表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/72

第3話 天使

前回のあらすじ

真司が超研に入部し、朝にあった事の問題も無くなりあらためて友達になった達也と真司。だがそこに得体の知れない化け物が現れる。恐怖と驚きの中でそれが今日自分の見た夢だと気付く達也。そのとき、驚きで動けない達也の前に真司が、化け物から達也を庇うように立ち塞がった……。

嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ。こんな事あっていいはずが無い。自分の夢が現実になる?どこのSF小説の世界だよそりゃ。

 だが、実際目の前の光景は俺が見た夢と瓜二うりふたつの状態だ。待てよ、夢の中で俺こんなピンチだったっけ?いや今はそんな事考えている場合じゃない。とりあえずピンチなんだ、早く逃げる事を考えよう。こんなとこで死ぬのはごめんだ。まだ十六年しか生きてないんだぞ。もっと色々やりたい事だってあるんだ。さっさとここから逃げよう。

 だが、逃げようとする俺にまたさっきのような妙な既視感のようなものが襲ってきた。そして何故か逃げることよりその既視感が何なのかを考える方に気が行ってしまう。くそ、何でだ。何でこんなときに。考えたいことがあるなら後でいくらでも時間を割いてやる、だから今は逃げるのに専念してくれ。

 しかし俺の頭はそれを拒否し、なんだか分からないモヤモヤ感を俺に見せるばかりだ。なんだ、なんでだ。ここで思い出せって言うのか?何をだ。何を俺に思い出してほしいんだ、俺。

「待てよ……」

 そうだ……夢だ。今この状況が俺の夢とそっくりなら夢を思い出せばいいんだ。そうすればなんとかなる……多分。えーと、たしか……まず死んではいなかったはずだ。うん、これは確実。そうだ、そしてその後に誰かが助けてくれたんだ。間違いない、全部思い出した。今からここに俺を助けに誰かが来てくれるんだ。

「んっ?」

 そう言って視線を前に戻すと、俺は大変なことを忘れていたことに気づいた。

「真司……」

 そうだこいつがいたんだ。驚いて何もできなかった俺を庇うように化け物と俺の間に立っている。こいつも意外と度胸があるんだな。だけどもういいぞ。そいつらは今から来る誰かが倒してくれるから。まあ、倒しているところを見たわけではないが、強そうだったのは覚えている。だからもう大丈夫だぞと、俺が心の中で囁いていると、

やがったか、くそ野郎共」

 俺は耳を疑った。えっ? なぜ? なんで? ついさっきまでのこいつからは想像もできないようなことを言いやがった。テンパリ過ぎて耳鼻科医の世話にならなければならないほど耳がおかしくなったのか?

「たく、よくこんな大所帯おおじょたいで人間界まで来たもんだな、ザコ悪魔共が」

 人間界? 悪魔? もう言ってることがSF過ぎてよく分からん。それにこの口ぶりを聞く限り、真司はこいつらの事を知っている。悪魔? 確かにそれっぽいが……。すると、さっきから唸り声しか上げていなかった悪魔のうちの一匹(一人?)が初めて人間の言葉をしゃべった。

「チカラ……ヨコセ…チカラヲヨコセ……」

 力? なんだそれは。すると真司はおもむろに眼鏡をはずした。

「誰がてめーらなんかにやるかよクソ共。てめーらにくれてやるのは……」

 そういうと空気が変わった。なにかがざわつく様な感じがした。

「死への一撃だけだ」

 その瞬間、真司の立っている場所を中心に青白い光が上がった。それと同時にとてつもない風が吹いてくる。よく見ると魔法陣ようなものが地面に浮かび上がっている。そしてその時、真司の後姿が夢の中の光景とフラッシュバックした。まさか……。

 そう思ったとき、魔法陣が発している光が急に強まり真司の姿が見えなくなった。目を開けているのが辛い。だが意外と光はすぐ弱くなり真司の姿が見えるようになった。が、……

「ふー、あーダリい」

 そこにいたのは俺が夢の中で見た助っ人だった。輝く銀髪の髪。光沢のかかった黒のレザーのスーツの上下。両腿のホルスターに収められた銃。

「んっ?」

 驚きすぎて何も言えない俺に気づいて振り返った。煌めく金色こんじきの瞳。

「どーした?何驚いてんだ?」

 この状況で驚かない人間もそういないだろう。むしろ知っているなら教えてほしい。

「あっ!そうか。俺が何だか分からないんだな。安心しろ、俺はな……」

 ここでまた、今度は台詞がフラッシュバックする。多少夢とは違うが、この後に言う台詞は……。

「天使だ」

「天使……」

 ほぼ同時だった。向こうはかなり驚いた様子で、

「えっ! なんで知ってんだ? 俺今はじめて言ったよな? えっ?」

 かなりすごい勢いで驚いている。その時、向こうにいた悪魔の一匹が飛び掛ってきた。くそ、汚ねぇぞ。ヒーロー物などの怪人はヒーローが臨戦態勢に入ってから攻撃してるんだ。変身や自己紹介みたいな時に攻撃すんのは反則だ。それに、こっちはこっちでまだ驚いていて一人でブツブツ言っていて気付いていない様子だ。

「危ない!」

 俺は叫んだが、こいつはまだブツブツ言っている。おい!早く気付けよ。敵が鋭い牙と爪を立てて、もうすぐそこまで来ていた。俺は思わず目をつぶる。


 バァーーーン!


