第13話 発覚
前回までのあらすじ
アイールに促されるままにゲームを始めることになった超研部員達。いよいよ達也の番となり、サイコロを振って出た指令は何かと戦えというような文面だった。その瞬間、達也はジャングルに転送されてしまう。そして転送されて早々、その敵が現れた……
「来んじゃねぇーーー!!」
もう無理だ。もうアカン。足がしんどい。虎のやつは俺を弄ぶようにさっきから目と鼻の距離に俺の尻の位置をキープしたまま5分以上走っている。虎とかライオンはダッシュは長く続かないとかテレビで言ってなかったか?
「ガアァァア!」
いや、常識で考えるな。ここは普通の世界とは違う。だが、そう考えたらこのダッシュがまだ続くのかという絶望感が襲ってくる。
「あ〜〜〜!! あ〜〜〜〜!!」
もうなんか悲鳴上げるのもめんどくさい。そんくらいしんどい。今にも腿が内側からパーンッ!と弾けそうだ。
「あーーっ! もうっ! くそっ!!」
このまま足の限界を向かえ虎にいいようにされて食われるよりもせめて一矢報いてやると、俺は後ろを走っている虎に後ろに体重を掛けて倒れざまにエルボーをかましてやった。
「ギャンッ!!」
エルボーは見事、虎の眉間に深々と突き刺さり、それを受けた虎は意外にもかわいい声を上げて悶絶している。
「ハァッ…ハァッ…」
どうだこの野郎! 思い知ったか、このネコ科生物! などと粋がってみたが、正直なんでこんな事したのか分からない。ここ最近、結構速いペースで死にそうな目にあってたから変に肝が据わってしまったのかもしれない。そんなことを思っていると、シンに毒されてきている自分がいることに気付いてしまう。まったくだね、こりゃ。
「グググ……」
しかし、虎はもう回復したのかヨロヨロと立ち上がってきた。人間にやったなら間違いなくスリーカウントが入る代物だと自負していたが、どうやら野生には少々軽すぎたみたいだ。ええい、畜生!
「グォア!!」
「うおーーー!」
そしてまた始まる動物対人間の異種生物対抗鬼ごっこ。もうやだ。帰りたい。いや、帰れなくてもいいがとりあえず止まりたい。休みたい。そんな考えで頭の容量がいっぱいになってくる。正直もうエルボーのような奇襲は利くかどうか分からない。よくよく考えてしまった所為でもうやる勇気も無い。もうどうすりゃいい。考えろ俺! 出来が良くなくてテストの時とかに役に立たない分、こんなときに役に立て!
バァーーン!
不意に轟く銃声。それを聞いて、どこに隠れていたのか、見たことないような鳥たちが一斉に飛んでゆく。俺もいきなりのことに驚き、あの有名なゲームに出てくるヒゲのおっさん二人組の様に飛び上がってしまった。
「何だぁ!?」
全速力で動く足を起動させたまま後ろを振り返ると、虎はぐったりして動かなくなっていた。よく見てみると眉間に弾痕ができている。
あれっ? 前にもこんなシチュエーションがあった様な気が……、なんてことを後ろを見ながら走っていると、
ドンッ!
と、何かにぶつかった。何事かと衝突したものに目をやる。そこには……、
「よっ。危なかったな」
挨拶するように片手を挙げてシンが立っていた。格好はいつも見る制服姿のままだったが、手には本当の姿のときの銃を装備しているというなんともミスマッチした格好である。
「シン!」
「俺も10出してな。来た途端、お前があれと追いかけっこしてるのが見えてよ」
あれ、と言って後ろで死んでいる虎を指差す。それにしても、虎のいる位置からここまで結構な距離があるのによく当てたな。
「これがお前が見たかったものか? アイール」
その言葉と共に、シンは後ろに銃口を向ける。俺もそれを目で追った。
「な〜んだ。気付いてたのかい、シン」
銃口の先にはアイールがいた。近くにある木の上に座りながらムカつくヘラヘラ顔を向けている。
「俺は鼻が利くんでな」
「へぇー、さっすがぁ」
シンは後ろにしっかり向き直り、銃を珍しく両手で握り、ダブルアクションの構えを取る。
「おいおい、怖いなぁ。そんな物騒な物しまってくれよ。僕と君の仲じゃないか」
「黙れ!! ゴブリン風情が俺に指図するな!!」
「そのゴブリン風情に毎回してやられていたのはどこの誰だい?」
なんかよく分からんが、会話を聞く限りどうやらこの二人は知り合いらしい。それにゴブリンて?
