第4話 条件
爆弾は投下された。
ラミアの一言に即反応したのはベニちゃんだった。
「ナイスアイデア!」
俺との結婚はアイデア扱いなのか?
「何言ってるのよ!絶対ダメ!!」
当然拒否するアーシュ。
ラミアは思いつきで言ってみたぐらいだったんだろう。
ただベニちゃんが食いついてきた。
「2番手でいいので!2番手で!」
「2番も3番もないの!ルシラの奥さんは私だけなの!」
「まぁまぁ~。英雄色を好むというではありませんか」
「だめだめ!ルシラだってダメだよね?」
「うん。ベニちゃんもラミアにも、良い人がきっと現れるよ」
俺の言葉に笑顔が弾けるアーシュ。
俺に選択の余地などない。
今の答え以外の答えを言えば、待っているのはハールと同じ運命なのである。
「はぅ……私は一生独身なんだ。ず~~~っと彼氏も旦那さんも出来ないまま私の一生は終わるんだ!!!」
ベニちゃんが絶望のドン底に落とされたように悲しむ。
「ベニ大丈夫ですわ~。1人でも楽しめる方法を私が伝授しますので」
「それは教えないように」
ラミアからそんなことを教わったらベニちゃんが本当に生涯独身になりかねない。
「そもそも、ベニちゃんはどんな男の人が好きなんだい?」
「え……う~~~ん……う~~~~~~~ん」
俺の問いに悩み始めるベニちゃん。
ベニちゃんの好きなタイプが分かって該当する人がいれば紹介してあげることだって出来るはずだ。
「ルシラ様みたいな男性がいいです」
答えで再び爆弾が投下された。
正直ベニちゃんとラミアを奥さんにしたハーレム生活とか憧れるよ!
憧れるけど!現実はそんなに甘くないのです!!
異世界転生お約束の奴隷達とのハーレムなら分かる。
でも、実際に円満なハーレムなんて存在しない。
前世でも、昔の権力者達は正妻以外に妾とかハーレムを持っていた。
しかし、それは常に揉め事の種でもあっただろう。
医学が発達する前はたくさん子供を産まないといけない。
それは事実だと思う。
でもこれはハーレムを肯定するために誰かが作った言葉だとも思う。
だってちゃんとした跡継ぎいてもハーレム続けていた権力者とかいっぱいいたよね?!
いや知らんけど!
結局は男の本能に忠実なだけなんでしょ!
権力があるから本能全開で生きていたんでしょ!
俺も本能に忠実でありたい。
だがしかし、俺にはアーシュに勝つ戦闘力などない。
むしろアーシュに持ってもらわないと俺なんて何も出来ない木の棒だ。
俺にハーレムを作ることは無理なのだ。
それにハールみたいになりたくない。
今でこそ仲直りして笑顔の2人だけど、ハールが他の女に手を出した時のアマテラスはメチャメチャ怖かったらしい。
ハールとアマテラスが本気でやり合ったら互角の勝負らしいけどね。
ハールは何だかんだ言ってアマテラスに惚れてるから頭が上がらないんだろうけど。
ま~俺はアーシュ一筋で頑張る!……と思っていた時だ。
ラミアがまた何気なく言った。
「でも~ルシラ様がアーシュに飽きないためにも、2人目、3人目の奥さんがいた方がいいと思いますよ~」
「ど、どういうことよ!ルシラは私に飽きたりなんかしないもん!」
「あらあら~ラブラブですもんね~。でもアーシュがルシラ様の子供を身籠ったり子育てに忙しくなったりしたら、誰がルシラ様の相手をするんですか?」
「わ、私がするわよ!」
「あらあら~ラブラブですもんね~。でも現実的には厳しいと思いますわよ~。アーシュに相手してもらえないルシラ様が色街に出かけてしまったら……」
「ルシラ!!!」
「行かないって」
「でも~溜まるものは溜まるじゃないですか~。そんな時、ルシラ様が色街に行くのと、ベニと私が相手するのアーシュはどっちがいいのです?」
「そ、それは……」
この手の話ではラミアが数枚も上手だ。
ただ、俺にとって良い展開が待っているような気がして、俺は静観することにした。
「そ、そうだよ!ルシラ様が色街行っちゃうよりも、私達が相手した方がアーシュだってまだいいでしょ? ね?ね? そうしようよ!」
「だめだめ!う~~~~~~。だめったらだめ!」
言葉で丸め込まれそうなアーシュは、だめだめで切り抜けようとする。
「わかりましたわ~。それなら私は身を引くことにします~。でもベニは許してあげて欲しいですわね~。だってベニも独りで寂しいじゃないですか~。アーシュの幸せを親友のベニにちょっとだけ分けてあげるだけですよ~。それぐらいいいじゃありませんか~。もちろんベニは2番手なので正妻のアーシュの言うことは絶対服従ですから~」
