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1章その3

今回陰陽師君が登場します。サブストーリーで彼についても掘り下げるのでお楽しみに

拝啓、お母さんへ。僕はいま空にいます。


整理しよう。

美少女になった夜白、クラスメイトを助けた僕、そして、その3人を持つ着物の仮面のやつ。

仮面のやつについては僕から少し説明しよう。彼、まあ彼女でもあるその人はいわゆる“陰陽師”という部類の人間だ。陰陽師っていったら最近はどこぞのカップルが怪異に立ち向かったり、何とかしますけれど、そういう人じゃあない。もちろんそっち方面の陰陽師もいなくもないが。

というか、大抵の陰陽師はそういうやつだ。トップがいて、守るべきものや人がいて。だがこいつは違う。仕事ではなくあくまでも私事である。

ただ陰陽師という響きに、ただ憧れて、憧憬れた。

いうなればただの痛いヤツ、なのである。もう一つ言うと無職だ。


「紹介がひどいよ千鶴君。ボクはれっきとした陰陽師だよ?だからこうして空を飛んでいるんじゃないか。」


「空を飛ぶことのどこが陰陽師であることの証明になるんだ。鳥かもしれないだろ」


「遠回しにボクのことチキンって言ったんだろ。落とすぞ。」


落とされたらたまったもんじゃねえよ。と、少し説明したところでこのチキンの本拠地が見えてきた。空に浮かぶゴミのようなもの。


「島だよ。やめてよ、そんなに僕の身の回りのことを胡散臭いように説明するのさあ。

 僕はこの島気に入っているんだよ?」


「気に入らなかったら殺す」


夜白がぼそりと呟いた。わらわが作ったんじゃ、と鼻高々に言ったが、僕が島のようなものといったのも理由があってだな。島というには小さすぎるんだ。いつみても塵のような塊で、とても島には見えない。


「さて、千鶴君たち。行こうか。」


 さあ頑張ろう。ここからが勝負だ。このチキンに手を借りねばならない。それをいったいどのようにして負けた気にならず、あくまでも借りを返したかのようにふるまえるのか。これが僕の勝負だ。


「そんなもんしなくてよかろう。頼んだぞ、元主よ。」


「夜白!そんな風に軽々しく言うものじゃない!」


「しょうがないから手を貸してあげよう。というか君がボクに頼ろうとしたんだろう?」


返す言葉もない。ということで僕たちは、“不本意ながら”(重要)こいつの手を借りてこの塵の中に入っていった。塵の中はドラ〇もんのタイムマシンのようにぐにゃぐにゃで、いつきても酔いそうになる。



「千鶴君、私、学校に行こうとしてたんだけど。ここどこ?ホテル?」


6時間の気絶、開口一番。僕は七瀬紬に叱責された。


「その辺の説明はボクが受け継ごう。」


「誰ですか?あなた。不審者なら通報しますよ。」


紬はスマホを手に取った。こあいこあい。

 

「不審者じゃあないよ!ボクの名前は伊吹。立花伊吹だ。24歳、陰陽師を営んでいる。今日は君を救いに来たんだよ、七瀬紬さん。」


「たくさんの質問があるのですが。聞いてもいいですか?」


スマホを片手に通報の準備をしたようだが、圏外だったので何もできなかったみたいだ。それにしても、ほかの人に対するより言葉がきついなあ。不審者だからかな。


「そんなにたくさんは答えられないよ。警察や探偵なんかと同じで、守秘義務とかあるからね。そうだなあ……名前に乗っ取って7つの質問を受け付けようじゃないか。」


おおっと、女子に甘いぞ、こいつ。ふざけるな、僕の時は2つしか聞けなかったというのに。


 Ⓠ1 女性ですか、男性ですか。

 Ⓐ1 どちらでもないよ。一人称はボクだし、声も低いし、服装もどっちつかずな専門の服だ。そのくせ顔はまんま女性だから、一般の人には女性ということにしている。ボク、特殊だから性別ないんだよね。聞きたい?


 やっぱり、傍から見たら女性に見えるよなあ。色白の肌にぱっつんの黒い前髪。床に着きそうな長い髪をおろして、黒の衣冠。古き良き日本人みたいだけど、目の色が真っ青でフランス人形みたいなんだ。浄眼なんだっけ。


 Ⓠ2 陰陽師とは。

 Ⓐ2 普通に陰陽師だ。色々する神職の。


 色々するって、特定のことしかやってないし、興味のある者だけをえり好みして当たってるだろ。


 Ⓠ3 どうして私の名前を。 

 Ⓐ3 知っていたから。


「ちょっと待った。なんでお前が知ってるんだ。横槍を入れるみたいで申し訳ないが、僕はお前に彼女のことを話した覚えはないぞ。彼女がねていた間も!」


ごめん、七瀬。そんなにイラついたような目で僕を見ないでください。その冷気で凍死しそうだ。


「あ、言い忘れておったが、わらわが連絡しておいたのじゃぞ。お前さんが明日から三連休だの都合よく今日は金曜日だのとほざくから読者は今何曜日かわからなくなるだろうと思って。話をしたのは木曜日、今日は金曜日、つまりこいつはサボろうとしていたわけなのじゃよ。制服でな。そんなことはそちが許してもわらわが赦さん。」


