第15話 秘密
前回までのあらすじ
アイールのが持っていた力が天界にある『知恵の実』の力だと知り激怒するシン。だがすんでのところでアイールに逃げられてしまう。
自分が知恵の実を守る使命を全うすることができなかったため、自分に存在する意味がないというシン。だが、そんなシンを達也は慰め、お前はもう一人じゃない、とシンに言うのであった…
しばらく騒いだ後、俺達は息を切らしながら木に寄りかかっていた。そして、本来なら今日部室で聞くはずだったことを口に出す。さっき一悶着あったばかりでこんなことを聞くのはどうかと思ったが、この時じゃないと聞けないと思ったから、思い切って聞いてみる。
「なあ……」
「ん?」
「お前は…何がしたいんだ」
「え…なにって……」
シンはさっきと同じような暗い顔になり、困ったように口をもごつかせる。
「この間、俺にパートナーになって戦えって言っただろ」
「ああ…あれはだな、お前が……」
「生身の人間のくせに化け物を倒した危険人物だからか?」
我ながら少し意地悪いと思ったが、確信をついたことを言う。シンは俺から目をそらすように顔を伏せた。
「それは……」
もごもごと口の中で言葉を転がし、より困った顔になる。だが俺は知りたい、いや、知らなければならない気がする。
「思えばおかしい事だらけだった。初めて会ったときの事から、お前の正体を知ったときのこと。そしてあのポルターガイストのときに感じた自分じゃない感じ。お前何を知ってるんだ?」
矢継ぎ早に色々な疑問をシンにふっかけてみる。だが、まだこっちをまともに見てくれない。
「頼む。教えてくれ。何を知ってるんだ。俺に何が起きてるんだ。初めて会ったときのお前の顔、あれは明らかに俺を知ってたって感じだった。答えてくれ、シン」
シンはしばらく黙ったままだったが、やがて諦めたように小さく息を吐いた。
「…本当は、もう少ししてから…、お前がこの事態を飲み込めるようになってから話そうと思ってたんだ」
そんな心配などしなくてももう十分に一発で腹を下しそうなこの事態を飲み込んでいるつもりだ。我ながら肝が据わってるのか、はたまたただ抜けているだけなのかは分からんがな。昔から諦めるのと順応が早いのは十八番なんだ。
シンは重々しく口を開いた。
「お前に特別な力があるんだ」
「……へ………?」
前言撤回。まったく順応出来ていなかった。何? なんていった今?
「お前は知らなくて当然だが、お前には昔から普通じゃない力があった」
「……………」
聞かなきゃよかった。そう思った。知るべきことだったのかもしれない。だが知りたくなかった。
「何で……」
「分からん…だがそれを……」
そこでシンはばつが悪そうに言葉を切る。
「…なんでその能力が現れたのかを調べるのと、お前を守るのが、俺の役目だった」
…一番聞きたくないことを聞いてしまった。だが、これで確かに全てにつじつまが合う。シンが俺を知っていたことも、ポルターガイストのときのことだって、全部俺の力とやらの所為だったということか…。そんな事を考えている自分が笑えた。さっきまでショックを受けていたのに、もう差ほど驚いていなかったからだ。だが、そんな俺の順応性をさらに追い抜くスピードで、もっと凄い事実を言われる。
「そして、今まで出てきた敵は、みんなお前の力を手に入れようとこの世に、この町に現れたんだ」
「―――――!」
それで今までの勘違いに気付く。今まで奴らはシンの力を狙ってたんじゃなくて俺の力を狙ってったのか?
「それは…さっき言ってた知恵の実とかいうやつと同じなのか……」
「それに似たようなものだ」
「……………」
俺は動揺を隠せなかった。じゃあ何だ? あのポルターガイストとの戦いのとき、美樹が危険な目にあったのは、必然的に俺の所為になるのか?