「こいつはゴブリン族の悪党でな。今まで散々悪さして何度も戦ったんだ」
なるほど。要するに腐れ縁な訳ね。
「そしていつも良いところまでシンは僕を追い詰めるんだけどぉ、最終的に逃げられるんだよねぇ」
アイールは茶化すようにシンの痛いところを突いてくる。それを聞いてシンの眉間のしわが三倍増しになり、それプラス歯を食い縛るという動作が加わる。
「言いたいことはそれだけか……?」
シンは声を震わせながら言う。この声の震えは間違いなく怒りオンリーだ。馬鹿にされて理性がプッツンと切れそうになっている。
「まだまだ言いたい事はあるけど、もしこれだけだったらどうなるの?」
「こうするんだよぉ!!」
そう言うか言わないかの内に、シンは構えた銃の引き金を連続で引く。
バンッ!バンッ!バンッ!バンッ!バンッ!バンッ!バンッ!バンッ!バンッ!バンッ!バンッ!バンッ!バンッ!バンッ!
まるで弾丸の制限が無いのかと思うほど銃口から火花と爆音が飛び出す。だが、
チュンッ!チュンッ!チュンッ!チュンッ!
「!!?」
「!!?」
俺たち二人は揃って同じリアクションを取る。
「ハッハッハッハッハッハッ! 無駄無駄。無駄だよぉ、シン」
シンの放った弾丸は、いきなりアイールの前方に現れた光の壁のようなものに当たり、全て弾かれていた。
「お前…、何処でそんな力を……」
「ん〜〜……?」
「最後に戦ったときのお前にそんな力は無かったはずだ!! 何処で手に入れた!!」
シンは隣にいる俺がやかましく感じるくらいの大声で叫ぶ。
「なにぃ? もしかして君も欲しいのぉ?」
「――――――!」
シンの顔がまさに般若と見まごうほどに変貌している。こりゃあいつ殺されるぞ。
「ハハッ、冗談だよ。それに教えたとしても君には手に入れられないよ」
「なに?」
「貰ったんだ、これは。あるお方にね。それが今の僕の御仕えしている方さ」
「あるお方? 一匹狼だったお前が今は誰かに仕えてるのか?」
「そうなんだよぉ。あの方は強くて、優しくて、おまけにぃ、僕にこの力をくれたんだ」
アイールは、女みたいに体をくねくねさせながら自慢するようにそのお方とやらのことをしゃべっている。正直キモい。
「ねぇ、シン」
「なんだ」
「気付かない?」
そんな話題を不意にシンに振ってきた。シンは言われたとおりに何かを考えるような顔になり、やがて何かに気付いたように眼を見開いた。
「まさか……」
「そう、この力は君たち天界人がよく知っている力だよ」
「!!?」
その台詞を聞いてシンの顔が見る見る蒼白になる。まるでこの世の終わりみたいな顔だ。それ程のことなのか、あの力は?
「その力は……、まさか……」
どうも松村ミサトです。
いや、もうホントに最近暑くてやってられませんね。今この温度ならもう八月の気温とか想像したくありません。でもそんなクソ暑い中、皆様にいい作品をお届けしようと頑張っていますので、応援よろしくお願いします。
てことでキャラクタープロフィールです。今回はこの人
キャラクタープロフィール No.04
木高美樹
誕生日 7月5日
身長 161cm
体重 47kg
スリーサイズ B71/W59/H68
趣味 料理、お菓子作り、音楽を聞くこと、イラスト(意外とうまい)
特技 鍋系の料理(特にカレーは絶品らしい)、水泳
苦手なもの 英語、辛い食べ物(過度に辛いものだけ)
好きなもの 洋菓子、Jポップ
嫌いなもの ゴキブリ、怪談話
所属 月白高校一年B組
と、今回はこんな具合です。尚、男性読者の為に女性キャラはスリーサイズを書くことにしました。余計なお世話でしたか? あと今回からキャラの名前の上に『キャラクタープロフィール No.○○』と書くことにしました。これ以前のキャラクタープロフィールも修正しておきました。
それではまた次回。