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第41話 スリラー その⑨

ガロウから花梨の居場所を聞いたシンと雄介は『廃ビル街』に走った。

 さっきまでいた町の中心辺りから、走って三十分くらいの場所にそれはあった。

「ここか……」

 シンが軽く息を切らせながら呟いた。

「うん。ここが…『廃ビル街』だよ……」

 雄介はシン以上に息を切らしながら言う。

 辺りには十階はあるようなビルが、見ただけでも二十棟以上建っており、二人が立っている辺りは影になって日はほとんど当たらず、辺りの暗さのせいでほとんど何も見えない状態だった。

「薄気味悪い場所だな」

「しょうがないよ。こんな場所に好き好んでくる人なんかほとんどいないし、いわゆるゴーストタウンってやつだよ。だから不良たちの集会場みたいになってるようなもんだし」

 廃ビル街の入り口辺りには山ほどバイクが駐車されており、そのほとんどに漢字の当て字のロゴが入っていた。おそらく暴走族もいるのだろう。

「とにかく行くぞ。花梨はこの中にいる。近くに来たせいで反応が感じ取れる」

「えっ、そんなことできるの?」

「感じ取れるのは、能力の使用の感覚だけだがな」

「えっ……」

「今も能力を使い続けてる。だが、この反応は何だ? ひどく…ノイズが入るような……まるで無理やり……」

「とにかくいいから中に入ろう! 早く!」

 雄介は強引にシンの腕を引っ張って廃ビル街の入り口に向かっていく。

「なぁっ!? おい、ちょっ、まて!雄介! 分かった、自分で歩くから!!」

 シンは腕をを払って歩き出す。

 廃ビル街は外で見たときよりも、中はかなりひどかった。辺りのビルはほとんどが完成したものだったが、中には鉄骨だけのものもあった。しかし。完成されているビルのガラスで割れていないものはほとんど無く、そこら中にゴミが散らばっていた。

「なぁ……」

「んっ?」

 シンが雄介に声をかけた。

「おかしいと思わないか?」

「何が?」

「さっき入り口にあれだけ大量のバイクが駐車されてたのに、なんで人の気配がまったくしないんだ……」

「それって……まさか……」

「しっ!!」

「!!?」

 シンがいきなり雄介の言葉をさえぎった。そして顔を近づけ、耳元で静かに囁いた。

「気をつけろ……何か・・に見られてる……」

「な…何かって……」

 雄介も声のトーンを数十倍にまで落として聞き返す。

「今までのことで大体想像つくだろう……」

 二人が話しているそのとき、すぐ手前のビルの中で何かが動いた。

「ひっ……!? い、今のは……」

「マズイな……」

 気づいたときにはすでに遅かった。周りのビルの中や狭い路地、あらゆるところから赤や青の光が固まったような人の形をした怪物が集まってきていた。

「ひぃ~~っ!!」

「…簡単に帰してくれないか」

「ど、どうしようぅ~!!」

「ここまで来たら腹をくくれ! 戦うぞ!」

 シンは空中から銃を出現させ、両手に構える。

 それが開戦の合図だったかのように、怪物たちが悲鳴とも雄叫びともつかないような咆哮をあげる。そして二人に飛び掛ってきた。

『ウァオオオオオオオオオッ!!』

「行くぞオラァッ!!」

 シンは飛び掛ってきた一体の頭を踏みつけ空中に飛び上がり、辺り一体に銃弾を散乱させるように発射した。

『ウワァガァアアアアッ!!』

 何体かの怪物は、まるで吹き消された誕生日のロウソクの火のように一瞬で消えたが、何体かは撃たれた場所がすぐに再生してまた襲い掛かってくる。

「こいつらもやっぱ暴走した魂か、クソッ! 急所を狙わねぇと…」

「うわわわぁ!!」

 シンは懸命に戦闘中だが、雄介は襲ってくる怪物の攻撃を避けることで手一杯だった。

「雄介ー!! 戦えー!!」

「無理だよぉー!!」

「大丈夫だ!頑張れ!! お前ならできる!」

「そんなこと言ったって……!!」

 そのとき、雄介の目の前に突如として出現した怪物が雄介に拳を振り下ろしてきた。

「雄介っ!!」

「え……? ……うわぁああああ!!」

 シンは助けに入ろうと思ったが、距離がありすぎてとても間に合わない。

「雄介ー!!」

「うわあああああ!!」


 バァーンッ!!バァーンッ!!