「……………」
どんどん知りたくないことが俺の頭に入ってくる。だが知らなければならない、そんな気持ちが、さらに不幸なことになるかもしれない言葉を聞こうとする。
「どんな力なんだ。俺のは?」
「それは言えない!」
急にシンが語気を荒げた。その迫力に少しビビる。
「あ…、その…、言えないんだ」
「何で?」
「……………」
まただんまりを決め込むシン。だが、
「すまない……」
小さく頭を下げた。珍しくこいつにしてはしおらしい態度だ。
「言うことはできない。今は……できればずっと…、知って欲しくない」
その言葉を聞くと、こいつが自分の部屋で見せた顔を思い出す。今を思えば、あれは俺に今のことを知って欲しくなかったからかもしれない。さっきのあいつの姿を見た俺には分かる。きっと全部を知ったら、俺が自分のことを嫌うんじゃないかと思ってたんだろう。
そしてこいつの必死さを見てると分かる。さっきは使命だったから、なんて言っていたが、こいつは、最初からずっと俺を、俺達を使命とかじゃなく、自分の意思で守ってくれていたのが。
「…分かったよ。ったく、一番気になるところでお預けかよ」
「すまん…」
さっきよりももっとしょぼくれるシン。
「別にいいよ」
「ごめん…」
多分、迷っているのだ。こんな態度を取っていても、もう自分には今までどおり接してくれないかもしれない、だったらこのことの原因になった自分がいつもどおり接していいのか、と。
「本当にいいって。俺は気にしてねえよ、こんなこと。別にお前が悪いわけじゃないんだし」
「でも…」
ええい、じれったい! やかましいこいつも勘弁だが、へこんでうじうじしてるこいつはもっと勘弁だ。俺はもう慰めるのとかを完全無視で言いたい事を言ってやった。
「あ〜〜っもう、いい加減にしろ!! 俺は別にもう別に気にしてないって言ってるだろ! 俺がどんなだろうと、お前がそのことを知って黙ってようと、俺は俺はでお前はお前だろうが! いい加減うじうじすんのやめろ!」
そんでもってシンの背中を思いっきり強く叩いてやった。バァンッ!と、いい音がジャングルに木霊し、鳥達が木々からやかましく飛び立っていった。
「〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」
だが、元気付けるためのものには少々強すぎたのか、シンは背中を抑えて声にならない苦悶の声を上げていた。
「―――って〜…、何すんだよ!!」
バシィーンッ!と俺の背中でいい音が鳴る。
「痛って〜〜〜〜〜〜!!!」
修羅場を潜り抜けてきた野郎の本気の平手をもろに喰らってしまった。
「お前何すんだ! せっかく慰めてやったのに!」
「バーカッ! 誰がそんなこと頼んだ! このっアホ!」
「アホだぁ〜〜!? てめぇ、よくも!」
と、引っつかみあっての殴り合いが始まる。さっきもこんなことになってたのに、本日二度目の落ち込みを見せていたシンは、本日二度目の立ち直りをを見せていた。
そして、その顔には本日二度目の、笑顔があった。
ほんと、忙しい奴だな、と俺は思い、もうしばらく殴り合いに付き合った。
てかこれ、さっきと同じ展開じゃないか?
そしてしばらく殴り合いが続いた。
バキッ!
グシャッ!
グチュッ!
