今まさに雄介の左足を強く掴んでいた。
「くそっ!離せ!!」
すぐに銃口を足首を掴んだ手首に向けるが、いきなりその視界が大きくブレた。
「(!!?)」
何が起こったのか分からないまま、雄介は右に立ちはだかっていたビルの壁面に側頭部を嫌と言うほど叩きつけていた。
「か………っ!」
その一撃で意識が一瞬飛びそうになるが、それをさせまいとコルシャの胴体が腹や胸、腕に激突する。
「ぐぁっ………!!」
薄くなっている意識で、雄介はさっきの一撃がすでに向かってきていた胴体の一部がやったことだというのは分かったが、それだけだった。
胴体の攻撃は止むことが無く、当たってはまた大きく旋回して戻ってきて当たるの繰り返し。雄介はされるがままに攻撃を受けてしまう。
「フフフフフフ……ハハハハハハ!」
コルシャはその光景を笑いながら見ていた。
「ぐっ…!! ぁあっ!!」
しかし、雄介はその一瞬できた相手が勝ち誇ったときの隙をつき銃を発射する。
「おおっと」
だが、銃弾が当たる瞬間、円盤状の胴体はさらにその状態から包丁を入れて綺麗に分けたように半円のものが二つと細長い棒状が一つの三つに別れ、その銃弾をかわした。
「な……?!」
「まだそんな気力が残ってたのは驚きだが、どうやらもう駄目な様だな」
胴体は加速し、一気に雄介を仕留めに向かってくる。さっき三つに分裂したのも一つに戻って向かってきている。
「くそーーーーー!!」
雄介は自分の足を掴んでいる左手首に銃を向けた。そして発射する。
「無駄だ!」
すると、指の股から手首の方に向かって線が入り、そこからさっきの胴体の一部のようにバラバラに分離した。銃弾はその隙間を空しく通り過ぎていった。
「今だっ!」
それと同時に雄介はすばやく立ち上がり、その場を離れる。胴体は雄介のいた場所に次々と向かっていき、地面に激突した。
「チッ!くそが! !!? 何?!!」
悔しそうに舌を鳴らすコルシャであったが、その表情がすぐに強張った。落下した状態のまままだ地面に転がっている胴体に向けて雄介が銃を構えていたのだ。
「うおぉおおおおおお!!」
「ま、まずいっ!!」
胴体はすぐに浮上したが、それよりも早く雄介は引き金を引いていた。
ズドズドズドズドォーーーーーンッ!!
「くあっ!!」
分離していた胴体は全部で七つ。その内の三つはさっきのように三つに分かれて銃弾をかわしたが、残りの四つは分離せずに二つがもろに銃弾を受けた。銃弾を受けた箇所からは生々しく血が流れ、これが生物の体の一部だということを思い出せてくれる。
「ぐぁあっ!くそ!痛ぇえ!!」
胴体の無い状態でコルシャは地面にのた打ち回る。それと同時に今まで分離していた胴体が一斉にコルシャの空洞になっていた胸から腹にかけての場所にはまっていく。
「ぐ……!」
やっと完全に人らしい体に戻ったコルシャはよろよろと腹部を押さえながら立ち上がる。どうやら銃弾が命中したのは腹の部分のパーツだったらしい。
「驚いた……。まさかこの数分間にこれほど精神的に成長するなんて。あのまま逃げると踏んでいたんだが…まさか、反撃されるなんて……グフッ!!」
コルシャは口から少量の血を吐き、前につんのめる。
「痛ぇ……腹にもらうのなんか、何年ぶりだ。十年…いや、二十、三十年くらいぶりかな……そろそろ、本気出すかぁ!!」
コルシャは腹を押さえていた手を前方に、雄介のほうに向けて『発射』してきた。
「スーパーロボットか!!」
飛んできた腕を掻い潜り、雄介はコルシャ本体に向かって発砲する。
「フンッ!」
するとコルシャの残っていた体の部位が全てバラバラに分裂した。
「なっ!? 体全部バラバラにできるのか!」
「だれも腕や腹だけとは言ってねぇぞ!!」
首だけになって上空に浮きながら、コルシャは大声で叫ぶ。雄介はその頭部に向かって銃を撃つが軽く避けられる。
「上ばっか見てていいのか~?」
「!!?」
コルシャの言葉に下に目を向けた雄介は瞬時に眼前が真っ暗になった。分離してきていたコルシャの膝から下の右脚部が雄介の顔面に蹴りを入れたのだ。
「ぷあっ!!」
だが、雄介はその一撃を受けても、怯まずに銃を蹴りを入れてきた足の部位に向け放つ。しかし右脚部は足首から分離し、さらに残った脛の部分は暖炉にくべる薪のように真っ直ぐに縦に二つに割れた。
「ちくしょぉおおーーーーー!!」
ヤケになった雄介はそこら中に銃を乱射しだす。
「うおっ!?」
さすがに危機を感じたのか、コルシャも必死にそれを避ける。
「ぐあっ!」
しかしその内の一発が、今さっき分離して元に戻っていない右脚部の脛の部分の片割れに命中したのだ。
(!!?)
