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第43話 買物

花梨の協力を得て、ガロウを倒すことに成功した達也、シン、雄介の三人。

しかし、ガロウは逃げる瞬間にある意味の深げな言葉を残していっていた。

すぐそこまで、夏休みが近づいてきていた……。

 放課後は人によって様々だ。

 部活をするもの。家に帰って何をするでもなくゴロゴロするもの。帰る前に友達とどこかで遊ぶもの。

 大抵の人間にとっては、憂鬱な授業が終わった後の楽しい時間であるだろう。

 だが、ここにいる一人の少年にしてはそれは当てはまらない法則だった。そう、この草薙達也にとっては。

「あ~あ……」

 今日も一人、ダルそうにため息を付きながら部室へと向かう。

 達也にしてみれば用事の無い日の放課後は家に帰って夕食の時間までゴロゴロしていたいのが本心だ。だが、学校のルールと部長である美咲がそれを許可しない。どうせ部室に行っても何もやることがなくグータラするだけなのに、なぜか全員を集める美咲の考えが達也には理解できなかった。

「ちぃ~っす……」

 できるだけダルそうに声を出して達也はドアを開けた。どうせこんな声を聞いても帰してくれないことは分かりきっているがとりあえずやっておいた。

「……今日もお前らが一番乗りか」

 お前ら・・・、という言葉で一番乗りとはどういうことだ、というツッコミは置いておいて、部室にはいつも早く来ている面子めんつ、七瀬と雄介がいた。あいも変わらず二人ともやっていることは同じで、七瀬は読書に雄介はパソコンといういつもの光景だった。

「よく飽きねぇな。ほとんど毎日同じことやってないか?」

「毎日やっても飽きないからやってるんだよ。ねぇ、七瀬ちゃん」

「うん……」

 七瀬は小さく頷いた。

「いいねぇ。俺もなんか趣味でも見つけりゃ楽しく―――」

「おいーーーっす!」

「なあっ!!?」

 突然、後ろのドアが開き、達也はぶつかって前に派手に転んだ。

「…って、何? 何やってんの達也?」

 入ってきたのは美咲だった。その後ろに早苗と美樹、シンまでいる。四人とも天高くに尻を突き出して倒れている達也を不思議そうに見ていた。

「った~……あんたのせいですよ!あんたの!!」

「あっそう。悪いわね。はい、じゃあみんな席について!」

 それだけ言うと、美咲は達也の脇を通ってさっさと部長用の自分の席へとすたこらと歩いていった。他三人も同じように達也の隣を抜けてさっさと自分の席に座った。

「ほら達也、何してんの。早く席つく」

「……………」

 達也はもうどうでもよくなって、言われたとおり自分の席に座った。美咲と付き合うにいたっては、深く突っかかってはいけないと知っているからだ。突っかかると後々面倒なことになることは見えているせいだ。

「さて!!」

 美咲は机をバンッ!と勢いよく叩いて全員の目を自分に向けさせた。

「諸君、いよいよあと五日後は待ちに待った夏休みです!」

「知ってまーす」

 さっきの仕返しなのか、茶化すように達也が言葉を挟んだ。美咲は少し眉を動かしたがまた話を続ける。

「そこで!我が超常現象研究部は、なんとなんと合宿をすることになりましたーーー!!!」

「「「「「……ええ~~~~~!!?」」」」」

 しばらくの沈黙の後に一同総出で声を上げた。

「が、合宿ってどこでやるんですか!?」

 美樹がまだテンパった感じの声でたずねる。

「ふふん。なんとね、場所は早苗ん家の別荘を貸してもらえることになりました~~~!!」

「「「「「えええーーーーーー!!?」」」」」

 そこで全員の目が美咲から早苗に移る。早苗はニコニコした笑顔。

「片田舎のほうに今じゃほとんど使ってないうちの別荘があるんで、そこに行こうかと。後ろには山があるし、前には海があるから退屈しないと思うんですけど」

「いやったーーーーー!!合宿サイコーーーーー!!」

 雄介は飛び上がってはしゃいでいる。

「ちょっといいっスか?」

「はい、そこの馬鹿」

 手を上げて発言しようとした達也に、美咲はあんまりな呼び名で発言権を与える。

「合宿って言ったって、俺ら何するんですか? スポーツ系の部活でもないんだからどっか行ってやることも無いでしょ。いっつも部室でグータラ―――――」

「じゃかましいっ!!」

「なほっ!!」

 発言途中の達也に、美咲は机の脇にかかっていた自分のカバンをこれでもかと言うくらいに投げつけた。カバンは見事達也の顔面に命中し、達也は椅子ごと後ろに倒れた。

「何っ!? 行きたいの!? 行きたくないの!?」

「うぐ…行きたいです……」

 達也は鼻を押さえながらよろよろと立ち上がった。

「よろしい!! 出発は五日後。終業式が終わった翌日、夏休み初日の7月20日から7月27日の一週間。それまでに各自準備しておくこと! それじゃ、今日はもう解散! 明日は休日だから買うもんとかは買っときなさいよ。それじゃっ!」

