第7話 出会い
その里には様々な種族が暮らしていた。
エルフだけじゃない、他の種族もいたのだ。
ただ、雰囲気がどこか懐かしい。
まるで人間の村にいるようだと錯覚してしまう懐かしさだ。
ここには平和が存在しているのが感じられる。
その安心感が、懐かしい感じに繋がるのだろう。
そして住んでいる者達のほとんどが、完全な人型だ。
一部違う種族に見える者もいるが、みな表情は穏やかに見える。
殺伐とした雰囲気ではないのだ。
俺を持って戻ってきた2人を迎える里の者達。
蒼髪の言葉を聞いて、里の者達の顔色はあまりよろしくないように見える。
ただ白銀髪は豪快に笑い飛ばし、蒼髪の背中を叩く。
そんな2人の掛け合いを見て、みんな安心していくようだ。
そして、俺にとって運命の出会いがやってきた。
何やら話し合うみんなの中に1人の女性がやってきた。
彼女は、この白銀髪の男によく似ていた。
シルクのような白銀髪のショートカット
美人でちょっときつめに見えるけど、笑うと笑顔が本当に可愛らしい
黒目に桃色の唇
健康的なちょっと薄めの褐色の肌
年齢は18歳ぐらいだろうか
男物と思われる黒を基調としたロングロートの軍服のような服を着ている
美人で可愛い男装麗人だ
胸はボインではない
でも美乳だな、Dってところか
スラリとしたスタイルからでも、鍛えられた身体の強さが感じられる
そして手に持つその剣は……いや剣ではない、刀だ。
この世界に来て刀なんて初めて見るな。
白銀髪の彼女は、おそらく父親であろう男に話しかける。
すごく嬉しそうに。
隣にいる蒼髪にも礼儀正しく、尊敬の眼差しを向けている。
父親から何か話を聞いて嬉しそうだ。
そして自らの刀を持って見せると、まるで自分も戦える! と言わんばかりだ。
それを見て蒼髪が、彼女を咎めるように注意? しているのか、彼女はしょんぼりだ。
それを見ていた父親の白銀髪がまた豪快に笑う。
笑って、俺を彼女の目の前に突きだした。
彼女はきょとんとしている。
父親から俺を渡されると、手に持っていた刀は父親に取られた。
声をあげて抗議する彼女。
父親はこの刀はもともと俺の物だとでも言っているのだろう。
彼女の抗議に取り合わない。
ぷ~~っとほっぺを膨らませて不満顔で俺を見つめる彼女。
む? ……なんだよ。
その不満顔はなんだよ!
ちょ……俺のことただの棒だと思ってるでしょ?
こんな棒なんていらないと思ってるだろ!
こんなに怪しく黒く光ってる棒が、ただの棒なわけないだろう!
ちょっとでも俺で戦ってくれたらすぐに分からせてやるぜ!
ヒィヒィ言わせちゃうぜ?
もう、それは息もつかせないほどに、言わせちゃうぜ!
あ! 俺を持ってクルクル回すんじゃない!
軽く扱わないでよ! これでも数々の修羅場を乗り越えてきたのよ!
あ! 俺を指先に乗せてバランス取るんじゃない!
悔しい! こんな扱い! ビクンビクンしちゃう!
お互い不満顔の中、見つめ合っている(俺が一方的にそう思うだけだけど)と、蒼髪が彼女に何かを伝える。
すると彼女は驚いたように俺を見つめる。
そして指さして、「え? これが?」といった感じで信じられないような顔をしている。
半信半疑のまま、彼女は俺を強く握りしめた。
「持ち主が変更されました。ステータスがリセットされます」
俺を自分のものにするという意思を持ったようだ。
俺はすぐに闘気スキルを取り、レベル1で出せるありったけの闘気を身に纏って見せる。
俺が纏う闘気に驚いて目が点になる彼女。
どうだ! 見ました? 見ましたそこの彼女さん?!
棒を馬鹿にしちゃいけませんよ! 棒だってやれば出来るんです!
