第3話 友情と愛情…?
ピピピピピピピピピピ…
「ん~…っ」
目覚ましの激しい自己主張にて目が覚める。
もう、起きて準備しないと。
着替え、準備をこなして朝食を作る。
今日の朝食はご飯、味噌汁、玉子焼きに味付け海苔。Simple is best.まさにその通りだと思う。
母さんは海外に働きに出ており基本一人暮らしだ。
今度はいつ帰ってくるのだろう。もう半年は帰って来てないがたまに連絡は来るから心配はしていない。
家を出る前に父さんに挨拶をする。
父さんはコーヒーが好きなので供えて手を合わせる。
そう、父さんはすでに他界している。病気で苦しいときも僕が行けばいつも笑顔で迎えてくれた。
気がつけばもう5年になる。父さんは優しく、多くの友達がお見舞いに来ていた。
僕にもそんな友達が出来るのだろうか?
そんな風に思いながら立ち上がる。
「行ってきます、父さん」
和室の戸を閉めると線香の煙がふわっと揺れた。
時間を見て余裕があるのを確認する。
学校までは自転車で10分くらいだ。
――――――――――――――
学校に着くと吉川先生と廊下で会った。
「吉川先生、おはようございます」
「おぉ、おはよう。昨日はよく寝たか?」
「放課後に難しいプリントやったおかげでぐっすり寝れましたよ」
ちょっと悔しいから言ってみた。怒られるかな?
吉川先生はニカッと笑って言った。
「なら今日は集中出来るな。問題当てるからな~?」
「えっ」
そう言うと吉川先生は職員室に向かっていった。
…言わなきゃ良かったなー…。
吉川先生には屋上の事は話していない。
吉川先生は先生の中でも一番話しやすいけど、これはまた別だ。
自殺未遂なら警察にも連絡いくし、何より人と話すのが苦手な雪村さんに負担をかけたくないからね。
教室に入ると僕の隣の席には雪村さんがすでに座っており、何やらスマホの画面をじーっと見ていた。
よし!昨日友達になって伝えて話せるようになったんだし朝の挨拶しよう。
「雪村さん」
「ひゃっ!」
後ろから話しかけたのが悪かったのか雪村さんはビクビクッ!と身体を震わせた。
そして恐る恐る振り返って僕の顔を見て安堵と同時に赤くなってまた前を見てしまった。いきなり話しかけたから怒られたのかな…?
そう考えているとクラスメイトがわらわらと教室に来ていた。とりあえず僕も座ろう。
席に座って教科書を机に入れてると小さな声で
「ぉ、おはようござぃます…」
と雪村さんが言った。
「うん。おはよう雪村さん」
その会話を聞いたのか前の席の佐々原さんが僕に話しかけてきた。
「天宮くん。私、雪村さんが話してるとこ初めて見たよ!仲いいの??」
これは、自信を持って話せる。よーし!
「雪村さんは友だ『私の大切な人です!』
……ん…?
雪村さん、今なんと??
大切な人……?友、達…だよな??
賑やかな朝のクラスが静かになっていた。
佐々原さんは一瞬ポカーンとしてから雪村さんに言う。
「えっ!?雪村さんと天宮くんはそーゆー関係なの!?」
雪村さんは顔を赤らめてモジモジしたあとに頷いた。
れれれれれ、冷静になるんだ。天宮雄一。
とりあえず佐々原さんから誤解を解かないと…!
「佐々原さん!誤解だ!これには訳があって―――」
「……誤解…って…?」
さっきより低い声で雪村さんが言う。
隣を見ると雪村さんの目からハイライトが退場していた。…ヤバイ。
「昨日私に言ってくれたことは嘘だったの…?」
「昨日…あっ」
――――――自殺するくらいならその命、僕に下さい!
あれしかないだろう。
「あー、なんと言うかその、言葉のあやと言いますか…」
「い、いきなり名前で呼ばれると恥ずかしいよ…////」
あぁ…こちらに越しての初めての友達と喜んでいた朝の僕よ、さようなら。
雪村さんから伝わる 熱い視線を気づかないふりをして窓の外を見る。
今はこの青空が辛い。いっそ僕の心のように曇天なって欲しい。
そんな事を思いながらため息をこぼす僕だった。