そして、雄介はそれを見逃してはいなかった。
「くそっ!!」
コルシャは飛ばしていた自分の体をどんどん雄介に向けて飛ばしてきた。
(もし僕の考えが間違ってないなら……)
雄介は飛んできた体の一部の各部位の中で肘から上の部分、上腕の部分を探し当て、そこに向かって銃を撃つ。
「ああっ!!」
「!! やっぱり!!」
上腕部(右か左かは分からないが)に銃弾は見事に命中した。首だけになっているコルシャは呻き声を上げる。
「畜生が!」
雄介に向かってきていたコルシャの体の部位は、首だけになっていたコルシャの元に戻り、また元の体の形に戻る。
(何だこいつ…!? さっきの二発はまぐれだったが、今の攻撃は違う! こいつには『確信』があった。絶対に当てられるという『確信』が!)
「分かったぞ。お前のその能力の弱点!」
「!!」
雄介はビッ!と力強く人差し指を立ててコルシャを指し示した。
「ほ、ほ~お、いったいこの『シャッフル』の弱点をどうやって見つけたって言うんだ? 教えてくれよ」
余裕たっぷりな口調で雄介に問うが、それは誰がどう見ても虚勢そのものだ。
「お前の『体をバラバラにする』能力……確かに銃弾みたいな小さな物じゃバラバラになってすぐに避けられる。僕には銃弾以外の攻撃手段は無いし、君を倒すのは絶望的だ……」
「ほ、ほら見ろ。お前は黙って―――――」
「だがっ!!」
「!!」
急に雄介が言葉に力を込めた。
「その能力で分離するのは『関節』からだ! 体の関節から分離している! 今までのもみんなそうだ。膝や手首、胴体は脊椎の部分から分離していた!」
コルシャは一瞬たじろぐが、
「……フフフ」
と、すぐに不敵な笑みを漏らす。
「だから何だ!! そうだ!バレたから言ってやるが『シャッフル』は『関節から体を分離できる能力』!!それが分かったら何だ!!? 分離したらもうそれ以上バラバラにできない上腕部や腹部を狙おうっていう話なら………!!」
コルシャはまた体を分離して雄介に襲い掛かる。しかし、向かってくるスピードはさっきとは比較にならないほど速いものだった。
「狙うことができないほど速く動けばいいだけだ!! 残念だったな間抜け!!」
バラバラになったコルシャの体が一斉に雄介を襲う。
「くたばれ!! 雑魚がぁああ!!」
バァーーーーーンッ!!
「……え?」
コルシャは一瞬何が起こったのか分からず呆けたような言葉を口に出す。
「ぐふっ!!」
しかし次の瞬間、口から大量の血反吐が吹き出る。それが、コルシャに何が起こったのかを明確に知らせてくれた。
「な、何ぃ~~!!」
体の部位が周りにフワフワと空中に浮いている気味の悪い空間で、雄介はただ真っ直ぐ、自分を取り巻く体の部位の一番奥にある腹部のパーツに目を向け、引き金を引いていた。
「君こそ、間抜けなんじゃないか? 言ったろ、僕の銃の才能は……」
「ハッ!!」
雄介は両手の銃を、まるで羽でも広げるかのように左右に向けて構える。
「まっ、まず……!!!」
「シン君の…お墨付きだってねーーーーーー!!」
一斉に向かってきていて、今度は一斉に引こうとするパーツに、雄介は正確に『それ以上分離できないパーツ』に向かって銃を発射する。もちろん他のパーツにも弾丸は飛び、分離してもその分離したものに確実に当てていく。
「ぐぁああああああ!!!」
「いっけぇええええーーーーー!!」
「雄介!!」
「!!?」
しかし、その勢いも後ろからかけられた声に反応して止まってしまう。雄介は慌てて声のしたほうに向かって顔を向ける。
「何やってんだ!こんなとこで」
「達也君…シン君!」
そこにいたのは達也とシンのコンビだった。二人とも息を切らせながら立っている。
「何でこんなとこで敵と戦ってるんだ! 遅いから探しにきてみりゃこれだ!!」
「い、今はそんなこと言ってる場合じゃ……!!」
そう。まさしくそんなことを言っている場合ではなかった。
「!!? はっ!!」
気づくと、すでに雄介の両手首にはコルシャの両手首が掴んでいた。
「う、うわぁあ!!」
そのまま雄介は壁に叩きつけられ、壁に押し当てられた状態でズルズルと上に向かって引きずり上げられていく。
「雄介!!」
「初めまして、草薙達也。そしてシン・クロイツ」
「!!? 誰だお前は!」
二人は遠くでニヤニヤと笑いながら立っているコルシャに気づき構える。コルシャはすでに体を両手首以外全て元に戻していた。
「魔界師団第6部大隊隊長、コルシャ・ペリネルだ。まさかこんなに早く君たちと戦うことになるなんて……思ってもみなかったよ」
