第12話 思案
前回までのあらすじ
美咲が拾ってきた双六から命を賭けたゲームに巻き込まれた超研部員一同。
そんな中、美咲はゲームの世界に閉じ込められ、それを救うためにそれぞれがゲームの参加を決めた。
西田がサイコロを振りゲームに参加した後、続く三好先輩と美樹もサイコロを振り、いよいよ俺の番になった。
「さっ、次は君だ」
アイールは盤に転がっていたサイコロをわざわざ拾って渡してくる。この行動の一つ一つがおちょくっているように思えて、俺の怒りゲージが蓄積されていく。
俺はそんな感情を、さっきシンが言った台詞を思い出し、なんとか堪える。
「ほらよ」
お望みどおりサイコロを振ってやる。それぞれの目は両方とも5を示している。え〜っと、部長が8で西田が4。美好先輩が6で美樹が9だったから、今んとこは俺が一番らしい。んでもって、お決まりどおり石にモヤモヤと文字が浮かび上がってくる。
「『密林の覇者との死闘』…?」
何じゃそりゃ。まあいい。どうせこれをやらなきゃ先に進むどころかゲームを終わらせられないんだ。
「そんじゃま、行きます…か…」
といったが、言うタイミングが少々遅すぎた。いつの間にか辺りは鬱蒼とした木々の立ち並ぶジャングルに変わっている。そんな場所で、誰かに言ったつもりの言葉がいつの間にか独り言になっていた。
「それにしても……」
俺は辺りを見回す。
「あっちぃ……」
さすが密林だけある。向こうは夏服がまだ肌寒く感じるようだったのに比べ、こっちは今すぐにでも全裸になりたいくらい暑い。おまけに俺の一番嫌いな蒸し暑い暑さと来ている。こりゃあ最初からすかを引いた感がムチャクチャするぞ。
「さて……」
俺はもう一度辺りを見回してみた。
だが、特にこれと言ったものなど無い。見えるのは木、木、木、木、木ばかりだ。テレビでしか見たことの無いような、とりあえず暑い地域に生えるというくらいの知識しかない植物があたりに生い茂っているだけ。おまけにその植物の蔦やら何やらが周りの木の枝に絡みついて枝のボリュームが増している所為で、太陽の光がよく射し込んでこず薄暗い。なるほど、この蒸し暑さの正体はこいつらの所為か。こんな日のあたらん場所じゃなあ。
だが、一つ引っかかる。俺はここで何をすればいいんだっけ。
たしか、何とかと死闘、とか書いてあったから何かと戦うのは分かるが、肝心の相手が見つからない。というか、死闘って時点でかなり嫌な予感がする。そんなことを思っていると、あることをふと思い出した。
「戦い……」
この間シンが言ったこと。自分のパートーナーになれ、だったか……。正直あんときはオーケーしたが……、いや、オーケーもしてないな、ただなんとなく流しただけで……。
今日にでも部活のときにはっきり断ろうと思っていたが、こんなことが起きた所為でまた聞くタイミングが長引きそうだ。
そしてまた、ふと考える。何で俺なのだ、と。
たしかに俺はあいつに関して深く関わり、知りすぎた面もあるかの知れない。それに幽霊やら化け物みたいな普通の人間にゃ見ることも出来んようなやつを倒したかもしれない。だが理解できない。思えば始めてあった時もそうだった。いきなり俺のところに来ての友達になって宣言。何で俺だったんだ。
それに始めて眼を合わせたときのあいつの顔。俺の夢に出てきたこと。何もかもが分からん。
「グルルルルルル……」
「へ……?」
そんな事を考えていたら、後ろからとんでもなく嫌な声が聞こえてきた。声が聞こえただけなのにすんげぇ怖い。いっきに後ろを向きたかったが、相手が出す威嚇のオーラ的なもので動きがトロくなる。やっと後ろを完璧に見ることができたとき、
「グウゥゥゥ……」
もう後ろの草むらから相手は出てきていた。喉を鳴らして臨戦態勢が整っているご様子だ。
「これが相手……?」
力無くそう言うしかなかった。
「グルルルルル……」
だって相手は虎だったんだから。
「グワオォォオオ!!」
「ギャアァァァァアア!!」
いきなりの奇襲をからがら避け、さっきの石の映像で見た部長のように動物との鬼ごっこが始まった。そもそも在り得んだろう、人間と虎との追いかけっこなど(部長もそうだが)。
「グワアァァァァア!!」
後ろを見れば虎がもうケツの辺りにまで来ている。絶体絶命だ。
どうも、松村ミサとです。
最近なんか一話に書く量が減ってるなぁー、と思い始めました。これからも頑張りますのでどうか長い眼で見てください。それでは今回のキャラクタープロフィールです。
キャラクタープロフィール No.03
シン=クロイツ
誕生日 5月12日
身長 170cm
体重 57kg
趣味 天体観測、散歩(飛行による)
特技 射撃、格闘技全般
苦手なこと 命令されること、偉そうにされること
好きなもの オムライス、遊ぶこと、騒ぐこと
嫌いなもの 過去
という感じです。前の回にやったじゃん!! と言われる方もいると思いますが、あれはあくまでも『久我真司』のプロフィールです。まあ、簡単に言えば『人間のときの設定』と言った感じです。共通点は誕生日とオムライスが好きというところだけです。またオムライス、こどもかっ!!て感じですね。
それではまた次回。