「服従します!私アーシュに服従します!!」
身を引くって、そもそもラミアは引く身なんかじゃないだろうに。
アーシュが困った顔で俺を見る。
む~~~俺に助けを求められてもな……俺的にはベニちゃんも……いやいや、待っている未来がハールと同じなのは……。
いや、待てよ。
ハールは内緒で浮気したからか。
もとからアーシュ公認なら違うのか。
う~~~~~ん。
「それなら~少しの間、ベニも一緒に暮らしてみるのはどうですか~? やっぱり1つ屋根の下で暮らしてこそ、本当のことが分かりますし~。それに一緒に暮らしてみたらベニの気が変わるかもしれませんからね~」
「一緒に暮らします!」
「う~~~~~~。でもラミアの言うとおり、一緒に暮らしてみたらベニちゃんの気が変わるかもしれないけど……」
「もちろん、夜一緒に寝るのはアーシュだけですから~。それぐらいは我慢出来ますよね?ベニ~」
「我慢します!!」
都合よく話をまとめてくれたラミア。
こうしてベニちゃんはしばらくの間、俺達と一緒に暮らすことになった。
そしてベニちゃんと一緒に暮らしていたラミアは同居人がいなくなり、身軽な独り身となった瞬間、毎晩男漁りに出かけるようになったとか……。
あれから4日。
ベニちゃんと一緒に暮らすことになり、ベニちゃんが一生懸命家事を手伝ってくれるので、俺はアーシュとの時間をゆっくり過ごすことが出来ていた。
アーシュもベニちゃんが家事を手伝ってくれて、俺と過ごせることが嬉しいようだ。
ただ、ベニちゃんが全部家事をするのではなく、そこは半々と俺が決めてちゃんとアーシュにも家事をさせている。
理由は楽に慣れると2度と家事をしなくなるからだ。
裕福な人が家事手伝いさんを1度雇うと、自分で家事するのが面倒になって家事手伝いさんに頼りきってしまうとか。
世界樹で暮らす俺達の家に戦闘力を持たない本当の家事手伝いさんを雇うのは無理だろう。
そう考えるとベニちゃんがこうしてメイドさんのようなことをしてくれるのは本当に助かるのだが、まだベニちゃんが正式に俺の奥さんになるわけじゃない。
結果、ベニちゃんが俺の奥さんにならなかったら、また以前のように俺とアーシュで家事を分担してやるのだから、あまり楽を覚えても困る。
それにベニちゃんにだけ全部押し付けたら、それはそれで彼女が不満だろう。
今のところベニちゃんと二人きりになることはない。
必ずアーシュが一緒だ。
でもアーシュも徐々にベニちゃんとの3人暮らしを楽しみ始めている。
もともと仲が良い親友だったのだから、俺の奥さんになるということを除けば、ベニちゃんと一緒に暮らすことはアーシュにとってもすごく楽しいことなのだろう。
そして5日目の夜だった。
スケスケランジェリーを着たアーシュがベットにちょこんと座っている。
そして俺を呼ぶと目の前に座らせる。
今日の昼間、アーシュとベニちゃんは何やら長いこと話していた。
その結果発表といったところか。
さて、どんな結論になったのか。
「ルシラ」
「うん」
「ベニちゃんを奥さんにしたい?」
む、俺の心の確認か。
変に自分を着飾ることもないだろう。
正直に自分の気持ちを言えばいい。
「う~ん、男の都合のいい願望を言うならそうなるね。5日間一緒に過ごしてみて3人でも楽しく暮らせるような気はしているよ。アーシュが嫌ならしないなんて言葉は卑怯な言葉だと思ってる。でもアーシュを愛しているし、もしベニちゃんが奥さんになってもアーシュを1番愛するよ」
「……私が1番だよね?」
「うん」
「絶対だよね?」
「うん」
「毎日キスしてね」
「うん」
「毎日抱きしめてね」
「うん」
「毎日愛してるって言ってね」
「うん」
「……ベニちゃんと昼間話して、ルシラが嫌じゃなかったらベニちゃんも奥さんにするって話したの。でも条件付きだけど」
「条件?」
「私がルシラの子供を身籠るまでは、ベニちゃんはルシラとエッチだめ!その後も2対1の割合で私がルシラと過ごす。家事の分担も2対1という条件」
「なるほど~。考えたね」
「それと2人からのルシラへの条件もあるわ」
「なに?」
「浮気したら木の棒に戻して、半分に割るからね?」
「……はい」
こうして俺は2人目の奥さんをゲットしたのであった。




