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第36話 スリラー その④

達也とシンは不可解なこの事件を探るため、妖精ピクシーの木村のところへ行く。

しかし、木村に魂の存在を教えてもらい、そして達也が出会った魂は本来なら攻撃することはできないと知って謎はさらに深まる。

シンはそれを能力者の仕業と推測するが……。

「ふぁ~……」

 でかいあくびを一発お見舞いして、俺はベッドから降りた。正直まだ眠い。

 だが、今の時代の人間は本能のままに食って寝てなんて生活はできない。社会というシステムの中で生きている以上、システムには従わなくては。

 てことで、今日も渋々学校に行く準備をする。

「いって~……」

 朝飯を食っていると鼻っ柱が少し痛んだ。

「あら、どうしたの?」

 お袋が味噌汁茶碗を置いて俺に問いかけてきた。

「別に。ボーッとしてたら壁にぶつかっただけだよ」

 適当に言って流しとくことにする。

 本当は昨日、シンに殴られた場所なのだが、喧嘩と勘違いされては困る。

「お兄ちゃん、馬鹿だね」

 隣で目玉焼きをほおばっていた妹がクソ生意気なことを言いやがるから、味噌汁をかける真似をすると「ひっ!」と小さく驚いておとなしくなった。

 それからすぐに朝食を食べ終え、俺は少し早く学校に向かうため家を出た。

「はぁ~……」

 家を出てすぐに大きな溜め息が出た。

 今日はあまり学校に行きたくない。なぜなら、今日は……、

「本当にやんのかな……」

 例の能力者を探さなくてはならないからだ。






「おう、遅かったな」

 教室に入ると、シンが椅子に座って本を読んでいた。教室内はまだ誰もおらず、静けさに包まれている。

「わざわざ早くに来る必要あったのか? 生徒がいなきゃ犯人探しも何もできないだろ」

「犯人探しじゃない。容疑者探しだ」

 何が違うんだか…。

「早くに来て色々作戦練っとこうと思ったんだよ」

「作戦って……、そんなの昨日話ときゃいいだろうが」

「昨日はお前がのびちまって話せなかったんだろ、まったく」

 そう言ってシンは腕組をしてムスっとした顔になる。誰の所為だと言ってやりたいね、まったく。

「いやー、お待たせ」

「ん?」

 不意に入り口のほうから声がした。見ると雄介が鞄を肩にげて立っていた。

「雄介……。お前、なんで」

「いや~、シン君に頼まれてね。能力者を探すのと達也君の尻拭いを手伝ってほしいって」

「……………」

 クサレ天使め。

「人数は多いほうがいいからな。一応、一般人だけど武器も持ってるし」

 シンが言うと、雄介は空中から俺のナイフのように銃を取り出して「ニヒィー」と嬉しそうに笑顔を見せる。

「まっ、とりあえず作戦のほうを言わせてもらう。作戦って言うほどの事でもないが、達也から容疑者の身体的特徴とかを聞いて、しらみつぶしにそれに該当する奴らを探していくだけって事だ。見つけても個人での接触は禁止。あくまで学校のある時間は探すだけで接触は放課後、全員で行動すること。いいな?」

 ホントに作戦ってほどのことでもないな。全部当たり前のことだし。

「じゃ、達也先生お願いします」

 シンがおちょくるように俺を促し、雄介がそれに同調するように「ヒューヒュー」とはやし立てる。その気になれば二人ともボコボコにできるが今はよしておこう。

「手がかりっつっても、あんま無いぞ。女で赤みかった茶髪。これくらいしか分からん」

「そんだけ分かりゃ十分だろ。少なくとも探すのは女子だけで、しかも茶髪の奴だけ。町一つで探すとなると面倒だが、学校みたいな限られた空間ならそう時間も掛からない」

 なるほど。役に立たない情報だと思っていたが言われてみればそうだ。全校生徒は約九百人。男子と女子の割合はちょうど半々の約四百五十人。さらにその仲から茶髪、しかも赤に近いような色の奴だけとなるとほとんど数は絞られる。

「お前にしては珍しく正しい意見だ。素直に拍手」

「うん、拍手」

 俺と雄介はシンに向けて拍手を送ってやった。

「よせ! 俺はいつも真剣にこういうこと考えてんだ」

 嘘付け。

「まっ、とりあえず……」

 シンは眼鏡をはずす。

「作戦会議は以上。早速俺は空から捜索に掛からせてもらう」

 するとシンの髪が徐々に銀髪に戻っていく。

「草薙君!!」

「!!!!!? ギャアアアアア!!」

「シン!!」

 まだ静かなままの教室にシンの絶叫がこだまする。いきなり聞こえてきた声に慌てて髪を元に戻し、眼鏡をかけようとしたらつる・・の部分でセルフ目潰しをかましてしまったのだ。

「おい! 大丈夫か!? おい!!」

「くおあぁああああ~……」

 シンは両目を抑えてうめきながらうずくまっている。

「草薙君」

 シンの事で今まで気にしていなかったが、もう一度声をかけられて俺はやっとこのハプニングの元凶となった声の主に目をやる。

「お前……、荒川」

 見るとそこには荒川が立っていた。鞄を肩に提げ、タオルを頭に乗せている。どうやら水泳部の朝練があったらしい。

「草薙君。この間はごめんなさい」

 そう言って荒川は俺に走りよって抱きついてきた。この子謝る気あんの?

「私が浮かれて草薙君との事を話したせいで、心無い残酷な人にひどい目に合わされて……」

 心無い残酷な人って香川のことかな。この言葉聞いたらあいつショック死するんじゃないか?