 二回、銃声が轟いた。

「……ん」

 恐怖のあまり目を瞑っていた雄介は恐る恐る目を開ける。

『……ウゴァアアアア!!』

 目の前にいた怪物はさっきと同じよう一瞬で消え去った。

「え……?」

 雄介は何が起こったのか分からず辺りをキョロキョロ見回す。

「雄介っ!後ろっ!!」

「えっ?」

『ウシャァアアアア!!』

「うわあああ!!」

 バァーンッ!

「!!?」

 今度は何が起こったのか、雄介には理解できた。今のはきちんと目を開いていた。自分で撃ったのだ。あの得体の知れない怪物を、自分が撃って制したのだ。

「やるじゃねぇか! その調子だ」

「えっ? え~??!」

『ウガォオオオオオオ!!』

「!!? うわああ!!」

 また引き金を引き、銃口が火を噴く。今度は無意識ではない、今度は自分の意思で引き金を引いた。銃声が鳴るのとほとんど同じに、目の前の怪物の左胸に小さな穴が開く。

『ブォオオオオ……』

 そして、煙のように消え去った。

「ハァ…ハァ……」

 恐怖のせいか、それとも初めて体験した戦闘による高揚感のせいか、自然と呼吸が荒いでいた。

「いいぞ!その調子だ! おっと!」

 シンは軽々と怪物どもの攻撃をかわしながら雄介に声援を送っている。

「ハァ…ハァ……えっ!!?」

 しばらく呆然としていたので、シンの呼びかけに少し遅れて返答する。

「その調子だって! 言ったろ、お前ならできるって!」

「僕になら……できる………」

 雄介は自分の右手をじっと見つめた。そして、何かを決意したかのようにギュッと強く拳を作る。

「よーし……」

 雄介は銃を右手に構え、一直線に怪物に向かって走り出した。

『ウガラァアアアア!!』

「はぁああああああ!!」

 向かってくる敵に向かって、躊躇無く引き金を引く。雄介の目にはまるで敵の動きがすべて把握できているかのように見え、敵が来るであろうところに一発だけ銃弾が行くように引き金を引いた。

『ギャワラアアアア!!』

 向かってきた敵の数だけ引き金を引いただけで、敵は全滅した。

「すげぇ……銃の腕前もそうだが敵の急所を把握できていやがる……。ホントにすげぇ奴だったんだな」

 シンは心の底から感心した。

 その戦闘のセンスには頭を下げるほど美しいものを感じていた。自分でも急所の場所はうまく感知できていないのに、本能的にそれを感じることができる雄介にある種の尊敬の念を感じていた。

