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第18話 佳境

今までこのゲームの世界で色々な苦難を乗り越えてきた超研部員達。そのゲームもついに佳境に差し迫る中、何人かは、自分の体験した奇妙な現象が気になっていた。

 ここでまた、話は達也に戻る。




 ついにこの時がやってきた。

「お〜っし」

 俺は手の中にサイコロ二つを入れ、カチャカチャと振りながら精神を集中させていた。

 俺の現在位置はスタートから113マス目。つまりゴールまではあと7マスなのだ。このゲームはサイコロを二個使う。だからうまく行きゃあ、最低この一回で全部を終わりにできる。みんなを元の世界に戻すことができる。

「はあ〜〜〜」

 俺はどっかの気孔術の達人のように、目を瞑ってやかましい息遣いをしていた。

「ん〜……、はぁ!」

 今、運命の一投が振られた。サイコロが盤の中をせわしく跳ね回る。


 来い! 7、7だ!


 まず一つ目のサイコロが動きを止める。出た目は4。


 やった! あとは3以上だ。こりゃもらった!


 もう一つのサイコロは、角を軸にして、クルクルと高速回転している。もうそろそろ回転が止まる。頼む! 3以上、3以上出てくれ! 徐々に回転が弱まってきた。俺は覗き込むようサイコロを見て祈る。そして、ついに回転が止まった。

「……………」

 出た目は……、

「……2………?」

 俺は、はぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜……と、おそらく人生の中で一番大きく長いため息をついた。もうちょいだったのに……もうちょいだったのに……、神様の馬鹿ー!

 そして、例の通り石にもやもやと文字が浮かび上がる。まあいい。やることって言ったってどうせ後これ一つだ。我慢してやってやろうじゃあ〜りませんか。俺は腰から例のものを取り出す。それはシンからもらったナイフだ。何てったって、俺はここまで来る途中でこいつを完璧に使いこなせるようになったからだ。というより俺が強くなったのか?って、そんな自惚れを言ってみたりする。別に言うだけならタダだからな。そうこうしている内に石に完全に文字が浮かび上がっていた。どれどれ……。

「『最強との戦い』……」

 石にはこれだけしか書いてなかった。それと同時に、俺は背中に何か寒いものが走るのを感じた。えっ?何ですか最強って? どっかの地名かそこの料理の名前だっけ? なんて誤魔化して不安を消そうとするが、如何いかんせん嫌な汗が止まらない。何だこれ、何でこんなにテンパってんだ、俺。別に最強たっていままでそんな煽り文句の付いた場所だってあった。なのになんでこんなに嫌な感じがするんだ? 何でこんなに怖いんだ。まるですぐ先に怖い犬がいるってのが途中で分かっちまった気分だぜ。ここは今までとはぜんぜん違うステージだ。全力で行かなきゃならねぇ。少しでも気を抜いちゃいけねぇ。抜いたら……。

「…殺される……」

 そして、光のゲートが出現し、俺を、最悪が待つ場所へと連れて行った。













「助かるよ。君が来てくれて」

 何も無い空間。乾いた地面と、地面と同じように乾いた色をした空。それ以外は何も無かった。

 地面には草の一本も生えておらず、見える景色は茶色の地面と茶色の空とで作られた、境目がどこかも分からない地平線だけ。そこに二人の男がいた。今言葉を発したのはその内の一人、アイールである。

「まったくだ。あの方の命令とはいえ、まさか貴様に手を貸すことになるとは」

 ムスっとした声を上げ反論したのは、アイールの側に立っている男だ。アイールが少年と呼べる外見なのなら、こちら青年というべき風貌だった。細身だがガッチリとした体つき。肩辺りまで伸びた長い青色の髪を金色のリングで結わえ、さらに同じリングが両方の揉み上げの毛にも付けたヘアースタイルをしている。