「かっこよく自分がやってあげたんだ、感謝しろ、みたいなノリになっているけど、実際はサボりなの変わってないからな。意味はないんだからな!僕の勝ちだ!!」


まあ、サボろうとしたのは事実だし、実際感謝してるけれど、個人情報の取り扱いがざるのようだぞ。網目なんてねーだろってくらいに。


Ⓠ4 ここはどこ。

Ⓐ4 僕の家。空に浮かぶ小さな島。そんな風には思えないだろう?こんなにも広い応接間で話してるしねえ。ほらみて?天井に書いてある竜の絵がきれいだろう?楽しむといいよ。


それには語弊があるぞ……。ここ、時空の歪みの空いたところだから。ここは実は異世界なんだなあ。ある種の人間しか入れないし、出てこれない。やっぱり、七瀬もそういうものに取り憑かれたのだろう。


Ⓠ5 もう七つも聞かなくていいです。最後に一つ。


   助ける、とは。 


Ⓐ5 もういいのかい?ボクの家族構成とか、彼女についてとか、聞かない?聞かないか。ああ、質問の答えね、わかってるよ。少しそれは言ったことが違うな。ボクは助けるとは言っていない。救う、といったんだ。


「救う、助ける、何が違うんですか。要するに私を助けることには変わりないんでしょう?」


「君自体は救けないよ。ボクが助けるのは最上千鶴、ボクは君を救うだけ。彼の手によって。」


「千鶴君の、手?」


僕の、手。ほんとに手なわけではないが、まあ、僕が苦労しなくちゃいけないんだ。

僕の簡単な説明、しなきゃなあ…。

僕はひょんなことから夜白に憑かれたわけだけど、何もいきなり憑かれたわけじゃあない、そんなに詳しくは話さないが、僕はある能力を移植されたちょっとした異端児、の部類なんだ。一般家庭に生まれた僕だが、どうやら生まれる前に、神様が相当性質の悪い能力を僕に植え付けたみたいなんだ。いわゆる“妖怪”や“神”、“化学では証明できないモノ”を視認することができて、意思疎通だったり、いろいろできちゃう能力。そいつのせいでどれだけの人と離れたことか。男友達には気味の悪い黒い塊がくっついていて、それを祓ったらいじめられたといわれた。

ある少女、この前聞いた話によるとどうやら僕のことが好きだったらしい少女にも、異形の羽をもったピンクの妖精がいて、それをかわいいね、といったら不審がられて避けられたり。

最近知ったんだよ。この陰陽師に会って、初めてそれを知って、激しく絶望した。自暴自棄になった。一生これと付き合わなくてはならないのかと。けれどこいつは何もしなかった。


根本的な解決は。


現にこの能力、今も使っている。一生のお付き合いらしい。どう救ってくれたんだ、こいつは。と思うだろう。救いの手。それが夜白、お狐様だ。僕はこの能力のせいで妖怪にたくさん会う。

いい妖怪にも、

悪い妖怪にも。

よくないものにも、

よいものにも。

お狐様も同じだ。特に夜白、九尾の狐さんのくせに幸福の独裁者だの、世界を統べる王だの、ルールブレイカーだの、世界ではいろいろ言われるが結局のところ全体のリーダー的存在であって、そういうものを引き付ける力がもともと備わっている。だから、そういう物と遭わない、わけにはいかないね。相乗効果みたいに、その効果は格段に、絶大に上がる。

けれども、彼女がいることでできるようになったことが一つある。それは“抵抗”ができるようになることだ。

今までの僕は、あいつらがいたらいたで無視をするだとか、少し話して帰ることを促す、または仲良くなったらいっぱい話す。そんな感じだったから、その時はたくさん厄介ごとに巻き込まれたし、いろんな人に迷惑をかけた。だが、抵抗ができるようになったことで、そんなこともなくなる、わけではないのだが、最小限の被害には抑えることができるようになった。僕にとってはギブアンドテイクだが、あの人たちにとってはそんなこともないみたいだが。あいつらのことはあまり気にしないでいこう。


「ちなみに、君はこの正体を知りたいかい?」


「勿論です。でも、千鶴君に危険が及ぶようなら助けていただかなくて結構です。」


 強気に出る七瀬さん、ありがたいんだけど、そんなことを言ったってあいつは変わらない。


「危険?大丈夫だって。とりあえず君に憑いたものは“さとり”だよ」


「さとり、ですか。」


とりあえず名前は特定できた、あとはこのスマホで調べてしまえば…。と、スマホを取り出した瞬間だった。あいつが僕の隣にすっと移動して囁いた。


「作戦会議がしたい。今夜は君の家に泊まらせてもらうよ。ということで、七瀬さんとは明日の夜に待ち合わせてもらってもいいかな?すべて明日に決着をつけよう。」


「わかったよ、切り出せってことだろ?」


「七瀬さん、とりあえず僕たち帰って作戦練るからさ、いったん町に帰ろうぜ。それで、明日の夜、さとりを追い出そう。」


「うん、それはいいんだけど…。」


彼女は口ごもった。後でメールで聞いておこう。


「それじゃあ、二人を帰してあげるよ。このゲートくぐっちゃえばすぐ家の前まで行くからさ。ばいばい、七瀬ちゃん!明日の夜にまた会おうじゃあないか!」


「はい、ありがとうございました。」


彼女はいつも先生にするような会釈と、形だけの言葉を口に出した。そんなに毛嫌うような奴ってわけでもないんだけれども…。そういえばここは圏外だから調べるも何もできないじゃん!


ここまでよんでくださりありがとうございました。次回、作戦会議。お楽しみに!

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