聞くもおぞましい音が、無人のジャングルに響き渡る。
もうしばらく続いたら本気でヤバイことになりかけないシバキ合いを止めたのは、以外にも吹っかけた馬鹿の方だった。
「ゼェッゼェッ…もうやめよ。俺こんなことしてる場合じゃねぇんだよ」
まるで俺の方から誘ったかのような戯言をほざきやがり、シンは疲れきったようにヘナヘナとしりもちをついた。
「始めたのは…ハァッ…お前だ…ろうがよ…ハァッ…」
言いたい事を素直に言ってやる。こいつに甘い顔はしないでおこうということと、言いたいことははっきり言ってやるということをさっきの経験を踏まえて覚えたからだ。
「お前に…渡すもんが…ハァッ…あったんだよ」
「渡すもの?」
シンは地面からケツを少し浮かせ、体の後ろの方をゴソゴソと探る。
「本当はもう少し後に、お前が力の存在を理解したときに渡そうと思ってたものだ」
そう言ってはい、と俺に手渡したものは、自分が使ってるのと同じ馬鹿でかいナイフだった。
「おい、なんだよ。まさかこれで第2ラウンドやろうってんじゃないだろうな。やめろよおい、俺そこまでしたか?」
「違わい! いくらなんでも襲われたときとか戦うときとかに武器が無きゃ戦えねぇだろうが!」
あー、びっくりした。それならそうと早く言えよ。
「勘違いしたのはお前だろうが」
俺は手渡されたナイフを手に取る。持った途端に感じるずっしりとした感覚で軽くよろけそうになる。その重さが、これがおもちゃじゃない事を教えてくれた。
「どうした? もうちょっと軽いのにするか?」
にやにやへらへら顔に笑いを浮かべながら、茶化すようにシンが聞いてきた。ムカつく。
「違うわ! こんなでかいの持った事なくて重さが分かんなかっただけだ!」
俺は持ったナイフをぐるぐると振り回して重くないアピール。
「わっ、ちょっ、危ねぇ! 鞘抜けたらどうすんだよ!」
「あっ、悪い悪い」
俺はぐるぐるをやめて鞘からナイフを抜き、もう一度よく見る。形はシンがいつも使ってるのと同じだったが、柄の部分の形状が違っていた。
「それだけじゃねぇぜ」
シンはフッフッフッ、ともったいぶった笑いをする。
「それの刀身は俺のと一緒で、魔法系の攻撃を跳ね返したり吸収出来るようになってるんだ。そしてもう一つ、取り出しが自由に出来る。試しにやってみ。念じるだけでいい」
俺は言われたとおり『消えろ』とナイフに念じてみた。すると、
「おうっ!」
俺の手にあったまだなれない重さとともに、俺の手からナイフが消えた。今度は『出て来い』と念じてみた。するとさっきナイフを手に取ったときのように、ずっしりとした重みでよろけた。ナイフを初めからあったように俺の手の中に鞘とセットであった。
「すっげぇ…」
思わず感嘆の声を上げる。
「これなら飛行機乗る時だって大丈夫だろ」
たしかに。四六時中こんなもん持ってるのを許されるほど日本の法律は甘くない。これは便利な機能かもしれない。
「っと、そういやここは試すにはちょうどいい場所だったな。後ろ見ろよ」
言われたとおり俺は後ろを向く。するとそこには、
「お前の番が回ってきたぞ」
あの忌々しい双六盤が、フワフワと浮きながら待機していた。
「ここに来れたのは偶然だ。さっきみたいにタイミングよく俺は助けに入れない。危険になったらそれで切り抜けろ」
「お…おい、無茶言うなよお前」
素人の俺にそんなことを期待されたところで何も出やしないぞ。
「いいから。きっとお前を守ってくれる」
そんなこと胡散臭い励ましを受けた俺は、盤に急かされるような気配を背後から受け、次のステージに向けてサイコロを振った。
どうも〜。
今回からもういちいち名前入れるのなしにしました。あれ一発変換できないもん。
いや〜、今週は大変でした。この回書いてる途中にパソコンがウイルスに感染してオジャンになるという大事件がおきて、もう今週、いや、来月まで書けないな、と思っていたのですが、なんとパソコン君の奇跡の復活によって危機を脱しました。いや〜、危なかった。
というわけでいきましょう。キャラクタープロフィール!
キャラクタープロフィール NO.06
坪井雄介
誕生日 4月1日
身長 172cm
体重 60kg
趣味 アニメ観賞、映画鑑賞、音楽鑑賞、掲示板巡回、ツーリング(二輪免許所持。ただし校則では禁止されている)
特技 高速タイピング、ゲーム(主にRPGやシュミレーションゲーム)
苦手なもの イタイ書き込み、長蛇の列
好きなもの アニメ(石田彰、杉田智和の出ている作品は特に好き)、コミケ、パソコン、自然の風景(ツーリングのときに楽しむ)
嫌いなもの 犬(昔おしっこを掛けられ、さらに噛まれたため)、マナーを守らない人、茄子
所属 月白高校一年B組
と、今回は坪井の紹介でした。ちなみに石田彰さんと杉田智和さんは作者も大好きです。仮面ライダーキバあの二人が出てるから見てたもん。カヲル君サイコー! キョンサイコー!
それではまた次回。