「……俺も負けらんねぇな」

『ウガラァアア!!』

「うおぉおおおおお!!」

 シンも、まるで張り合うかのように敵を倒していった。


 数分後。


「…だぁー、疲れた!」

「ハァ…ハァ……ぼ、僕、生きてる?」

「ああ、生きてるよ、バリバリに」

 二人は息を軽く切らしながらそう言った。

 辺りには血の跡も敵の死体も何も無く、何事も無かったかのように綺麗だった。

「じゃ、呼吸も整ったし行くぞ」

「えっ? どこに?」

「お前……ここに来た理由忘れたのか?」

「え………ああ!そうか、花梨ちゃん探しに来たんだった!」

 今までの戦闘の過酷さゆえに完全に忘れてしまっていたらしい。

「もう感覚は完全に掴んだ。花梨はあのビルの屋上にいる」

 そう言って、シンは今いるところから七棟ほど離れているビルを指差す。

「じゃあ行こう。早く花梨ちゃんを連れ戻そう」

「ああ、行くぞ」

 そう言うと、シンの背中に漆黒の翼が生えた。

「うおっ!!? まさかそれで飛んでくの?」

「そっちのほうが手っ取り早いだろ。行くぞ」

 シンは雄介の手を掴むと、そのまま空に飛翔した。

「うおおおおっ!??」

 雄介は素っ頓狂な声を上げる。シンはそれを無視して、目的のビルに向かって飛び始めた。

「花梨ちゃん、大丈夫かな」

 シンの手にぶら下がりながら、雄介が心配そうに呟く。

「分からん。正直、今花梨がどうなっているのか見当もつかない」

「けど、もうすぐ分かるよ」

 雄介は目線を少し上に向ける。そこには目的のビルがすぐ目の前にあった。

 シンは少し高度を上げ、ビルよりも高く飛ぶ。

 屋上は広く、ガランとしていた。そしてその中央に、花梨が両膝をついて座り込んでいた。

「花梨!」

「花梨ちゃん!」

 シンは高度を下げ、二人は地面に着地した。

「よかったぁ、無事だった。花梨ちゃん!」

 雄介は声をかけながら花梨に近づいていく。しかし、シンはうずくまるように座って動かない花梨に何か嫌な予感がした。

「おいっ! 待て雄介!」

 だが、シンが声をかけたときにはすでに遅く、雄介は花梨を立たせようと体に触れていた。

「花梨ちゃん」

 雄介が花梨の頭を上げさせる。

「!!?」

 雄介は驚愕した。上げさせた花梨の顔は恐怖に歪んでおり、何時間も泣き続けたのが一目で分かるほど充血していた。

「か、花梨ちゃん!? 一体どうしたの……!!?」

「止めて……」

「えっ?」

「止め…て……止めてぇ!!」

 花梨が叫んだその瞬間、花梨の背後から赤く半透明な色をした腕が飛び出してきた。

「!!?」

 雄介はとっさに後ろに下がろうとしたが間に合わず、首をがっしりと腕に掴まれる。

「ぐあっ!? があぁ!!」

 すぐに外そうと腕を掴むが、それと同時に首を掴む力が上がり、首から血が流れ出す。

「くあ……! は………っ!」

「雄介ーーーーーっ!!」

 異常を察知したシンが助けに向かおうと走り出す。しかし、左側から突然何かが飛び出し、シンの体はすごい勢いで右に吹き飛ばされた。

「うおおおおお!!??」

 すぐに翼を広げ、空中で体勢を取り直し、そのまま雄介のところにまで飛んでいこうとする。

「待ってろ、雄介!!」

 飛行の速度を上昇させたそのとき、前方からさっき下で相手をしていた怪物が何体もシンに向かって飛び掛ってきていた。

「なにぃいいーーー!??」

 旋回して方向を変えるがすでに遅く、怪物はシンに飛びつくと翼を抑え飛べなくしてしまう。

「なっ!? やめろ! こんな速度でそんなことしたら……!!」

 しかし、怪物はそんなことを言われても手を止めず、振り払おうと暴れるシンの翼を完全に押さえ込んだ。

「やめ………!!」

 言うのと同時だった。そのときにはすでにシンの体は屋上の地面に付いてしまっていた・・・・・・・・・

「ぐあぁああがあああああああーーーーーーーーーー!!!!!」

 バリバリとすごい音を立てて、シンの体は地面の上を引きずられるように滑っていった。さっき雄介を助けに行くために出していた速度は少なくとも80kmは出ていた。そんな速度で地面に叩き付けられたのだ。シンの体はズタズタになり、いたるところから血が流れ出していた。