俺の闘気を見て納得したのか、彼女は俺を持って出て行く。
歩きながら、俺をクルクルするのをやめないけど。
そして向かった先に待っていたのは、2人の女性だった。
1人は、綺麗な黒髪の流れるようなストレート
ルビーのように真っ赤に燃える紅の瞳
可愛らしい顔立ちに、肌色は日本人のような黄色
身長は男装麗人の彼女よりもちょっとだけ高め
歳は男装麗人と同い年に見える
そして見事に実った二つの胸……Fはあるだろう
髪に隠れるように頭から生えている2本の角
俺の知識の中で彼女は「鬼」と呼ばれるだろう
チャイナドレス?と言えばいいのか、白色を基調として赤色も入ってる
深いスリットがセクシーだ
ただ上半身はベアトップというのだろうか、その見事に実った胸から上は何も隠していない
首筋、鎖骨、肩、そして鍛えられながらも美しい腕が丸見えだ
その丸見えの腕の先にある手は……指先が露出された黒いレザーグローブで包まれている。
もう1人は、美しい金髪のゆるかわウェーブ
吸い込まれそうな青い瞳
肌は透き通るような白
身長も年齢も男装麗人と同じぐらいだ
そしてこれまた見事に実った二つの胸、チャイナ服の彼女より大きい
ただ服装が、アラビアの踊り子が着るような水色のセクシーな服だ
彼女自身の雰囲気もまさに妖艶……エロティックだ
顔立ちは、可愛くも見えるし、綺麗にも見える、表情豊かで次々に違った顔を見せる
そのどれもがエロティックに見えるから、まさにエロスそのものだ
しかも、その手に持つ武器と思われるのが、鞭
ドM男がここにいたら、大変なことになりかねん。
彼女達3人は、男装麗人が持つ俺を見て何やら話し始めた。
友達2人に棒のことでからかわれているのか、彼女は何か必死になって抗議してる。
そして俺を振ってみる。
俺はありったけの闘気を纏う。
闘気を纏った棒を見て、目が点になる2人でした。
まったく!闘える棒だっているんですからね!
さて、2度目のこの異世界。
やっと完全人型の持ち主に会えたところで、この生意気な持ち主様の名前を探ることにした。
話している言葉は、地上世界でニニ達が話していた言語と同じように思える。
……いや、思えるだけで実際には分かりません。
大ちゃんと話せるようになってから、こっちの世界の言葉を大ちゃんから習って覚えようと思ったこともあったけど、そもそも大ちゃんは忙しい。
それに、俺自身のやる気もあまりなかった。
言葉を覚えたところで、俺から話しかけることは出来ないのだ。
何を話しているか分かることはよいことだし、その情報から俺も様々な考えや、心構え的なものは出来る。
出来るけど、それはあくまでも俺の自己満足の部分が大きくなってしまう。
そんなことに、労力を使う必要もないだろうと思い、言葉の勉強はまったくしなかったのだ。
勉強はしなかったけど、それなりに言葉を聞いていれば、聞き取れる力はついてくる。
名前を表す音だけを拾えばいいのだから。
父親達との会話、3人での会話を聞いて俺は必死に彼女達の名前の音を拾った。
その結果
男装麗人 → アーシュ
チャイナ服 → ベニ
エロス → ラミア
と、判明した。
チャイナ服のベニだけ呼び方から推測して、アーシュから「ベニちゃん」って呼ばれていると思う。
ラミアはベニと呼んでいた。
さらに、重要な情報も拾えた。
アーシュ達が話している会話で、たびたび聞こえる名前と思われる二つの言葉。
1つは「ハール」、これはアーシュの父親のことではないだろうか。
そしてもう1つ、この響きが聞こえた時、俺はこの地にやってくる運命だったのだと確信した。
アーシュの口から出た言葉……その名は、
リンランディア
ニニの父親の名前だった。
ステータス
闘う木の棒
状態:アーシュの闘う木の棒
レベル:1
SP:0
スキル
闘気:レベル1




