『桜舞う季節は、別れもあるけれどね、新しい出会いが花びらの中に隠れてる(後編)』
『料理による武力介入こと、反逆の料理祭り』も、いよいよクライマックス。
数ある猛者を薙ぎ倒し、生き残った二人の料理人。
ご飯の上に、いろいろかけることに定評のあるフリーター少女、レビン・ハチコ。好きな食べ物は、パン。特技、ご飯を炊くこと。
多重人格を武器に勝ち上がった、今作の主役であり、人として軸がブレている少女、越島ジェリ(人格は、京都美人)。好きな食べ物は、日本で生まれた料理なのに洋食のオムライス。特技は、中○製品と、国産を見た目で見分けること。
今、激しく二人の料理が、火花を散らす。
場面は、スタジアム内。 マイクを握る司会者のゼファーナ・春日は、決勝戦のテーマを公表しようとしていた。
「決勝戦の料理のテーマは、魚だ!!」
司会者はスタジアムにある食材の中から、一つの鯖を片手に叫んだ。
それに答えるように、アリーナ席からの観客が盛り上がり、様々な声が上がった。
「うぉー!魚料理かよ!」
「魚といえば、焼き魚、煮魚、刺身など、様々な種類があるぜ!」
「ここ、日本は魚料理においては、世界の頂点に立つ国!まさに、決勝戦にふさわしいぜ!!」
なぜか、観客たちが説明口調で盛り上がっていた。
だが、魚と聞いて、レビンは複雑な表情をした。
そう彼女が、今まで作ってきたのは、とりあえず、簡単にご飯にかけて食べるものばかり。
それ故に、手の込んだ料理など作れない。魚の調理などしたことのない彼女にとって、今回のテーマは難儀だった。
(しまった…)
そんな彼女の様子を、遠くのキッチンから見つめる、ハイカラ・ジェリ。口元には、冷たい笑みが漏れている。
(残念だったな…。レビン・ハチコ…。貴様などに、魚の調理は出来やしないさ…。しかも、私は魚料理は大得意。この勝負は、もらった…)
と、冷ややかな目線を、ジェリはレビンに送る。
カーン!!
レビンの戸惑いを無視し、非情なゴングが鳴り響いた。
制限時間は限られているため、駆け足で二人は、食材を取りに走る。
レビンは、なにを作るべきか悩みながら、手当たり次第に魚を選ぶ。
そんな彼女と反して、ジェリは、テキパキと狙いを定めた食材を手に取る。
「さぁー、始まりましたねー。ちなみに、実況は司会のワタクシ、ゼファーナ・春日と、解説者は、灰汁料理学校講師、黒鮪黒陰先生です。よろしくお願いしますー」
「よっ、よろしく…、お願いします…」
と、実況がスタジアム内に響く。
「ところで、黒鮪先生は、料理番組をなさっているそうで」
「はい…」
「先生の料理番組、深夜にある画面の砂嵐よりは、面白いですよね」
と、実況席が戯れている間に、ジェリはフグを取り、キッチンで調理を始めた。
「おおーっ!と、越島ジェリ選手は、高級食材である、フグを捌いております!もし、あれがサバだったら、サバをさばくと、黒鮪先生の料理番組より、下らない駄洒落を言うところでした!!」
手慣れた包丁捌きで、ジェリは綺麗にフグを捌く。
彼女はフグ刺しを作ろうとしているのだ。
関係ないが、フグ刺しを『てっさ』と呼ぶのだが、その単語で、インターネットの画面検索すると、なんで、あんな検索結果になるのだろう。
一方のレビンは…。
「あーっ!と、レビン選手は、魚を捌くどころか、ご飯を炊き始めたぞ!」
なぜか、彼女は普通に米を炊き始めた。ただの白米を。なんもせずに。
「一体、彼女は、なにを作ろうとしているのだろうか!ええーい、今宵は、料理のエロスタイムだぜ!」
と、司会者が一人で盛り上がっていた。
その横で、解説者の黒鮪黒陰は、DSの脳トレをやっている。
二人は、様々な調理法で、料理を完成させていき、ついに、制限時間終了の合図が鳴り響く。
ついに、決勝戦の料理は完成した。
「さて、ついに最強の料理人を決する時となりました!」
完成した二人の料理は、審査員席に送られた。
まずは、ジェリの料理。
見事な包丁捌きで作られ、見た目も鮮やかなフグ刺しのフルコース。
この繊細かつ、美麗なフグ刺しは、審査員だけでなく、観客たちまで魅了した。
「ひやっほー、美味そうだぜぃ!」
「もし、目の前に、芸能人のガッキーと、あのフグ刺しがあって、どっちか、選べと言われたら、間違いなく、ガッキーを選ぶぜ!」
と、異常なまでに観客のテーションが上がっていた。
一方のレビンの料理には審査員たち、みな戸惑っていた。
彼女の料理は、やはり、ご飯の上になにかが、かかっているだけであった。
審査員の一人である、焼野原九乃助は、長い付き合いであるレビンが作った料理が、なんなのかを見抜いた。
「げげぇーっ、これは、ただの煮干しかけご飯だ!しかも、これは、なんの特徴もない市販の煮干しを、新潟県産の米を、ただの炊飯ジャーで炊いただけのご飯に乗せただけだ!!」
あまりに悲惨な周囲の反応を気遣ってか、彼は無理にテーションを上げて言う。
しかし、虚しくも、空回るだけだった。
しかも、新潟県産ではなく、新潟県の上の県、山形県産の米だった。
もう、悲しいくらいに勝敗は見え透いていた。
「この勝負は、うちの勝利やね…。色なし、フリーターの小娘ちゃん…」
京都弁の色っぽい喋り方で、ジェリはレビンを嘲笑う。
そう言われ、レビンは…。
「あんたも、フリーターだろが…」
そして、運命の審査員の実食による審査が始まった。
数分後…。
ピーポ、ピーポ
スタジアム内に、担架を持った救急隊員たちの姿が…。
担架で運ばれて行くのは、青ざめた顔をした審査員たち。
「九乃助さん!死なないで!!」
泡を吹いて、白目を向いて、担架に運ばれて行く、九乃助。レビンは、彼の手を泣きながら握る。
そして、その脇には、警官から手錠をかけられたハイカラ・ジェリ…。
一体、なにが起きたのか…。
司会のゼファーナ・春日が現状報告をした。
「えー、大変永らく、お待たせしました…。たった、今、起きた現状を説明と致します…」
静まり返った会場に、司会の声が響く。
「越島ジェリ選手は、調理師免許を持ってなく、フグを調理し、しかも、フグの毒を取り除いてなかったため、それを食べた審査員方が…」
こうして、決勝戦は勝者なき虚しい結果となった…。
越島ジェリは、また逮捕されたとさ…。
みんなも、資格、ライセンスなしに、フグを捌くなよ!