「う……く……………」

 落下したときの衝撃で、飛び掛ってきた怪物どもは消えて追撃はされなかったものの、シンはほとんど瀕死の状態だった。

「あ……か…………!!」

 首を掴まれている雄介はもはや意識が飛びかかっており、口からは泡が垂れていた。

「もう…やめてっス……もうやめてっスーーー!!!」

 花梨はその光景を目の当たりにし必死に叫ぶが、もうどうしようもなかった。

「こんな…こんな物のせいで……!!」

 花梨は自分の左腕を掴む。そこには、ガロウから受け取った腕輪が取り付けられていたが、その色は最初のような澄んだ青色ではなく、黒々とした赤色に変わっていた。

「こんな、こんな物ーーーーー!!」

 花梨は腕輪を掴んで何度も外そうと引っ張る。その手首はさっきから外そうとしていたのか赤く変色し、血が滴っていた。

「何で、こんなことに……私は…こんなこと望んでないのに……」

『いいや、それは君の願望の産物さ』

「!!?」

 その声に後ろを振り向く。そこには当たり前のようにガロウがたたずんでいた。

『君がおじいちゃんに会いたいって思う気持ちから君はその選択を選び、今に至っているんじゃないか』

 ガロウはかりんの目の前にいる雄介、そして向こうでうずくまっているシンと順番に見ていく。

『ハハハッ、でもまさかここまでしてくれるとは。少しダメージを与えるのがやっとって思ってたけど、コイツは予想外だったなぁ』

「あんた、初めっから私を利用するつもりで……」

『ノンノン、違うよ。君がおじいちゃんに会えるために力を貸したのは本当さ』

 ガロウは体の前で無実を訴えるように両手を振る。

『でもね、君の目的以外で・・・・・・・呼び寄せられた魂をどうしようが僕らの勝手だろぉ~~? アハハハハハハハハハッ!!』

 ガロウは腹を抱えて大声で笑い出す。花梨は何もできず、ただ呆然とガロウを見ていた。

『君がおじいちゃんに会えればそれでいい、僕らは何も関知しない。だけどね、君の能力は利用させてもらうよ! 代償としてね! その腕輪は能力の増幅とともに僕らの意のまま魂を操れる!! 画期的だろう? ハハハハハーーーー!!』

「そん……な………そんな………」

 花梨は再び顔を沈め泣き出した。自分の我がままのせいでこうなってしまったことへの罪の意識のせいか、さっきよりも大きな涙が頬を伝った。

『泣かないでよ! 僕は今こんなにハッピーな気分なんだ!! 邪魔な奴らをいっきに二人も始末することができた!! 笑いなよ、ねぇ! 笑ってよ!! ハハハハハハハハハハッ!!!』


 ガァーーーーーーンッ!!!


『!!?』

「!!?」

 突然、屋上の扉が蹴破られた。ドアを蹴破った本人は、顔の中に静かに怒りを見せていた。今現れているその怒りは恐らくごく一部で、その胸中には計り知れないほどの怒りが渦を巻いているのだろう。

『…来たか、草薙達也』

 入ってきたのは達也だった。じっとガロウを見据えるその瞳は、常人なら恐怖ですぐに目を逸らすほど強い怒りに満ちている。だが、ガロウはその瞳を受けても平然としていた。

「草薙…さん……」

 花梨は小さく、達也を見つめ呟いた。

『ドアは手で開けるものだよ』

「…やっぱりテメェは、救いようの無いゲス野郎だな」

『フンッ!』

 達也はガロウにそう言った後、目線を花梨に向けた。

「ひ………っ!」

 花梨は小さく悲鳴を上げた。恐らく自分はとてつもなく怒られる、軽蔑される、そう思った。

「花梨」

 だが、花梨が思っていたこととは裏腹に、達也の声音はそのどれでもなかった。何か、優しく悟すような声だった。

「お前に言わなくちゃならないことがある」

「……………」

 花梨は何も言わず、黙っていた。

「……お前のじいちゃんは、もう来ないよ」

「……え……………?」

「もう…この世にいないんだ。お前のじいちゃんの魂は」

「……………」

 花梨は、呆然と達也を見つめていた。

どうもです。

次回でこの話もラストの予定です。結構疲れた。

花梨は結構自分で好きなキャラなので、これから機会があればちょくちょく出していこうと思います。

それでは、また次回。

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