 美咲は早足で達也の後ろに転がっている自分のカバンを拾うと、そのまま部室を出て行った。

「あっ! そうだ、言い忘れてたけど……」

 と、出て行ったかと思ったら戻ってきてひょっこりと顔だけをドアのところら出してきた。

「水着は絶対に、ぜ~~~~~ったいに全員持ってくること。いいわね?」

 それだけ言うと、今度こそ走って帰っていってしまった。あとに残されたメンバーは当然、スポンサーである早苗の方に目を向ける。早苗は何を言ったら言いの分からず、少し困ったような顔をして、

「それじゃあ、みなさん楽しみにしててくださいね」

 とだけ言って、自分もまた美咲に次いで部室を出て行った。

「どうするの?」

 残された一年の中で最初に口を開いたのは美樹だった。

「どうするたって……こうするもないだろ」

「だよねぇ」

「ですね」

 達也、雄介、シンの男性陣はそろいもそろって丸投げの回答をよこしてきた。

「七瀬ちゃんはどう思う?」

 男性陣を見限ってか、美樹は隣の七瀬に話を振った。

「楽しみだけど……水着は、そんなに自身ない」

 七瀬はもじもじとそう言った。

「そんなこと言うならわたしだって……って、そうじゃなくて! いきなり五日後とか言われても、どうしよう」

「とりあえず言われたとおり準備しておくしかないだろ」

 達也はいつもどおり楽観的に美樹をなだめた。

「買い物とかどうしよう……」

「あっ、じゃあ……」

 ここで手を上げたのはシンだった。

「明日、部長に言われたとおり買い物に行きませんか? 今のこのメンバーで。きっと楽しいですよ」

「あっ、それいいね」

 シンの案に、雄介はすぐに飛びついた。

「ああ、それがいいな。それならみんなで相談しながら買い物できるだろ。そうしようぜ美樹」

「いいね。そうしよっか。七瀬ちゃんもいい?」

「うん……」

「よし。じゃ決定。明日何時にどこ集合にする?」

 そうして、五人は明日に向けての打ち合わせを始めた。













 翌日。夏を象徴するかのようなこれでもかと言うくらいの快晴。五人は駅前のショッピングモールに来ていた。

「いや~、ずいぶん買ったなぁ」

「おめぇの買い物のほとんどは漫画とかのアニメグッズじゃねぇか!」

「同人誌もあるよーっだ」

 五人とも両手に紙袋をぶら下げているが、達也の言うとおり他の四人と比べて荷物の多い雄介の手にはアニメショップの袋のがいくつかあった。

「ねぇ、ちょっとそこで休憩しない? 荷物多くて疲れちゃった」

 美樹は近くにある広場のベンチを指差して提案する。

「そうですね。ちょっと休憩しますか」

 シンも他の三人も同意し、五人はベンチに腰を下ろした。

「結構買うものあったね」

「ああ。結構疲れた」

「あっ、ねぇ見て、あの服可愛くない?」

 さっき疲れたといっていた美樹は、向こう側の店のショウウインドウを見るや否や、立ち上がってそれを見に行ってしまった。

「か~、まだ買うつもりかよ」

「見るだけよーー!」

 美樹はそれだけ言ってショウウインドウをしばらく眺めたあと、店内に入っていってしまった。

「結局入ってってるし! 女ってのはホントに買い物が好きだな」

「ホントだねぇ~」

 達也とシンはしみじみと美樹を眺めながらそう言った。

「あっ、おい。あそこにクレープ屋あるぞ」

 達也が指差す方向には、広場で経営している屋台のクレープ屋があった。

「なんか買ってくるよ。何がいい?」

「あっ、僕も行きます」

 シンも立ち上がって達也の隣に立つ。

「そうか。じゃ、二人はどうする? 美樹のやつはどうせチョコバナナ以外は食わないだろうし」

「じゃあ、僕みかんクレープ」

「わたしはいちご…」

「はいよ」

 達也とシンはクレープ屋の方向に歩いていった。

「七瀬ちゃんはどんな服買ったの?」

 二人っきりになって、雄介は七瀬に不意に質問した。

「えっ!? ワンピースとか……かな」

 七瀬は少し照れくさそうにボソボソとそう言った。

「へぇ~、合宿の日のお披露目が楽しみだなぁ」

「――――――!」

 何の気無しに言っただけなのであろうが、雄介の言葉に七瀬は少し頬を赤らめた。それからしばらくは二人は何もしゃべらなかったが、七瀬が少しそわそわしているのに雄介は気が付いた。

