第10話 遊戯
前回までのあらすじ
美咲が拾ってきたと言う双六をやろうということになった超研部員一同。だが、サイコロを振った美咲は突如として消えてしまった……。
全員がただ唖然としていた。いや、たぶんそれ以外出来なかったんだと思う。
それはそうだろう。双六をしている最中に人一人消えたのだ。目の前で隠れもせずにいきなり消えるなど、どんな高名なマジシャンでも出来ないだろう。
「これ…なんかの冗談ですよね……」
「そ…そうだよね。部長のイタズラだよ、きっと」
坪井と美樹はそんな意見を述べているが、イタズラにしちゃ手が込みすぎている。いくら部長とは言え、たった一回のイタズラのためにわざわざ神憑り的なマジックの技術などを覚えたりしないだろう。それに原因はもう大体分かってるしな。
「シン……」
俺は隣に座っているシンに小声で話しかけた。
「ああ……」
向こうも小声で答える。こんなことできる人間はいない、なら答えは簡単だ。人間以外がやったに決まっている。
『ギャーー!』
「なんだ!?」
いきなりどこからか叫び声が聞こえる。
『ギャー! ちょ、なによこれ、ギャーー!』
「これ、部長の声ですよね」
「一体どこから」
美樹と坪井が辺りをキョロキョロと見回すが、部長どころか虫の一匹すら見当たらない。
『ギャーー!』
それでもいつも耳にするやかましい感じの部長の声が聞こえる。
「んっ!? ね、ねぇ、これ!」
「なんだ」
俺の隣に座っている坪井が俺の肩をガクガクと揺さぶる。
「こ、これ」
坪井はさらに俺の頭を掴んで強引に双六盤に顔を近づけさせる。後で殴ってやろうと言う感情を持ちながら、俺も、そしてそのやり取りを見ていた部員全員が坪井の示す場所を見る。
それはさっき文字が浮かび上がっていたゴール地点の石だった。さっきは文字のようだったが、今はどうやら違うものが移っているらしく、よく見えないが、何か動いているように見える。
「あっ!」
全員が完全なシンクロを見せる。
『いやーー!』
「部長!?」
みんなが見ている石の中には部長が映し出されていた。どこか木々の生い茂っている場所をスプリンター並みの速さで全力疾走している。
「ブォォオオオオオ!」
さらにその後ろからは巨大なイノシシが追いかけている。
「何だよこれ、どうなっちゃてんの?」
「もしかしてこのゲーム……」
今まで口を噤んでいた三好先輩が重々しく口を開いた。
「駒の止まった場所に書いてあることが本当になるんじゃないかしら……」
この場合、恐らくそうとしか思えない。
『その通り』
今度は石の中から別の声が聞こえてくる。
「誰だ!」
俺とシンはとっさに身構えて声の主に問いかける。
『そらよっと!』
石が突然光り出し、とっさに目を覆う。坪井のやつは驚いて椅子ごと後ろに倒れて頭を本棚にぶつけていた。
光がやんだ後、俺たちは目の覆いを外す。
「よっす!」
目の前にいきなり見慣れない顔があった。
「うおっ!」
慌てて手を振り回すがあっさりと避けられ、おまけに振り回した手を机の角に思い切りぶつけた。かなり痛ぇ。
「な、なにあなた?」
美樹の驚きの声で俺は痛む手を股にはさんでさっきのやつの顔を見る。
明らかに年下この上ない容姿と体つきをしているガキがそこに居た。白い半袖のシャツに赤のベスト、身長はここにいる誰よりも低いが、スラリと伸びた長い足、それを見せ付けるような半ズボンに褐色の肌。そんなジャリが長机の上に堂々と仁王立ちで俺らを見下ろしていた。
「お前は……」
シンが何か言いかけたが慌てて口を閉じる。今は全員の目の前だからな。
「いやー、どうもどうも」などと目の前にいるクソガキは抜かしていやがる。正直今すぐ机から引きずり下ろして、カチ殴って泣かしてやりたいとこだが迂闊なことはできない。人間みたいな形をしているが、どうせ人間では無いだろう。
「俺の名はアイール。以後、お見知りおきを」
気取ったように右手を振って腹の前に持っていき、深々と頭を下げる。知るか! んなこと!
「あなた、なんなの。部長に何したの」
「そうです! いったい美咲は何でこんなことに」
美樹と三好先輩が目の前のクソガキことアイーダに問いかける。
「何って……あんた達双六のルール知らない? 止まった場所に書いてあることは絶対っしょ?」
野郎は平然と言ってのけやがった。マジ殴りてぇ。
「そんな……じゃあ、ここでこのゲームはやめます。だから美咲を戻して」
三好先輩が半分泣きながらアイールに言う。
「やめるのはいいけど……あそこにいる彼女を戻すことはできないなぁ」
「そんな! なん……」
「なんでだ!!」
あまりに腹が立ち、俺は三好先輩の声を押しのけて大声で怒鳴った。
「もう彼女はゲームの世界にいるんだ。終わらなきゃ出てこれないのは当然でしょ?」
そんな決まり知ったこっちゃねぇ!
「わっかんない人だなぁ。これはゲームなんだよ? ルールに則ってこそのゲームでしょ」
そう言ってアイールは西田にサイコロを渡そうとする。西田はかなり怯えていた。
「助けたきゃ誰でもいいからゴールしてこのゲームを終わらせりゃいい。次は君だろ?」
その顔には無邪気を装っているが、とてつもなく邪悪なものを感じた。
そして、西田は震える手でサイコロを受け取った。
どうも、松村ミサとです。
今回はキャラクタープロフィールみたいなのをやってみようと思います。それでは早速、最初はこの方!!
キャラクタープロフィール No.01
草薙達也
誕生日 10月11日
身長 173cm
体重 59kg
趣味 読書 (マンガ)、テレビ、ゴロゴロすること、寝ること
特技 特になし
苦手なこと 理数系(本人曰く、存在が理解できない)
好きなもの うまい物、平穏
嫌いなもの 悪夢
所属 月白高校一年A組
と、まあこんな具合です。次回からの後書きもしばらくこんなのです。あと今回本編短くてごめんなさい。
ではまた次回。