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第22話 電魔

突如達也の町に発生した大停電。電気が止まり、いろいろなことが不便になった町でシンと達也が偶然通りかかった変電所。

シンはそこからただならぬ気配を感じ、中に入ることに……

 変電所の中はただ真っ暗だった。

 幸い、変電所前のフェンスは電力会社の人が先に入っていて開いていたため、二人は難なく侵入することができた。

 達也はナイフを、シンは銃を構え、それぞれが警戒しながら奥へと入っていった。

「なあ、勘違いってことは無いのか?」

「無いな。少なくとも俺の奴らの気配を感じ取る力は、この近距離ならほぼ確実だと言っていい。それに、中に入って気配がはっきりしてきてるからお前にも分かるだろ」

 達也は何も言わず、また回りの警戒に専念し始めた。達也にも分かっている。変電所の中に入る前と今とでは、大きく気配が違うことに。さっきと比べ物にならないほど重く、暗い気配が、奥に進むにつれてやってくる。リスタと戦ったときに比べれば軽いものだが、やはりこの空気は慣れそうも無い。

「おい…」

 シンが達也に向かって小声で話しかけてきた。

「んっ?」

「しっ!」

 普通に返答を返しただけなのになぜか怖い顔でそれを制された。しかたなく小声で返答しなおす。

「何だよ……?」

「付けてきてる奴がいる……」

「えっ……!?」

 そう言われ、後ろに気配を傾けてみる。すると確かに、誰かの気配がする。おまけにご丁寧に足音もセットで付いてきていた。

「どうする……?」

 ここは一番こういう事に慣れている奴に判断を仰ぐほうが正解だろうと、達也はシンに問いかける。

「あ〜あ……」

 しかし、シンは話を聞かないどころか、自分から付けている奴がいると言っておきながら悠長に伸びをし始めた。

「おいっ……!?」

「あ〜〜あ……」

 達也が少し語気を荒げて問い直すが、シンはまったく聞く耳持たず、今度は腰を左右に振り始める。

「おいっ……!!」

「一つ教えてやる……」

「!?」

 腰を左右に振りながら、シンは達也に言い聞かせるように言い出した。

「付けてきてる奴がいる場合は……」

 そう言っていきなり……、


 バァーンッ!!


 腰を左に振りざまに、右手に持っていた銃を左の脇下から後ろに発砲した。

「ひいいぃぃーーーーー!!??」

 後ろから素っ頓狂な声が聞こえてくる。

「相手を油断させることが肝心なんだよ。相手はいつでも攻撃と逃走、どちらもできる体制でいるんだからな。よく憶えとけ」

 発砲してすぐさま体を後ろに向け、銃を構えながらシンが言った。達也は感心と驚きで声が出せないでいたが、やがて銃撃した方向からもう一度「ひぃぃいいいい………」と聞こえてきたので、それで我に返り、自分も構えなおす。

「さあ、もう付け回すのは終わりだ。誰だお前は」

 シンが大声で呼びかける。後ろの方の暗闇からはただ「ひぃぃいいい………」という怯えた声しか聞こえてこない。

「早く何とか言え! 俺たちは急いでるんだ!! 三つ数えるうちに何か言わなきゃ蜂の巣にするぞ!!クソが!!」

「ひぃいいい!!? わ、分かりました!! 分かりましたから撃たないで!お願いです!!」

 少しシンが脅しをかけただけで相手はすんなり即答。後ろの暗闇から姿を現す。

「あ、あの〜……、初めまして……」

 暗闇から顔を出した相手を見て、達也はえらく拍子抜けした。

 それはどう見てもただの人間の男にしか見えなかった。歳は二十の半ばかその程度の顔で、身に着けている服は今風だが、どこかボロボロで、どこか埃っぽく、正直失礼な言い方をしたら汚らしい格好だった。