「どうしたの?」

「えっ!? あの…あそこ……」

「ん?」

 七瀬が指差すほうには見るからに蔵書の数が多そうな本屋があった。

「ああ、本屋さんが見たいの? 行っておいでよ。荷物は僕が見てるから」

「ありがとう。坪井君……」

 七瀬は一礼して本屋に小走りで向かった。

「…可愛いなぁ」

 その後姿を眺め、雄介は不意に心の声が出てしまった。

「あっ! 何言ってんだろ、僕」


「坪井…雄介君…だっけ……」


「!!?」

 いきなり耳元で、誰かが囁くように声が聞こえた。辺りを見回すが誰もいない。

「……気のせいか」

「ここだよ」

「!!?」

 今度は右側から声が聞こえた。振り向くがやはり近くには誰もいない。しかし、向こうにある路地の物陰の奥のほうに、少し奇妙な人影を見つけた。

 腕を組んで隣の壁に寄りかかっている人影は、なぜだが奇妙な気配を放っているように雄介には感じられた。

 すると、人影は雄介のほうに向かって手招きをしだした。

「まさか、敵……!?」

 人影はしばらく手招きをすると、さらに路地の置くのほうに向かって歩いていってしまう。

「達也君たちに知らせてる暇は……無いか……」

 雄介は足早にその人影を追って歩いていくが、すぐに後ろを振り返って自分たちの荷物を見る。

「あ~、どうしよう」

 しばらくその場で考えたが、

「……ごめん!」

 そう言うとすぐに、人影を追って路地へと入っていった。

 路地は薄暗く、ゴミ箱やらビンケースやらがあってとても狭かったが、何人かが一斉に通っても十分なほどの広さはあった。雄介は慎重に奥へ奥へと歩いていくと、途中で曲がり角があった。

(待ち伏せか?)

 そこで雄介は銃を手に持ち、さらに慎重になりながらゆっくりと曲がり角に近づいていく。

「(ふぅー……)」

 ゆっくりと呼吸を整える。

(大丈夫。僕にだってできるさ。僕の銃の腕前はシン君のお墨付きなんだから)

 覚悟を決め、雄介はすばやく角を曲がり、銃を前方に構える。

「えっ?」

 しかし、そこには誰もいなかった。奥のほうにはまだ道が続いている。

「もっと奥かな……」

 雄介はさらに奥へと向かうために歩き出した。瞬間、

「なっ!!?」

 いきなり首を後ろから掴まれて、右側の壁に叩きつけられた。慌てて後ろに銃を向けようとすると、今度は銃を持っていた右手を掴まれ、同じように壁に叩きつけられる。

「ぐっ!? これは……!!」

 一瞬だが、雄介が見た映像では、柱か何かの出っ張りの部分に影が見えた。

(しまった! 柱の陰に隠れてたのか……!!)

「初めまして、坪井…えっと、雄介君……で合ってるよね? すまない。人の名前を憶えるのは苦手でね」

 さっきと同じように後ろから声が聞こえる。声の質から行って男だ。耳元でボソボソとしゃべってきている。

「何だお前は……!! 誰なんだ…!!」

 首を強く掴まれているせいか苦しそうに雄介は問いただす。後ろの男は手首の力だけで雄介の首と右手を固定しており、かなりの力を持っているらしい。

「僕は魔界師団第06部大隊隊長、コルシャ・ペリネル。用件は言わずもがなだろう」

「魔界……!?」

 雄介は驚きを隠せない言葉で聞き返した。そしてしまったと思った。魔界のことはシンから話で聞いていたが、まさかそんな場所の、しかも軍隊のようなところの隊長だったとは明らかに失敗した。

(いきなり強そうなのがキターーーーー!!)

「君には質問に答えてもらいたくてねぇ。ここまで来たんだ」

 コルシャは淡々と、雄介の首と右手を掴んだまま話し出す。

「実は……」

「残念だけど、話すことは無い」

「えっ?」

「君は知らなかっただろう。シン君は僕の銃の腕を買ってくれている。だから、お前には必要だろうって……」

 雄介は首を掴んだ手を持っていた左手を離す。

「もう一丁銃を渡してくれていたことに!!」

 すると、雄介の左手に新たに銃がもう一丁出現した。

「何っ!!?」

「喰らえっ!!」

 雄介は右の脇から後ろに銃をまわし、引き金を引いた。


 バァーーーンッ!!


 銃声が狭い路地にこだました。

みなさん、お久しぶりです!

旅行良かったです、ホントに。気分がすごいリフレッシュしました。沖縄行ったんですよ沖縄。

やっぱり南はいいですね、南は。

気分もリフレッシュしたので、またみなさんにいい作品を呼んでもらうよう努力していこうと思いますので、よろしくお願いします。

それでは、また次回。

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