「そう言わないでよぅ。こっちだって最後の関門って感じにしたいけど、それには君の能力・・・・じゃないとできないんだよ」

「お前の言う最後の関門ってのの情報はどこから手に入れたんだ」

「この世界の『てれびげーむ』ってやつから」

「…ハァ……」

 青年は頭に手を当て、やれやれといった具合に首を左右に振る。

「ねっ! だからお願い。お願いだよぅ、リスタ・・・

 そう言われ、リスタと呼ばれたその青年はまたやれやれと首を振った。

「あのお方の命令だ。ここはお前に協力してやる。……ったく、それにしても何でこいつと……」

「うわぁい! ありがと、リスタ。だから君は好きさ」

 アイールはリスタに飛びついて感謝の気持ちを表すが、リスタは「キショイ! 離せ!」といってアイールの感謝を拒否した。

「でも、頼んどいてなんだけど、ホントに大丈夫?」

 引き剥がそうとするリスタにしつこくへばり付きながら、アイールは思い出したように質問する。

「何がだ?」

 引き剥がす力を維持したまま聞き返すリスタ。

「君の力は確かにすごいけど、実戦で使うのはこれが初めてだろ? それにそもそも練習で一回・・・・・使っただけ・・・・・の能力・・・だし?」

 その言葉に、リスタはフンッと鼻で笑って返す。

「心配は要らん。お前が身を持ってこの能力の怖さを知っただろう? これは無敵の能力さ。この能力の攻略法など在りはしない。ああ無いさ」

 その自信に満ち溢れた回答を聞き、アイールもしがみ付くのを止め、フフッと笑う。

「確かにね…。あの時、君が能力を解いてくれなきゃ、今頃僕は死んでた」

「それだったら、そのままにしておけばよかったな」

 意地悪くリスタが言い返す。

「なんだよもぉ〜」

 その言葉に少しムッとするアイール。

「まあ、見ておけ。どうゆうものかは知らんが、お前が言う最後の関門っぽくしてやるよ……」

 リスタはニヤリと笑みを作る。

「俺の能力、『エア・ギア』でな!」

 そして、向こうに一つ、光の門が開いた。













 その光景に少年は、達也はただただ、立ち尽くしていた。

「何じゃこりゃ……」

 辺りには何も無い。文字通り何も無い。在るのは地面と地面と同じ土色の空だけだ。

「さってと……」

 達也は自分の腰に手を回し、後ろに備え付けられたナイフを取り出す。なんせ『最強』がいる場所なのだ、神経を集中させ、何時何処から来てもいいように身構えておかなくてはならない。

(どこだ…どこから来る……)

 沈黙が辺りを覆いつくす。何も変化が見られない。だがここで気を抜いたときに敵が来るかもしれないため、このままずっと構えを解くことができない。

「……………」

 じりじりと、雲に隠れて見えない太陽からいやらしい暑さが配達されてくる。緊張、暑さ、恐怖の三拍子が続く所為で達也にも限界が来る。

「だぁ〜〜〜〜」

 拍子抜けした声を上げて構えを解く。するとその瞬間、いきなり何かが達也の死角にギリギリ入る位置から飛んできた

「!!?」

 とっさにナイフで防御してそれを弾く。ギャリンッと少し鈍い音を立てたソレ・・はガツンッとさらに鈍い音を立てて転がった。転がったソレを拾って見てみる。

「…石ぃ〜……?」

 何かと思い確認してみると、それは何てこと無いただの石だった。

「ハッハッハッハッハッハッ!!」

「!!!?」

 急に聞こえてきた声にすばやく構えなおす。ここら辺はやはり少なからず戦いをしてきた証だろう。

「まったく…、待ちきれないなら探しに来るとかしろよ。根負けして構えを解くなんて…。戦士失格だな」

 声のしたほうを見ると、一人の男が立っていた。だが、アイールでは無い。アイールよりもたくましい体つきをした青年だった。おそらく自分とそう歳は変わらなそうだ。

生憎あいにくなことに戦士じゃなくてバリバリ現役高校一年生なんでね」

 貰った覚えも無い称号で名誉を毀損されたため、訂正と皮肉で返す。それと同時に達也は直感で理解した。こいつが『最強』の敵だ、と。

「先に自己紹介をしておこうか、草薙達也。俺の名はリスタ、リスタ・テイヌス」

「何で俺の名前知ってんだ。個人情報保護法知らないんですかぁ、テメェは」

「生憎この世界の情報には乏しくてな。なんせ始めてきたのもだから」

 何気無い話し合いだが、すでにこの男と達也の戦いは始まっていた。向かい合っているもの同士でしか分からない殺気の飛ばし合い。達也はリスタと名乗ったこの男と向き合っているだけだが、すでに体力を消耗し始めていた。リスタはそれを見透かしたのか、フンッと鼻で笑う。

「どうやら確かに戦士ではなさそうだ。この程度の気押しで体力を消耗する程度だからな」

「……………」

 達也は何も言えなかった。いったら負けなような気がしたからだ。根っからの負けず嫌いなのである。

「これで消耗したお前を倒すのもいいが、それではお前が納得しないだろう。だから直々に俺の能力で戦ってやる。俺の最強の能力、『エア・ギア』でな」

「エア…ギア……?」

 そしてそのあと、達也は最強の意味を知ることとなる。

どうも!

いや〜、もう佳境ですよ佳境。長かったなぁ〜、と思ってる皆さん。僕ですよ、それ一番感じてるの! 我ながら何でこんなネタやっちゃったんだろうと思います。いや〜それにしても長かった。

つぅーことで、次回、アイール編終わりです。断言します。

読んでくれてディ・モールト・グラッツェ。

それではまた次回。

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