「何だこいつ?」

「ひぃいい……」

 性格は今見ている通りかなりの臆病らしく、達也が気になって少し近づいただけでこの始末。どうやら敵ではなさそうだ。

「お前……」

 不意に達也が後ろを振り向くと、シンが銃を下ろし、戦闘態勢を解除していた。

「あ、あなたは……いえ、あなた様は……」

 男もシンの方に気付き、なにやらシンのことを知っているようなことを言う。男とシンはお互いを見合って、やがてシンの方が口を開く。

「お前、妖精ピクシー族の奴か?」

「そう言うあなた様は、黒の執行者ブラック・エグゼキューターこと、シン・クロイツ様」

黒の執行者ブラック・エグゼキューター?」

 達也の言葉にハテナマークが浮かぶ。

「俺の天界の通り名の一つだ」

「はい。シン様は天界ではかなり異形の黒い翼を持っておられており、その姿と圧倒的強さからそう呼ばれているのです」

「まあ、それはいい」

 シンは意外とあっさりとその話題を切り捨てた。

「お前、ピクシーの管理者・・・だろう。名前は?」

「はい、私はこの地帯の土地の管理を任されている木村きむらといいます」

「木村?」

 達也が拍子抜けしたような声を上げた。それは、多分言わずもがな名前の普通さに驚いたからだろう。

「人間界で行動するときの名前です。天界の名前は、我々のような階級の低い役職の者は、なるべく喋ってはいけない決まりですから。あっ、ちなみに下の名前はけんです」

 達也はシンのほうを見る。するとシンは何も言わず、ただうなずいて見せた。

「土地神様とかってのがあるだろう。ピクシーの仕事はそれを小さくしたみたいなもので、建物や土地自体を守護するのがこいつらの役目なんだ」

 へぇ〜、と達也は納得する。

「でも、これはどういうことなんだ。これほどの惨事になる前にどうにかできなかったのか?」

「は、はい。それが、なにぶん私たちピクシーにできるのは人間界で発生した悪霊などを祓うのが精一杯でして、その……」

「その?」

「奥にいるのは魔界から来た存在らしいので、私にはどうすることもできず……」

 木村はおずおずと申しわけなさそうに言った。

「やっぱり魔界の連中か……天界への要請は? 敵は何だった?」

「それが…何かの強い力によって、天界への連絡にジャミングがかけられていて……敵の姿も…その……私襲ってきたときすぐ隠れちゃったので……その…見てないんです」

「そっか……」

 シンはフゥッと軽く息をつきながら言った。

「すみません……」

「いや、いいさ。とりあえず、お前はここにずっと隠れてたんだろ?」

「はい」

「おんなじ場所にいる敵の気配を探れないとなると、敵は知能の低い魔界生物の類だろう」

(な〜に言ってんのか全然分かんね……)

 シンと木村の会話に完全に蚊帳の外の達也は暇そうに、テレビでやってる政治の番組の如く訳の分からないその会話を聞いていた。

「達也」

「あっ?」

 ちょうど暇にしていたところにナイスなタイミングで飛んで来た呼びかけに、達也は少し驚いた。

「行くぞ」

「えっ? あ、ああ……」

 なんだ、そんなことか、と達也は少しつまらない気分になった。

「頑張ってください」

 後ろから木村の応援の言葉が飛んで来た。

「何言ってる? お前も来るんだよ」

「えっ!?」

「えっ!?」

 シンの言った言葉に、言われた木村はおろか、達也までも声を上げてしまった。

「な、なんで私が……?」

「敵の正確な位置を知っているのはお前だ。なるべくこういう事は早く済ませたいからな。だから案内がいる」

「い、いえ、でも……」

「いいから」

 シンが木村に顔を近づけて笑顔になる。だが、その笑顔は明らかに脅迫じみたあくどい顔になっていた。

「は、はい……」

 木村はその凄みに負け、目に涙を浮かべながら了承した。

(いいのかなぁ……)