「こういうことはやっぱりきちんとした関係になってから……」

「ストップ!! ストップミー!!!」

 適当な英語で一旦荒川を落ち着ける。

「まずはこの状況に目を向けてみようか」

 そう言って俺は後ろのシンを指差す。

「あっ、本当だ。どうしたんですか久我君。それでですね……」

 おい! それだけか!? 怪我人前にしてこれだけの反応とは恐ろしい女だ。

「今日はきちんと謝りたくて……」

「あ、ああ~そうなんだ。ハハッ」

 俺は適当に流すように返事を返す。さっきから抱きつかれてるせいで俺の胸部にこの間感じた柔らかい感触が再出没している。雄介のほうは面白がっているんだろうと思ったが、さっきから痛がっているシンに付きっ切りでこちらを見ていない。

(誰か助けて………)

 どうやら家を出る前から感じていた気だるさは、今の状況を予期していたものなのかもしれない。なんて、いまさら言ってももう遅かった。

 今日はまだ始まったばかりで先は長い。

 俺は今日ほど一日が早く終わってほしいと思ったことはなかった。













「……………」

 一限目が終わった休み時間。早速俺たちは調査を始めた。

 シンの奴はあれから保健室に行ったため、結局、朝登校してくる生徒を空から探すという作戦は発動する前から失敗し、俺は荒川を何とか説得して引き離すのに苦労したりと、今日は散々だ。

 しかし、そんなことが吹っ飛ぶくらいのとんでもないことが今起きていた。

「……………」

 今……いや、なんと言ったらいいか……、とりあえず、今のこの状況だけを伝えるなら、俺は今誰かに尾行けられている。しかも校内でだ。

「……………」

 最初は気にしていなかったが、途中で見えたこいつの髪が俺の探している奴にそっくりで、尚且つ女子という俺たちが探している条件にぴったりだった。だから声をかけようと思ったが、いかんせんシンに単独行動をとめられている。

(けどよ~……)

 しかし、向こうに話を振らない訳はそれだけではなかった。いや、正確には振らないわけはそれだけだ。振りたくない訳・・・・・・・があった。

(あいつ……)

 それは……、

(尾行する気あんのか?)

 奴の格好だった。

 この校舎の中でそいつは強盗が被るような黒い目出し帽を被り、それの横の部分に穴を開け、鮮やかな赤毛の二本のツインテールを出している。しかもそれで本人はまるで恥ずかしむ様子もなく真剣な眼差しで俺を後ろから見ている。

 当然のことながら、他の生徒の目線は全部奴のほうに一旦行き、そして奴の目線の先にいる俺に行くという最悪な状態だった。おまけにヒソヒソとなにか言われたりクスクスと笑われてもう嫌だ。シンに言われてはいるが、この間の荒川のことといい俺の学内での評価は最悪なものになっている。これ以上は下げてなるものか!

「おいっ!! お前!!」

 俺は振り向いて目出し帽ガールに指を突きつけて呼びかける。

「!!?」

 目出し帽ガールは辺りをキョロキョロと見回し、自分に指を突きつけて私ですか?とジェスチャー。お前以外に考えられんだろ、お前以外!

「お前に決まってんだろ!! さっきから何なんだ!!」

「……………!!」

 俺がそう言うと、目出し帽ガールは一目散に逃げ出した。

「あっ!! 待てーーーーー!!」

 俺はすぐに奴を追跡する。

「待てーーーーー!!」

 目出し帽ガールは意外に早く、なかなか追いつけない。その光景は途中、道行く道で出会った生徒には引ったくり犯を追いかける被害者のように思えただろう。

「待てコラーーーーー!!」

 目出し帽ガールは屋上に向かう階段の曲がり角を曲がっていった。俺も後に続き、左に曲がる。

「待てーーーーー!!」

「そりゃっ!!」

「!!?」

 そのときだった。曲がり角を曲がった瞬間、いきなり二本の指が俺の眼前に現れ、そしてそのまま俺の目にぶっ刺さる。

「ぐぁあ!!」

 俺はあまりの痛みに目を抑え悶絶。すると、右側からパタパタと走るような音がする。奴が、目出し帽ガールが逃げようとしている。

「―――――――!!」

 俺は咄嗟とっさのことであまり後先のことを考えられなかった所為か、それとも目潰しをかまされた怒りの所為か、音の聞こえるほうに思い切り右足を振った。

「おりゃああーーーーー!!!」

「どむっ!!」

 ボクっ!!という鈍い音と奇妙なうめき声が聞こえた後、ザザーっというなにかが地面を滑る音がした。

「痛ってー……」

 俺はようやく目を開けられるようになり、最後のザザーが聞こえた辺りを見てみる。

 そこには目出し帽ガールが目を回して大の字で気絶していた。

「……………」

 俺はしばらく何が起こったのか分からず少し考え、

「……あっ!!」

 そして自分のした事の重大さに気付いた。まだ犯人とも分かっていないどこぞの女子に右回し蹴りをかましてしまったという重大さに。

「ど…どうしよう……」

 俺はしばらく考えたが、


 キーンコーンカーンコーン―――――


「やっべ!!」

 授業開始のチャイムが高らかに鳴った。

「……………」

 俺はしばらく考えたが、いい案は浮かばず、結局、ガールを背負って屋上に向かった。

どうもです。

今回の話、どうだったでしょうか。

今回目潰しがよく出てきましたが、あれは作者が好きな技の一つです。もちろん危険なので他人に対して放ったことはありません。もちろん、自分にもです。みなさんは真似しないでね。

それではまた次回。

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