「魔界師団……しかも大隊の隊長クラスか……」
シンは銃を構え、達也はナイフを構えた。
「かなり予定外だが、それでもいい。今ここで殺す! じゃなきゃ腹の虫が収まらねぇ!!」
「気をつけて!! そいつの能力は―――――!!」
「てめぇは黙ってろ!!」
コルシャが一声上げると、右の足首が雄介の元に飛んで行き、つま先の部分が雄介の口に入って次の言葉が出るのを阻害する。
「!? うもっ!! うもぉおおおお!!」
「ハッハッハッ!! そこで俺の靴でもしゃぶってろ!!」
「雄介!! っの野郎!!」
先に手を出したのは達也だった。素早く動き、みるみるコルシャとの距離を縮めていく。
「来んじゃねぇ!!」
コルシャが腕を前に向けると両方の前腕部が飛び出して向かってきた。
「体を分離する能力!? だが……」
達也はその場で止まり、そこで力を込めてナイフを貯める。
「ナイフに勝てるかぁ!!」
向かってきた前腕部にカウンターの要領でナイフを振り下ろす。
「うんんんんん!!(違う! 前腕は……!!前腕の骨は二つで形成されてるんだ!!)」
「おらぁ!!」
ナイフを振り下ろすが、前腕部は雄介が危惧したとおり縦に真っ二つに別れ、達也渾身の一閃をかわした。
「なっ……!!?」
しかし、それだけでは終わらなかった。前腕部は達也を間に挟むと、そこで一気に元に戻ったのだ。
「かっ……!!」
まともに声を上げる暇すら与えず、前腕部は達也の顔をすごい力で挟み込んだ。
「ぐ……あぁああ!!」
前腕部と前腕部にサンドイッチにされ、達也は苦しく悲鳴を上げる。
「やかましいっ!! 黙れ!!」
「ぐはっ!!」
さっき同時に飛ばしていたもう片方の前腕部が達也の腹に食い込む。そしてさらにそこで二つに分離し、達也を四方から滅多打ちにする。
「達也ぁ!!」
シンは急いで達也の加勢に向かおうと走る。
「てめぇも人のこと心配してる場合じゃねぇぞ!!」
「はっ!!」
シンからは達也が死角になって見えていなっかたが、すでにコルシャの両足は存在していなかった。
「しまっ……!!」
後ろを振り向いたがすでに遅く、シンはバラバラになった両脚部の総攻撃をもろに受けた。
「ぐぁあ!!」
達也とシンはどこから飛んでくるか分からないコルシャの体に滅多打ちにされ完全に意識が飛んでいた。しかし、コルシャはそんな状態になっても二人を攻撃することをやめなかった。
「ハハハハハハハッ!! 見ろよ!一人リンチだ!! 楽しいぜぇ!!ハハハハハハハハッ!!」
「うんんんんんんんんんん!!!」
雄介は目に涙を浮かべ、必死に叫び続けた。
「おっと! もう返してもらうぜ、足首。もう好き勝手に叫べ。そして見ろ! こいつらが死んでく様をな! ハハハハハハハハッ!!」
コルシャの言葉が終わると、雄介の口につっこまれていた足首は外れ、達也を攻撃しているパーツに加勢に行った。
「ぷあっ!! 達也君!!! シン君!!! 起きて! 起きてよぉーーーーー!!!」
雄介の必死の叫びは届かず、二人の意識は完全に無かった。
「プァハハハハハハハ!!! もう聞こえてねぇよ、ブァーーーーーーーカ!! ハハハハハハハハハハッ!!!」
二人は攻撃を受けると倒れようとする。しかし、それをさせまいと逆方向から次々に攻撃が加わる。膝を突こうとしても下からの攻撃でまた立ち上がり、二人は無理やり立った状態でいいように攻められ続けた。
「やめろ………」
「ハッハッハッハッハッハッハッハッ!!!」
「やめろぉおおーーーーーーー!!!」
雄介は叫んだ。この声が届いて欲しいと、願いながら叫んだ。瞬間、雄介の体が光を放ち始める。
「!? 何!!?」
「うおぉおおおおおーーーーーーー!!!」
しかし、よく見ると光が発生しているのは雄介本体ではなく、雄介の壁に押し当てられた背中の部分だった。そこから神々しい光が発生している。
「な………!!」
そして、その光の中に、コルシャは驚くべきものを見た。
「『羽』……………だと…………!!」
雄介の背中から発する光は、美しい六枚の『羽』を形作っていた。
どうもです。
そろそろ花粉のシーズンです。作者は花粉嫌い! 大嫌い! だって目が痛くなるもの。まさに「目が、目が~~~!!」ですよ! ム○カも真っ青なくらい痛くなるから嫌いです。鼻も一応ダメージ食らうけど、やっぱ目が一番来ます。皆さんも花粉には気をつけてください。
あっ! でも『花』自体は好きですよ。一応言っておきますけど。
それでは、また次回。