 長い銃声が轟く。その後に『ドサッ』と何かが落ちる音がした。俺はゆっくり目を開ける。

 見るとさっき飛び掛ってきた悪魔が地面に伏している。その眉間には弾痕がくっきりと付いていた。そして俺の目の前には俺の方を向いた状態で銃を向こうに向けている天使がいた。

「なあ、おい。お前なんで俺の正体知ってたんだ。おい! おいってば!」

 おれはまた驚きのあまり口が聞けない状態に陥っていた。

「…まあ、いいや」

 そう言って悪魔たちの方に向き直る。

「その話はまた後だ。こいつらをブッ殺した後でゆっくり聞くよ」

 その瞬間、翼がそいつの背中に生えた。その翼は黒く、本人の着ている服と絶妙にマッチしている。天使なのになぜ黒なんだ?なぜ白じゃないんだ?

「いくぜー!!!」

 そう言ったのと同時に天使、悪魔の両方がそれぞれの敵めがけて突進した。

 俺はその後とんでもない物を眼にする。













 これは……夢の続きか……?

 そう思わざるを得ない光景が広がっている。天使と悪魔。その全人類誰もが知っているような相反しあっている存在たちが、俺の目の前で戦っている。

 天使はホルスターに収められていた銃を両方とも取り出し、飛び掛ってくる悪魔に一匹残らず弾丸をお見舞いしている。そのうちの一匹が弾丸の雨を掻い潜り、天使の目の前にまで接近した。

「ウゼーんだよ!」

 左手の銃をホルスターに収め、すかさず左腰に手をやり、腰に装着した鞘に収められていた巨大なナイフを抜きざまに悪魔の喉笛を掻き切った。倒れ伏す悪魔。そのまま黒い塵のようになって消えていく。

「ハッハー!」

 かなりの上機嫌で悪魔めがけて引き金を引き続けている。だが、今度は三匹が壁を走って何故か俺の方に突っ込んできた。何で俺の方に、俺は関係ないぞ。

「ガアーーー!」

「うわーーー!!」

 もう駄目かと思った。だが、天使が翼をはためかせこっちに飛んできた。俺の前まできて羽で自分と俺を覆うようにして悪魔の攻撃を防ぎ、そのまま羽を一気に広げ悪魔を吹き飛ばした後、両腰についている鞘からさっきの巨大なナイフを取り出して飛び上がり、飛翔しながら悪魔を切り捨てた。さらにそのまま大量に悪魔が集まっている場所に飛び込んでいき、大半の悪魔を倒した。

「終わりだ!」

 そう言って武器をまた銃に持ち替えて悪魔たちに向けた。すると銃口が光りだした。光子のようなものがどんどん集まり、銃口の先に光の玉ができ、大きくなっていく。

光撃レイキャノン!」

 そう叫び、引き金を引くと、すごい勢いで光弾が飛んでいき、集団の中にいたの悪魔に当たった瞬間、大爆発を起こした。周りにいる悪魔も爆発に巻き込まれて消滅していく。

「ギャーーーー!!」

「グオーーーー!!」

 大量の断末魔を残し、悪魔は一匹残らず消滅した。後に残ったのは爆発でできた火の海だけだった。

「ふいー、終わった終わった」

 そういって天使は俺に近づいてきた。俺は軽く構えて質問した。

「何なんだ、お前は……」

 そう聞くと天使は少しキョトンとした顔をして、

「何言ってやがる」

 唇を歪ませてこういった。

「始めに言ったろ。天使だよ」

 同じだった、夢と。

「そんでお前のクラスメイトだよ」

「へっ?」

 すると最初のように魔法陣が地面に現れ、天使が光に包まれた。そして光が治まりその場所に立っていたのは、

「……真司?」

 そこには真司がいた。さっきまで戦っていた天使ではなく、眼鏡をはずした真司が立っていた。胸ポケットに入れていた眼鏡をかけなおしこちらを向く。

「おう、そうだ」

 まさか……、

「そうだよ。俺が天使だ」


 はあ〜〜〜〜〜〜!?


どうも、松村ミサトです。第3話、どうだったでしょうか。今回でやっと物語の本筋のバトルシーンに入りました。うまく皆さんに僕の思っているようなバトルシーンが伝わってくれればうれしいです。それではまた第4話で。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