第2話 神様って想像してたのと全然違う
意識を取り戻した黒崎は静かに目を開けた。目に入ってきた空間は純粋な青という言葉がふさわしい程それ以外何もなく、どこまでも向こう側へ歩いていけそうなそんな場所にいた。
「ここは天国か?」
「ブッブー。はずれー」
黒崎の独り言に突如返答が背後より返ってきたので慌てて振り向くとそこには赤いアロハシャツ、短パン、ビーチサンダルおまけに金髪でサングラスと来た得体の知れない若者がそこにはいた。
「やあ、気分はいかがかね?」
やけにフレンドリーに話してくる金髪の若者に戸惑いつつも黒崎は何とか返事をする。
「気分は悪くはないですね。私は死んだのですか?」
「……そう、あれは不運だったね。まっさか机の角に頭ぶつけて死んじゃうなんてさ。地球上、運の悪さ下から362万1001位だよ(笑)」
そういうと笑いをこらえきれずお腹を抱えて笑い始めた金髪の若者を見て黒崎は若干イラッとした。
「慰めてるのか貶してるのか分からないんですけど。そもそもその順位も高いのか低いのかさえ分からないです」
「ぷくく、いやぁごめんよ。勿論かわいそうに思ってここに来ている訳さ。じゃあ本題に入るけど君、人生を別の世界でやり直すのとこのまま魂消滅するのどっちがいい?」
黒崎は突如提案された内容に頭が回らない。
「ええと、それはアンケートか何かですか?」
やれやれと金髪の若者は頭を抱える。
「君、鈍いねぇ。僕がアンケートとる為にわざわざこんな所に姿を現すと思っているのかい?僕は神だよ、転生神。だから君に選択権を与えているのだよ」
「はぁ、では魂を消滅させてください」
神と名乗った男は目を丸くした。そんな返答は予期していなかったのであろう。神は何が言いたいか分かったという風なポーズをとった。
「そっかそっか、そうだよね。分かったよ君の言いたいことは。ボーナススキルがほしいんでしょ?転生される者には必ず付与されるからそこは大丈夫だよ」
「いえ、そういうのいいですから。消滅させてください」
「本当にいいのかい?夢と希望のあふれる冒険ができるんだよ?」
「……いいです」
「スキルの選び方によっては無双だって覇者だって夢じゃない」
「……いいですって」
神様は肩をわなわなと震えさせると黒崎をぶん殴った。
「バッカモ―――――――ン!」
いきなり殴られて訳の分からない黒崎は意味が分からないといった表情で放心しているがかまわず神様は話を続ける。
「それは本心ではないだろう?満足できなかった何かがあるだろう?」
黒崎は死んでも痛みはあるんだなと殴られた頬を擦りながら答えた。
「もういいんですよ。僕はプログラムに人生ある意味かけてましたからね。また違う事をやるっていうのはちょっと……ね」
「ほう、だったらもう一度プログラミングをやればいいじゃないか」
「……でも、もう人の顔色を伺ながらコードを書くのは嫌なんだ。確かに好きなのは認めるけどさ。」
神様はそれを聞いてニンマリ笑った。
「だったら、君のスキルはプログラミングスキルだ。これでどうだい?君は死んでるから最初から人生のやり直しになっちゃうんだけど習得できる時間はたっぷりあるからいいだろう」
そういうと神様は地面に手を付けるとまばゆい光を放つ魔方陣が浮かび上がった。
「よし、じゃあ行っておいで」
そういうと神様は黒崎の背中をグッと魔方陣の方へと押し込んだ。
「ちょっと待って!スキルの使い方とか聞いてないよ」
「ステータスオープンと唱えなさい。そうすれば後はわかるだろう。グッドラック」
神様はそういうと親指をぐっと立ててドヤ顔で黒崎を見送った。
黒崎の体は大きな光に飲み込まれやがて光とともに黒崎の姿も消えていった。