1章その6
お待たせしました。
ほんといったいなあ…どうして千鶴くんは手加減というものを分かってくれないのかなぁぁぁ。」
伊吹を一発殴らせて頂いた。あーもう、こんな奴に能力なんて使うんじゃなかった。少しは気分が落ち着いてきたので冷静に、慎重に、直ぐに行動しないように、彼が聞いた内容を聞くことにした。
「まず、結論から言うと、彼女は確実に救える。」
「おお、まじか!!それなら話は早いな!」
「ただ少し問題があってね…。」
伊吹の顔が少し曇った。確実だと自分で言ったのにそんな反応をするなんて。少し戸惑ったが、今は彼の考えをしっかり聞かねばならない。
「ちなみに、問題というのはどんなことなんだ?強すぎるとかだったら夜白で対応可能だと思うんだが。」
「んー、極端に強いってわけじゃないと思うんだ。寧ろ全然。さとりに関してはね。」
「さとりに関しては、って、憑いてるのはさとりって紬に言ってたじゃないか。」
「あの時点ではさとりのみだった。と言うのが良いのかな?実に珍しい、というか新しい。」
「どういうことだよ。早く話せって。」
「半妖、って知ってるかい?」
半妖。半分妖怪。よくあるのは人間と妖怪のハーフみたいな感じなのだろうか。たまにそういうのに出くわすことは有るが、特に害はないし、寧ろ良い奴が多くて俺は好きな方なんだが、半妖はかなり昔からいるから別段新しい訳でもない。なら何故、半妖なんか…
「似たような事が起こっている。妖怪のハーフだ。」
「それは妖怪なのでは?」
「妖怪と、動物のハーフだよこれ。さっき出したヤツ、あれ、浅葱って言う全能の神みたいな存在なんだ。その人に聞いたんだが、さとりと蛇って答えてね。ひとつでは無いのかと聞いたら2つ、“人の手によって”憑けられた。と言っていてね。」
「人の手によって、つまり、人工的に作られた妖怪なのか?」
「遺伝子組み換えみたいな手法なのだろうか?とにかく、これは自然発生なものじゃないから、未だに対処法が見当たらないんだ。きっとこれには裏がある。誰かが裏で糸を引いてるんだが、全く理由がわからんな。何なんだろうか…。」
人工の妖怪なんて初めてだ。妖怪は人が作れるものでは無いからな。人の考えや行動が妖怪に繋がっても、人が意図して作るものでもないからな。現代科学というものは如何なものか。しかし、目処が立たないというのは大変だ。早急に対策を立てて紬を救わなくてはならないというのに。さとりは偶発的な事故に弱いからそれは作り出せばいいのだが、蛇を持つとなるとまた厄介だし、なにより紬に被害が及ぶ。どうするべきなのか…。
「わらわが一肌脱ぐかの…。」
「え、それってどういうこと?いいの?」
「そういう脱ぐじゃないわ。あの小娘からその人工の妖怪を引きずり出そうかと思うての。」
「そんなこと出来るのか?相手はお前のことを知らないのかもしれないんだぞ?人工なんだぞ?」
「何が人工じゃ。どうせベースはさとり、いくら弄った所で根本的なところは変わってないはず、と思いたいところだ。」
引きずり出せたとしてその後どうするよ。夜白に紬を任せて僕が仕留めなきゃいけないんだろ。てか人工の妖怪にこの手は効くのか?いけるか?
「当たって砕けろ、ってか?」
「あわよくば倒せる、くらいの気持ちじゃ」
「倒す時間はほかの妖怪と違っていつでもよさそうなんだ。だから七瀬さんさえよければこっちの世界に連れてきて、最大限の君らの力を引き出して、周りの影響もなしにして闘いたいからね。」
「数日後何か動きがあれば夜白投げるからよろしく頼む。」
「何故わらわがそちに投げられなければならぬのか!直々に向かってやるわ!!」
「それは有難いね。頼んだよ、千鶴君。」
こうして七瀬紬に取り憑いた人工の妖怪の討伐作戦が開始された。
次回、遂に作戦開始です。