 達也はシンの言い分ももっともだと思ったが、木村の姿に少し罪悪感を覚えながら、木村の案内に従い奥へと進んでいった。













 しばらく、歩いていると、一つの鉄の扉の前で木村が足をを止め、こちらを向いた。

「ここです」

 ドアには『変電室』と『危険!』の文字が書かれたプレートが付けられていた。

 ここまで来るとさすがに達也にもはっきり気配が分かるようになっていた。この変電所に入るときに感じた重くドス黒い気配はまさにここから出てきているのを感じる。

「あの〜……私もう隠れていいですか?」

 木村がおずおずとシンに聞いてきた。

「ああ、もういいぞ、ありがとう。それとなるべく安全な場所に隠れろ。この中にいる奴らはもう大体察しが付いたからな。ヘタして巻き込まれるといけない」

「は、はい!」

 そう言うやいなや、木村は手綱を放された犬のように一目散に逃げていった。

「大丈夫かな、木村さん……」

 去っていく木村の後ろ姿を見ながら達也は心配そうに言った。

「まっ、大丈夫だろ。臆病な奴ほど危険を回避する能力は高いからな」

 シンはそっけなくそう言ったが、言葉にはどこか心配しているような感じがあった。

「じゃ、行くぞ」

「……ああ」

 二人は扉を開いて中に入った。

 中はまっすぐ伸びた通路の先に曲がり角があり、そこから煌煌と明かりが差してきていた。

 二人は黙ったまま、通路を進んで行く。通路を進んで光が差しているところに近づくにつれて「キョキョキョキョッ」という不気味な声が聞こえてきた。そして、ついに曲がり角に差し掛かった。

「行くぞ」

「分かってるよ」

 シンと達也は曲がり角を曲がり、同時に戦闘の構えを取った。

「!!!!?」

 その光景に達也は驚いた。

 曲がり角を曲がった先は部屋のような四角い空間になっており、その先には、おそらく電気をいじるのに使うのであろう、計器などの丸い窓のたくさん付いた巨大な機械があった。

 その機械にそいつら・・・・は張り付くようにいた。

 体は小さく骨ばっており、まるで犬が二足歩行をしているような姿で黄色に光っており、頭から背中にかけて針のような毛が伸びていた。髪の所為ででこが少ない小さな顔にはクリクリとした小さな目が爛々とした光を放っていて、さながらハリネズミに人間を足して二で割ったような姿だった。

 そんな気味の悪い体をした奴らが、巨大な機械の壊れて中身がむき出しになっているところや、繋がっているケーブルなどにかぶり付いてチューと音を立てながら何かを吸っていた。

 そのうちの何体かがこちらに気付き、気味の悪い目で睨み付けてきた。

「キュイキュイッ」

「キョキョキョキョッ」

 まるでガラスを発泡スチロールで擦ったような不快な声で鳴く。それが合図だったのか、残っていた奴らも全員こちらを向いた。次の瞬間、

「キュゥゥイイーーーーーーー!!」

 まるで威嚇するように一斉に不快声を上げてきた。その音量に、思わず二人とも耳を塞いでしまう。

「やはり『グレムリン』かっ!!」

「グレムリン!??」

 大音量の不快音の中でシンが言った言葉が達也に聞こえてきた。

「気をつけろ……こいつら……」

 シンがそう言いかけたところで声は止み、次の瞬間、何体かのグレムリンが二人の目の前から姿を消した。

「えっ!??」

「気をつけろ!!」

「えっ!!???」

 その瞬間、達也の腹部に鈍い痛みが走った。見ると、腹にいつの間にかグレムリンが頭突きをかましてきていた。

「がはっ!!」

「達也っ!!!」

 そのまま達也はすごい勢いで吹き飛ばされ、地面に叩きつけられた。

どうも。

今回は結構有名な妖怪(怪物? 幽霊とか妖精だったかもしれない)グレムリンを登場させてみました。

えっ? 知らないって? じょあ、グぐってください。

今回書くことこれしかないから。

それじゃあまた次回。

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